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「おや?こんな時に人と逢うなんて思いもしませんでした。もしかして参拝に来られたのですか?」


宮司っぽい人。

物凄い宮司っぽい人。

多分恐らく宮司だと思われる人がそこに居た。

その人は宮司特有の和っぽい服装とちょっと尊い感じのする帽子?、そして「かしこみーかしこみー」とかやる時にフリフリする白い紙のようなモノのついた棒を身につけている。年は20代かな?結構若く見える。どうしても宮司と思えないのはそこに突っ込みどころ満載としか言いようがない所がチラホラあったからだ。


まず目についたのは帽子の部分。

貫通したような穴がが空いていてそこから子猫と思われる頭と反対の穴から尻尾が出ている。

ちなみにロン毛。背後にまわらないと正確な長さは分からないが肩の下まで伸びてるのは確かだ。

次に和っぽい服装の柄。

普通こういうのって無地の近いものだと思うんだ。あんまり見た事はないが、少なくともこの宮司っぽい人のように丸っこい感じにされた沢山の動物が描かれている賑やかな模様じゃないのは確かだと思う。

そして足元。

たまに雑貨屋で見かける虎の足を模したもこもこしたスリッパのような…ていうかスリッパじゃないか?いつ付いたのか知らないがちょっと草とかついてる。これって外で履いていいもんなのか?


たまたま差し込んだ日の光で少し神々しく見えなくもないけど、どうしよう。この人が宮司さんだとしても物凄い胡散臭い。


「大丈夫ですか?もしかして驚かせてしまったでしょうか?ここに来られる方は滅多にいませんもんね」


俺が呆気に取られているとその宮司っぽい人はそう言って少し笑う。ここは服装について突っ込むべきなんだろうか?いや、それよりもまずは確かめないと…


「もしかしてここの宮司さんですか?」


この人であって欲しいような欲しくないような微妙な期待を混ぜてそう質問する。


「えぇ、はい、そうですよ。私がここの宮司を勤めさせていただいております」


その宮司っぽい人じゃなくて宮司さんは笑みはそのままでそう答える。激レアな幻の宮司に逢えたというのに素直に喜べない自分がいるのを自覚しながら、俺は立ち上がり宮司さんの目の前に移動する。


「宮司さんにお会い出来て良かったです。俺、どうしてもお会いしたくて…でも、いらっしゃらなくて途方にくれていたんです。本当にお逢いできてよかった…」

「おやおや、そこまで私に…何か事情がありそうですが、まずはこちらで涙を拭いて落ち着ける場所でお話しいたしましょう。」


胡散臭いと思いながらも話しかけ、頼れる人がいると思えた瞬間、安心に似た何かが涙とともにこみ上げ溢れ出す。それは宮司が差し出した恐竜と動物の描かれた毛まみれのミニタオルに突っ込みがわかないほどだった。

ミニタオルを借り涙を拭く。


「すみません、ありがとうございます。これは後ほど洗ってお返し致しますね」


幻と言われる宮司に再び会って返せるか分からないが、使ったものをそのまま返すのは気がひける。言いながら鞄にしまおうとするのを宮司は制止するかのように手をこちらに出す。


「いえいえ、構いませんよ、そのままお返しいただいて。私もこちらには不定期でしか来れませんのでそのままお持ちください。」

「そんな訳には…」

「いいんですよ、うちに帰ればいくらでもありますので」


かしこまる俺からミニタオルを受け取り懐にしまい、今度は別の黒いミニタオルと細長い布、そしてマスクを取り出す。


「この場所は色々と変わっていましてね、貴方の知っている神社とはかなり違っていると思います。これらもそうなんですが、今からの事はくれぐれも内密にして頂く前提で怖がらないで私を信じて頂けますか?」

「え?えっと、内密と言うのは勿論です。宮司さんを信じるのも全く問題無いのですが、何かあるんですか?」


俺がそう答えると宮司は頷き、社だったであろう小屋に目をやりながら話す。


「あそこに続く道やあるべき手水舎や本坪がないのは別の所にあるからなんですよ。そしてその場所は秘匿されているんです。だから、申し訳無いのですがこれらで目を塞がせて頂いているんです。マスクは念を入れて土や葉の臭いで分からないように匂いを付けてあります。」


流石は幻の宮司の居る変わった神社。

良かった、本当に良かった。あの小屋は社が取り壊されるとか無くなる予定があったからじゃなかったんだ。

藁にもすがる思いで来たんだ。念の入った案内なんて何の問題もない。

だけど…


「いずれも問題ありません。お金も幾らかは貯金があります。足りなかったら少しずつでもお支払いします。何とかして頂けるならただただ有難いだけです。ですが、たまたまお逢いしただけの一般人でしかない俺がそんな凄い所にお邪魔しても良いのでしょうか?」


宮司は目線を俺へと移し笑みを消して、だけど優しさを目に宿したまま頷く。


「私が巷で幻の宮司と呼ばれているのはご存知ですか?滅多に逢えないからという事から来ているんです。年に一回ある大祈祷の際には色んな方にお会いするんですけれどね。それ以外は本当にご縁のある方としかお逢いできないんですよ」

「じゃ、じゃあ、俺は縁があったから大丈夫だと?」

「えぇ、そうですよ。だから大丈夫です。どこまでお力になれるかは分かりませんが、出来うる限りのことはさせて頂きますよ」


そう言って再び笑みを浮かべ「あ、お布施はお気持ち程度で結構ですよ」と付け加え、俺の目にマスクをさせ、タオルを当て、その上からあの細長い布でタオルを押さえつけるようにして目隠しをする。


マスクからはいい匂いがする。緊張していたせいか、リラックスして眠気すら…





「…zzz」

「では、ご案内いたしましょうか、もう出て来てもいいですよ。お手伝いお願いします」



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