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宮司に呼ばれるまで沐浴する事にした俺は先程聞いた話を思い返しながら眠ったりぼーっとしたりする事にした。あまりにも暇なので一度だけ上がって見たが、ただ涙の落ちる音が聞こえるだけだったのですぐに戻った。

そうそう、着替えをどうしようかと思ったが上がっても濡れた様子もなくカラッとしていたので全く問題なかった。


「お待たせしました。そろそろお上りください。」


何度目かの目覚めの後、宮司から声をかけられる。

泳ぐように浮上し、顔を出すと羊があの装置から解放された状態で寝そべるように静か眠っていた。


「ずっとあの状態でしたからね。流石に疲れたのでしょう。自業自得とは言え、少しの間休ませてあげる事にしましてね。」


宮司は羊の様子を見ながらそう言い、懐から大きなソファーのような物を取り出す。


(まるでドエラモンみたいだな)


「貴方にはかなりご迷惑をお掛けしてしまいましたので、せめてもの償いをと思いこちらを作らせて頂きました。」


完全に取り出されたそれはまるで平たい青い半透明スライム。足はない。大きさは一人用の布団くらいだろうか?縁が僅かに盛り上がっている。


「これは…?」

「これはソファーベットになります。使い方をご説明するので一度上に仰向けで寝転んでもらっても良いですか?」


そう言われて上に上がり仰向けになる。

少し弾力がありウォーターベットってこんな感じなんだろうなという感じ。適度な反発力で気持ちがいい。


「そのまま眠ろうと意識してみてください。」


言われるがまま目を瞑り眠りに入ろうと意識する。


「おっ!?おぉ…!?!!?」


体がまるで溶け込むように沈み込む。

なんという…なんという新感覚!

沈み終わるとまさに無重力!という感じなのに、全く不安定さがない。それどころか素晴らしい心地よさで全身が包まれ癒されていくような感覚がありこれはもうこの世の物とは思えないほど素晴らしい。


「実にいい。これは実に良いものだ。」


気付けばそんな風に呟いてしまう俺。

確かめるように寝返りを打つが抵抗なく安易に行える事にも感動する。ふとうつ伏せの状態で目を開けると床が透けて見える。そのまま仰向けになると普通に天井が見える。手や足は沈んだままだ。出そうと思えば出せるが基本こうなのだろう。


(き…気持ちいい)


あまりの気持ち良さにぼーっとしてしまう。


「気に入って頂けているみたいで良かったです。沐浴で使って頂いたエーテルと一応神獣である羊の涙から作ったのでここでのも沐浴と同じような効果が得られますよ。」

「はっ!?」


…危ない!宮司の声が無ければ完全に寝るところだった!


「あ、いえ、混ざっていた鼻水とか涎は入っていませんよ?あくまでエネルギーだけですから!」


俺の反応を勘違いして必死な説明が入る。

出来れば聞きたくなかったな…。

ベットから出るには起きようと意識する事で体が浮上し、ソファーの上にいる状態となる。


「こんな凄い物を頂いてしまって本当にいいんですか?」

「えぇ、今の貴方には必要ですからね。残念ながら私は領域にも体を取り戻すお手伝いも出来ません。身内のような羊の不始末をお詫びも兼ねて受け取って下さい」

「ありがとうございます。大事に使わせて頂きます」


そう言って降りようとするとそのままでいいですよと止められた。まだ何かあるのかと宮司の顔を見つめると考えてもいなかったことが伝えられる。


「実はそれ、高さ1m位までなら浮かべますし移動もできるんですよ。寝ならが立ち状態も可能です。今までと同じように意識するだけでそれが可能ですので体が痛くても癒しながら動けます。」

「空飛ぶベット機能のほかにそんなことまで出来るなんて本当凄いですね。」

「ふふふ、我ながらよく出来ていると思います。さぁ、そろそろ羊を起こして出発しなくてはなりません。そのまま乗るなり寝るなりしながら移動なさると良いでしょう。」


そう言って羊の事を足蹴にして起こそうとする。

この人もある意味ブレないな。

出発と聞くと何やら寂しく思うところがあるな。意識がない期間も合わせると4ヶ月。意識がある状態では正味1日もあったかどうか…。


「そう言えばこの服もお返ししないといけませんよね?」


感慨深く思いに耽ったが大事な事を忘れてた。

借りっぱなしのパジャマや下着を返さないといけないと気付くと同時に自分の服は飲み込まれてしまった事を思い出す。


(これって新しい服を下さいっていう意味にならないかな?)


うっかりとは言え強請っ(ねだっ)ているような感じになってしまった。


「あ、いえ、新しいのが欲しいという訳ではなくてお借りしたままというのも申し訳ないので…」


返事が来る前に慌てて釈明する様に補足する。


「あぁ、それですか?それは貴方の体の一部です。復元した時に服も復元されました。無理に剥がすと痛いと思いますよ。」

「体の一部と言うのは…?」

「はい、服をきたのが自分と言う認識だったからでしょう。記憶から体と精神を呼び起こした際には既にその状態でした。柄は…恐らく直前に私がお貸ししたミニタオルの柄が反映されたのでしょうね。」

「なるほど…」


良かった。

色々ホッとした。


「そろそろ起きなさい。出発の時間ですよ!」


勢いよくゲシゲシと足蹴にされながらムニャムニャと起きる羊。アレだけ強く蹴られているのに余裕のある動きをする羊を見て段々と不安が大きくなる。

さて、どうなる事やら。



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