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第5話 突然の来訪者

 その扉から入ってきたのは人間だった。それもただの見知らぬ人間ではない。


「う、浦賀」


「敷島。なんでお前がここにいるんだよ」


「それ、僕の台詞」


 同じクラスの男子学生、敷島がそこにはいた。


 浦賀にしてみればどうして敷島がこの防空壕に逃げ込んできているのか聞きたいだろうが、敷島にしてみれば浦賀に同様のことを聞きたいし、なんなら彼に押し倒されている水波についても聞いてみたい。しかしそんなことよりも葛城は気になることが。


「閉めて、閉めて」


「お、おぅ」


 敷島はすぐさま鉄の扉を閉める。重々しい鉄の扉は再び、燃える外界とひとまずは安全な防空壕を隔離した。


 彼ら3人に比べると比較的落ち着いている敷島は、まるで自宅のように迷うことなく近くの椅子に腰掛ける。


「敷島。お前どうしてここに。もしかしてジジイが?」


 そんな彼に浦賀は問う。


「ジジイって鵜来のじいさんのこと? そうだよ。以前、ここに連れてきてもらってさ。もしかして鵜来さんもここに来てるかと思ったけど、まだ来てないのか……」


「う、うん。それなんだけどさ」


 浦賀は辺りを見回す敷島に説明する。


 今まで自分たちが見てきたこと。途中でジジイこと鵜来のじいさんに出会ったこと。そして鍵を授かり逃げてきたこと。そして鵜来のじいさんは敵の足止めをしていること。


 浦賀はじいさんがあの後どうなったかは知らない。そして敷島の話を聞く限り、彼はじいさんに出会ってからここに来たというわけでもなさそうである。ということは、じいさんの所在は不明といったところか。


 一通り話を聞いた敷島は状況を理解したように頷いた。


「それじゃあひとまずここに留まった方がいいかもね。ここなら食料や水は一通りあるし、この人数ならば下手すりゃ1年生きられるよ……病気だとかにならなければ」


 敷島曰く、以前ここに来た時にどういったものがあるかは確認しているとのことである。


「1年って……ここ、ただの防空壕じゃないよな」


「いいや。太平洋戦争の時のただの防空壕。てかさらにその昔はただの洞穴。今では町内会管轄の災害物資の備蓄庫になってるけど」


「やっぱり備蓄庫か」


 それでこの防空壕にこれだけの物資があることに合点がいった。


「ところで浦賀。こちらからもひとついいかな?」


「な、何?」


 敷島は指を前に伸ばす。


「水波が呼吸困難で死ぬ」


 と、浦賀が視線を落とすと、


「んんぐ、むぅぅ」


 自分の口を塞ぐ浦賀の手を引き剥がそうとする、以前彼に馬乗りにされている水波がいた。


―――・―――・―――・―――・―――・―――・―――・―――・―――・―――


 元より電波の悪い山の中。加えて中継局が被害を受けたのかどんどん音質が悪くなっていく一方だが、備蓄物資の中にあったラジオによって次々と情報が入ってくる。


「……」


 この面子の中ではそこそこ頭のいい敷島だけはそのラジオの情報を把握し、他のメンバーはつまりどういうこと? 状態である。


「敷島。何があったんだよ」


「とりあえず自衛隊の発表だと、イージス艦1隻が撃沈。日本政府が緊急事態宣言を発令。災害派遣から防衛出動に切り替えて自衛隊の本格出動。アメリカ軍は現在は自衛のみだけで、介入は検討中。腰の重い平和主義国家にしては軍事行動が早いよな」


「分からん。10文字以内で」


「日本が攻撃を受けた」


 とても簡単な話である。


「攻撃? どこから?」


「分からない。けどアメリカ、中国、韓国、ロシアは攻撃を否定してるって……それで宇宙人による侵略という説は出てた」


「宇宙人って、葛城も言ってたが政府まで言い出したのかよ。冗談ならまだしも本気にはせんぞ。自分は」


 先ほどの嘘半分の話から一転。真面目な話ともなると、そのラジオ情報をまとめた敷島の『宇宙人』のワードに全面否定の浦賀。彼らにとってSFの世界の存在である宇宙人が、よりによって日本に攻めてきたというのが信じられないのも分かる。だが一方でそうでもしないと、日本の防空識別圏を突破、海自のイージス艦すらも撃沈して、さらに陸上に戦力を送り込む。そんなことをわずか数時間でやってのけることに説明が付かないとも言えるだろう。アメリカの後ろ盾がある日本にそんな真似ができるのは、その後ろ盾ことアメリカくらいのものであるが、アメリカがわざわざこんなことをする目的はなんであろうか?


「なんにしても、日本のイージス艦を沈めた時点で確定だろうね」


「「「何が?」」」


 敷島は3人の問いに顔を上げてはっきり答えた。


「約70年ぶり。日本の戦争が」


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