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とても蒸し蒸ししている。
まるで雨の日の熱帯夜のようだ。
違うのは土の匂いではなくほのかに漢臭い匂いがする事だろう。
原因は分かっている。サー・マスタング含む筋肉の群れが全身で悲しみ(?)をマッスルポーズで表現しつつ全力号泣しているからだ。
筋肉の塊複数が泣く事により、領域内の湿気と温度が気持ち悪いくらいになっていた。しかも臭い。
人は泣く事で幸せになる事が出来るとどこかで見た記憶がある。全力で泣けば泣くほどそういうホルモンが出るとかなんとか……
それが本当なのかどうかはわからないが、5分程して泣き止んだ彼らはそれはもう凄くいい笑顔で「肉を取り返す為にお力になります!」と意気込んでいる。
そして改めて主人の居場所を聞かれたので、俺がそうだと答えると肩を思いっきり捕まれ、再度泣かれた。
「おや?」
辟易としながらその様子を見ていると、相変わらず黒い領域の外…黒界からノソノソと歩いてくる更に影があることに気がついた。そいつは黒界と領域の境で少し止まり、やっぱりノソノソと歩いて入ってきた。
「トカゲ?いや、サンショウウオ??」
サンショウウオに似たそいつは四つ足で腹這いでゆっくりとこちらへ近づいて来て、俺の前で止まった。
ヌメヌメと光る表皮はとても艶々としてまるまるとした体を強調しているように見える。
こいつは一体何なのかとことほぎに聞こうと振り向くと、後ろにいたはずの黒虎とことほぎがいない。
「あいつ……」
辺りを見渡すと二人が温室にいるのを発見した。俺が筋肉の相手をしている間に2人は移動していたようだ。黒虎は心配そうにこちらを見ているのが分かるが、ことほぎはさっきのメガネスタイルでティータイムを満喫してやがった。
黒虎にアイコンタクトでことほぎを連れてきて貰うよう訴えると物凄い速さでことほぎの首の後ろを加えてこっちに来てくれた。
あまりの勢いで片眼鏡が外れ、ティーが顔にかかった状態で到着したことほぎ。何事かと少し驚いた様子で俺を見る。
そんな様子を無視し、
「黒虎ありがとう、ことほぎ、こいつがなんだか知ってるか?」
と黒虎に礼を言い問いかける。
すると、
「あーーー!!!!!!!!!!!あなた様は!?あなた様はぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
と、俺の問いかけに反応しサンショウウオを見たサー・マスタングが叫んだ。
遅くなりました。すみません。しかも短いです。すみません。すみません。これからは少し短めで頻度上げていこうと思います。