34話 分からない
目が覚めて複数日が過ぎた。この間に政府関係者から事の経緯を聞かれることとなり、そうしていると次第に体にたまっていた疲労も抜け、ところどころできていた傷も治ってきた。しかしどうも病院からの外出許可は出ようとはしなかった。
「あれか」
「そうなんだよね」
カーテンの隙間から外を除く浦賀。その横で水波が頷く。
どこかから敵中突破を図った人間がいることがばれたのか。はたまたそれ以外の理由か。多くの報道陣や野次馬が病院前に集まっているのが分かる。
「そりゃあ外出許可も出ないし面会謝絶にもなるよなぁ」
「というより外部から人を入れないって感じだよね。まるで隔離病棟……」
親族くらいならとも思うが、そうした嘘をついて病棟内に入り込まれては何をされるか分かったものではないのである。
「ほんと、水波の言ったことが分かる。葛城や嵩佐木が訪ねてきてくれた時、すごく退屈がしのげたし」
「そうだね……」
浦賀の何か言いたそうな言い方に水波が視線を逸らす。
「敷島は?」
そこなのである。最後に浦賀の役割を奪い取り、彼の背後でその作戦を実行した友人。その居場所とはいったい……
「分かんない」
「まさか……」
「分かんないよ」
水波は叫ぶように答える。
確かにあの状況で助かるのは絶望的である。だがわずかな、針の穴を通すような小さな確率を通り抜けているかもしれない。だがそれは分からないのである。今この情報封鎖が行われている状況では。
そして生死が不明なのは彼だけではない。浦賀や水波らは県外の学校に通うために実家を離れて1人暮らしをしていたわけではない。つまり彼らの実家は今まさに戦場にある。それは家族の生死も不明であることを意味する。
敵の手に落ちてなお生き残っていた嵩佐木のような例もある。そしてまさに浦賀らのように生き延び脱出に成功した例も存在する。それだけにもしかしたら何かの奇跡で生き残っているのかもしれない。だがそれはあくまでも可能性の話であり事実の話ではないのである。
水波が意識しないようにしていた現実。しかし浦賀が自らの身の安全を確保したことで他人の心配をし始めたことにより、その現実を再び思い出させてしまった。
浦賀はベッドから立ち上がり、わずかに目から溢れそうになる涙を拭ってカーテンの隙間から外に目をやる。
「待ってるから。いつまでも待ってるから。みんな……無事に帰ってきてくれ」




