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長いです。ほぼ宮司の一人語りのようなものになります

「さて、主人とは何かの説明をする前に今貴方の住んでいた世界についてもご説明しなければなりません。貴方のいた世界は今変遷期にあります。過去あの世界は魑魅魍魎から神まで様々な存在が同時に暮らしていました。そこからいくつもの変遷期を経験し今の世界があります。」


そう言うと両の手のひらを上向きにし、そこから歯車と杖の映像の映った球を生み出した。


「私の使うこの力は神の力に通じるものです。本来誰でも使える力ですが、過去の変遷期の一つに人は自身のみの力で生きる事を選択しました。それ故にこの力のような‘魔法’の力は失われ、科学の発展が進みました。」


杖の映像が消え歯車の映像の方が化学記号や数値が映し出され消える。


「人は何故自身のみの力で生きる事を選択するようになったか。そこに主人の存在が関わっています。」


今度は大きめの球が出てきて、プロジェクターや映画のように人や動物を映し出す。


「主人とは本来自身の領域を管理して充実させることにあります。‘生めよ、ふえよ、地に満ちよ、地を従わせよ。また海の魚と、空の鳥と、地に動くすべての生き物とを治めよ’とは貴方の世界では有名ですね。主人はこれを軸にお互いを尊重し、それぞれの領域を充実させて行きました。」


人や動物の映像が今度はドラゴンやユニコーンへと変わる。人や動物達と一緒に楽しそうで平和そうな風景だ。


「充実させた結果、エネルギーが増加し、それを管理する主人の意志も強くなりました。そして獣達だけでなくそのエネルギーを心地よく思う…今では幻獣やモンスターと呼ばれる者達も共に住まい自らの属する領域や他の主人の領域を愛し、慈しみました。しかし…」


映像は一転し、先の平和そうな風景が一気におどろおどろしい血生臭い風景へと変わる。これは…


「戦争?」

「そうです。主人の持つ領域は主人によって多種多様。中には他者を恐怖で支配し、自らを支配者とすると主人もいました。他者を騙し、唆し、蹂躙する。‘最も優れた主人である自分が絶対的な権限を持ち他は地に這い蹲る愚者である。’そう言って次々と他の主人の領域を破壊し、その領域の主人ごと消滅させたり、自らの領地に加えて行きました。」


血生臭い風景は人が人に縄を付け鞭打つ者と打たれる者へと変わる。鞭打たれた者の血で映像は段々と赤に染まって行き暗転していく。


「平和的な領地に住んでいた者達は争いに不慣れでした。その為一生懸命戦いましたが呆気なく蹂躙され、嘆き悲しみながら相手の主人に服従させられました。しかし、平和的な領域に住みそのエネルギーの中で生きて来た者達は蹂躙を良しとする者ではありません。主人が居ないながらもなんとかしようと思いましたが悉く看破されます。」


暗転した映像の真ん中がボワっと円状に光り、その中に何かを祀るような小さな祭壇が映し出され、次に遺跡として見たことのある神殿、有名な神社へと変わっていく。


「そんな中蹂躙した主人は大きな発見をし実行します。きっかけは蹂躙された者達が亡き主人を想い作った小さな祭壇の存在に気付いた事でした。領域では意志やエネルギーが重要である事を利用し、まずはその小さな小さな祭壇を存分に祈らせ、エネルギーや意志を高める事をあえて適度に見逃します。そして気付かれないように祭壇に細工をし、そのエネルギーを利用して少しずつ自分の都合の良いものに変える力を持たせ、自分の都合のいいように物事が運ぶようにしたのです。」



映された神殿や神社に人々が列を成す様子と様々な国の神仏が映される。



「亡き主人を想い、自分が過ごして来た日々を感謝する為の場所が、徐々にその力によって蹂躙した主人の願いを叶える場所として働くようになります。やがてそれはその力の源であった想いや感謝をしていた者達の意志にまで作用し、祭壇を自分達の願いを叶える者がいる場所として認識するようになります。」


