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第8話 決心と不安

 慣れたくもないのに慣れてしまったどよんだ空気と、自然の中の鳥のさえずりによって目を覚ました4人。彼らは防空壕の中に残った食料を腹に入れ、出発前の腹ごしらえとする。そして……


「みんな。いい?」


 浦賀は両手を鉄の扉にかけて後ろを振り返る。電気を消した暗い洞窟の中だが、扉の隙間から漏れるわずかな光で3人の表情が見える。3人はそれぞれ頷く共通した反応。それでも敷島はもう引き返さないとばかりに扉だけに目をやり、葛城は荷物に不安があるのか背中のリュックに手を回す。そして水波は後ろ髪を引かれる思いなのか、暗い防空壕を振り返る。頷きの後は三者三様の反応を示す中、浦賀は決心して扉を開いた。


 湿った空気が洞窟の中から溢れだし、逆に新鮮な空気が流れ込んでくる。空気に味があるとするならば、これをまさしく『おいしい空気』と言うのだろう。


 扉から出た4人は、それぞれ目の上に手をやって光を遮る。暗い中に閉じこもっていただけに、この強烈な光は今まで以上にまぶしく感じる。


 おいしい空気。まぶしい太陽。そして駆け抜ける涼しい風に、耳に入る自然の音。もう少し満喫していたい気持ちもあるが、こうして立ち止まっているわけにはないのである。


「よし行こう」


 敷島が地図を持ってのナビゲーションであるため、先導・前方警戒は浦賀の役割。彼の合図に4人が歩き出す。なお防空壕の扉は閉じていったが鍵は開けたままだ。あれだけの長い間、敷島以降は誰も来ることはなかった。しかしもしかすると自分たちが旅立った後、誰かが来るかもしれない。そしてこの防空壕に助けられるかもしれない。そんな小さな可能性と、誰かの未来のためにその手段をとったのだ。


 いつからか爆撃音は消えていた。もう敵からの攻撃は止んでいるのだろう。その点は安心であるが、詳しい状況が分からないだけに不安と恐怖は拭えない。いったい家族や友達はどうなっているのか。街はどうなっているのか。そして敵はいったい……


 様々な考えを頭に浮かべながら道を行く。


 そして開けた急斜面から見えたもの。



 青く澄み渡った空。



 緑の木々や河川。



 まるで教科書で見た『空襲後の街』の写真



 そこに見慣れた街はなかった。


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