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「ガウガウッ!!」


目覚めた黒虎が口を開き吠える。

もう襲ってくる様子もなく正気には戻っているようだが、一向に人の言葉が出てこない。

その様子に俺が驚いていると、言葉が通じない事に気付いたっぽい黒虎は目を見開き、自分の体を確かめるように見渡したかと思うと気を失ってしまった。


「これは…困ったな。」


隣ではことほぎが眠り、目の前では黒虎が横たわっている。気絶した黒虎は安定した呼吸を繰り返し落ち着いた様子でいる。一応年の為、チョロっと黒虎を探ってみたが、今はもう意識の方に異常を感じる事は出来なかった。


「落ち着いたのは良かったけど、言葉も姿も虎になってしまったのはなぁ。」


気絶する前の様子をみるに理性や思考は以前と変わらないみたいだったけど。ことほぎを起こして話を聞きたいが、疲れているのかなんの反応も無くぐっすりと眠っている。


「取り敢えず片付けるか。」


いつかことほぎが持ってきたちりとりと箒を使い、床に散らばった木片を片付ける。

幸いもともと家具っぽい物があまりない部屋だったので壁が抉れた分の木片とバラバラになってしまったロッキングチェアを片付けるぐらいであっという間に終えることが出来た。ただ、床の焦げ跡はどうにもならないのでそのままだ。


「よっこいせっと」


俺はことほぎと黒虎が目の前になるようにベットに登り、二人を観察する。二人とも先程と変わらない安定した呼吸を繰り返している事に少しホッとする。


一体なぜ黒虎があのようになったのか…恐らく俺が地球生まれである事が関係しているのは間違いないんだろう。でなければ、あのタイミングで様子がおかしくなる筈がない。


(そう言えば黒虎は‘私()に…’って何か酷い事をされたみたいに言っていたな)


あれ以外の黒虎の話では特に酷い目に遭わされたと言う話はなかった筈だ。もちろん話してないだけの可能性はある。だが、流れ者として一匹狼のように過ごしていた黒虎が‘私()’というくらいなのだからきっとこっちの世界に関わる人々の事なのだろうか?


(そうなると宮司に聞いた侵食の事を言っていたのか?)


確か、悪逆非道な主人がヒャッハーして最後は汚物消毒とばかりにやられてその領域ごと異世界追放→地球誕生そして浄化プログラム開始みたいな流れだったよな?


(なんか違うんだよなぁ)


この流れだと俺を含む地球の住人が黒虎達に何かしたって言うのはちょっと違和感がある。ヒャッハーした主人やそれに追従した住人はともかく、地球には侵略や()()された住人達もいた訳で…単純に地球生まれってだけであそこまでおかしくなるものだろうか?


(いや、待てよ?)


侵食と言えば黒虎がおかしくなった時にその意識を探ろうとしたら不気味な感触があった。あの意識の糸を辿ってジワジワとこちらに近寄って来る感覚は今思い出しても気持ちが悪い。


あれを侵食と捉えるなら黒虎は俺を侵食しようとしていた訳で…

そうなると黒虎こそヒャッハーな主人に侵食されていて…

ヒャッハーからすれば追放した側がムカつく対象で…


(駄目だ、さっぱり分からん)


正解まであと少しと言うところまでは来ている感じはするのだが、チグハグな感じでしっくり来ない。しかも胸の奥の方でその答えがチラついているのが分かるのに、その内容がさっぱり分からないせいでモヤモヤする。


(そもそも黒虎が侵食されたとするなら一体いつの話になる?)


可能性が高いのは災獣(ワザワイノケモノ)の可能性が高いアレに飲み込まれた時だろう。


なぜ、黒虎があの状態でアレから分離して俺の領域に入れたかは謎だった。

だが、あの時アレの狙いが間違いなく俺であった事を考えると、黒虎を使い俺を侵食させる目的で領域に送り込ませたのではないかという可能性が高い。


領域は主人(オレ)に悪意のある者の侵入を拒み、主人(オレ)を害する意思から守るとことほぎが言っていた。

もしアレがその事を知っていたのなら、害意のない黒虎の無意識に入り込んでオレを侵食する機会を伺っていたのかも知れない。

そして地球生まれの話の所でなにがしかのスイッチが入り黒虎があのように変化した?


(とすると、黒虎があの状態の時に顕在化していたのはアレと言うことか…?)


領域内で害意のある存在が発生した場合どうなるのだろう?主人を傷付ける行為に侵食は入らないのだろうか?

まぁ、そこはことほぎが起きたら聞いてみよう。

あの魔方陣や部屋のことも聞くのを忘れないようにしないとな。

あとはおかしくなった黒虎の意識に接続できた時に見えたあの映像だ。結果的に黒虎の様子が落ち着いた所を見ると、もしかして黒虎の意識がアレに洗脳されていると言うよりはアレの意識に囚われていると考えた方が自然か?


(他者の意識を自分の世界に捉え、その肉体と精神を乗っ取る?)


宮司に聞いたヒャッハーに似通った性質に嫌な予感しか浮かばない。

こんな時は…


「そうだ、もう寝てしまおう」


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