光と列を成す行列が消え、黒い背景で黒い遺跡や神社、神仏が背景よりも黒く染まる。



「想いは思いに、祈りは願いに。ただ願い自らの意志とエネルギーを差し出すようになった者達はまるで人形のようになって行きます。中にはそうする事で存在する事が出来なくなった者もいました。その反面、主人の意志やエネルギーは増大していきます。そのエネルギーがこれまでに類を見ない程強大になった時、主人は自分が神の主人(しゅじん)になろうとし、神界へと戦いを仕掛けます。しかし、神界に残っていたのは意志とエネルギーが強すぎる為に領域へと赴けなかった神々ばかり。神界で消滅せずそこそこ戦う事は出来ましたが、その主人は戦いにやぶれ消滅しました。」


黒く染まった神仏がボロボロと崩れて混ざり合い黒いアメーバのように動き出す。

その近くに光の球がアメーバを取り囲むようにいくつも浮かぶ。


「その後、主人が居なくなり静かに消滅すると思われた領域ですが、特殊な方法で領域を存続するエネルギーや意志に主人以外の物も入っていた為大きく歪み、むしろ大きくなるばかりでした。異変を察した神々は近くでその領域を見守ろうと考えましたが、移動した途端戦いに勝った強き神々でもそのエネルギーに取り込まれてしまいました。取り込まれた神々は消滅こそしませんでしたが、領域を維持する柱として楔を打たれそのエネルギーを利用されます。」


アメーバが光の球をいくつか取り込み大きくなって行く。取り込まれた球はアメーバの中で強く瞬くがそこから動く事はなくやがて瞬きを失った。

取り込まれなかった球が大きく距離を取り、改めて上下左右に取り囲むように展開する。


「楔を打たれた神々は領域の中に存在数多の存在とそれらが魂やエネルギーの循環の輪から外れてしまっている事を知りました。楔を打たれ領域を維持する装置とされた自分も例外では無いのだろうという事も。もはや歪んだと言っても過言ではないこの領域の有様を自由になる残り少ない力を使って取り込まれなかった神々へこの事を伝え眠りにつきます。」


すると展開していた球同士が繋がるようにいくつもの光の線を出し合いアメーバを捕獲するように網状の光の線を作成し、それを窄めアメーバを拘束して行く。


「取り込まれなかった神々の大半が伝えられた内容に大いに驚き嘆き悲しみました。基本的に良し悪しというものは持ち合わせずマイペースな神々ですが、この事態は良くないと考えたのでしょう。この事態を改善しようと力を合わせて領域の意志とエネルギーを封じ込めました。」


拘束されたアメーバが光の網によって動きが鈍り球状にされて行く。光の網は球状になったアメーバの表面でだんだんとその面積を広げ、ついに光の玉となった。

光の玉は激しく明滅し、背景に吸い込まれるように姿を消す。そしてそれを見届けた球は映像からフェードアウトするように姿を消した。

次に映し出されたのは銀河だった。それがだんだんとズームするように迫り一つの茶色と黄色で覆われた惑星と思われる物へ焦点を当てる。

そこに先程消えた光の玉が重なるとまた激しく明滅しだし青みを帯び見た事のある‘星’へと姿を変えた。


「もうお分かりになりますね。これが貴方の住んでいた地球です。神々は領域に取り込まれたエネルギーと意志から歪みをなくす為にあの領域を別の世界に送り物質として存在させました。意志もエネルギーも歪んでしまった領域の住人達は生命と言っていいのか分からない程の小さい存在から現在へと至る中であの混沌とした状況を昇華しながら整理しています。人が今地球で最も発展しているのはあの領域の力を管理して最も強くその意志を反映させていた主人が人の形だったからです。」


星に下降するように景色は変わり、微生物のような物が進化していき人の姿へと変わる。

人は争いながらも他者と慈しむ風景が映し出される。


「この風景は貴方にも馴染みが深いのではないでしょうか?他者と争い傷つけ合いながらも切磋琢磨する様子はあの領域が昇華されつつある事を示しています。この中で人は幾度も神に通じる魔法の力を再び手にした事もありました。しかし、昇華されきった世界ではないのでその力を争いや願いという欲に使い出しあの領域で起こった事と同じ事態となり自滅していきます。この事から一部の者を除き、魔法の力は万全でなくむしろイカサマだったから争いに勝てず願いも叶わないのだと思い始めます。」


ここまで話して宮司は一息いれるように息を吐き、「これが貴方の世界の推移と人が科学への道を歩んだ経緯です」と締めくくった。


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