第7話 99%の絶望、1%の希望
きっとこのままではジリ貧となる。そう感じた4人は九州脱出を決定した。
目的地は関門海峡を越えた先、本州・山口県。長崎・佐世保基地を目指す案は、そこに自衛隊・米軍がいるとは限らないという理由で却下。自力で海を越えるという案については、もし関門海峡が徒歩で渡れない場合の代案となった。確かに敵の最前線を突破することになるリスクはあるが、そもそも別の案ですら異なる形でのリスクがあるし、敵の最前線は味方の最前線というメリットもあるのだ。
「ひとまず食料と……」
「あと水も」
4人はそれぞれ災害備蓄品を可能な限り、こちらも備蓄品の中にあったリュックへと詰めていく。娯楽品は持っていかない。情報入手に必要なラジオは1個だけ。2個、3個と入れるくらいなら食料や水を入れる。
「敷島。出発は明日の早朝でいいね」
「できれば今日中に出てもいいけど、落ち着いて準備を整えよう」
浦賀の確認に頷く敷島。
やろうと思えば徒歩でも2日、3日あれば着く距離である。しかし『敵』による侵攻を許している今となっては最短ルートを突っ切ることはできないだろうし、橋や道路といったインフラがどうなっているかも怪しい。物資も補給できるとは限らないため、準備には念を入れておいて損はない。確かにここには長々と篭城するだけの物資はないにせよ、1日、2日滞在が長引く分にはどうということはない程度である。
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夜9:15
昼前の内に準備は整え、明日に備えて早めに床に着く。
「ねぇ、浦賀。起きてる?」
男子とは一緒の場所で寝たくはないだろうお年頃の水波であろうが、やはり状況が状況だけに1人で寝るのは不安なのだろう。浦賀がちょっと頑張って手を伸ばせば届くくらいの場所に、水波が毛布を掛けて寝転がっている。そんな彼女は眠れないのかふと浦賀に声を掛ける。
「起きてるよ……」
寝付けない浦賀が彼女の声に答える。
果たしてこの胸の鼓動は緊張か、恐怖か、はたまた別の感情か。
「行けるかな……関門海峡」
彼女はやはり不安なのだろう。経験したことがないサバイバルと言った次元ではない。この平和な日本では、経験するとは夢にも思わなかった戦場である。不安があるのはもちろんのことである。
「……行こう。絶対に」
そんな彼女と反対に、彼は失敗は考えない。考えたくなかっただけなのかもしれない。それでも傍から見れば前向きなその言葉に、不安でいっぱいの彼女は少しだけでも背中を押される。99%が絶望でも、1%の希望で未来を切り開く。そんな綱渡りの状況だからこそ少しでも希望が、精神的な支えが必要なのだ。
浦賀は大きな希望を胸に、水波は大きな不安と小さな希望を胸に眠りにつく。
その目を覚ました時、彼らの長き戦いの幕が開く。




