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“次”………
治まりかけていた吐き気と汗が再び出てくる様な気がした。さっき自分でその事を話したというのに他者に言われた途端言葉の重さと現実味が実感としてのしかかってくる。それと同時に今まで上の空のようだった思考力が戻ってくるようなそんな感じがした。ただの警察官だと思っていた人は俺がみた事件を担当する刑事だという事も何故か急に理解できた。
こちらの様子をどう感じたのか分からないがなんらかの変化を感じたしたのだろう、少し窺うように話を進めてきた。
「柊さんを不安にさせたい訳じゃないのですが、お話を伺う限りまた会う可能性があるのは否定できません。こちらが抑えていた証拠品すら回収する連中です。恐らく何らかの機会に乗じて…いえ、乗じる形じゃなくても接触してくる可能性は高いでしょう。そこである程度落ち着くまででいいので我々は柊さんを保護する事を提案したいのです。」
「保護…ですか?」
警察による保護なんて心強い!なんて一瞬思ったが警察による保護なんて酔っ払いや迷子相手にする事くらいしか知らない。万が一にもないと思いたいが虎部屋なんて場所で保護される事は御免被りたい。
「えぇ、柊さんさえ宜しければこちら病院にしばらく入院という形で警官を一名付けて保護させて頂きます。」
「入院ですか?」
良かった。想像よりもマシだ。
「そうです。ここなら人も動きも制限されますし、我々も何かあった時に対処しやすいですからね。」
なるほど、たしかにいいかもしれない。だけど、、
「一目撃者にそんな大層な……個人的にはとても有り難いのですが、入院となると仕事に行くっていうのは難しいんですよね?」
そう、一応仕方がないとは言え会社に行けなくなるのはまずい。社畜でもないし急ぎの仕事がある訳でもないが、退院した時の事を考えると胃が痛い。最悪無職なんてことも考えられる。命には変えられないのは分かっている。
そこでふと思った。
「刑事さん、今回俺は周りに人がいる状況にも関わらず一人で歩いていると思い込んでいました。でも、後から話を聞いてどうにもそうじゃないってのは理解しました。仮に入院したとして、同じようなことが起こった場合助けてもらえるっていう確証はあるのでしょうか?」
相手の目が曇るのが分かった。
真剣だった顔は気まずそうな表情に変わりどんな言葉を出そうとしているのか躊躇うように少し開く。
それを見て恐らくは希望になるような事は出ない事を悟りやはりと思いつつも落胆し、決定的な言葉を拒否するように言葉を続けた。
「確証が無いのなら俺は入院せずに普通の生活に戻りたいと思います。」