第27話 街
もはやここは最前線と言ってもいいのではなかろうか。
海沿いを歩いてたどり着いたのは夕暮れの街である。
「あいつは……死んでる?」
浦賀が倒れた人影に対してそこらの石を投げて当ててみるも、まったくと言っていいほど反応はない。よく見てみると今まで自分たちを襲ってきたり、追いかけまわしてきた敵である。近くにはこの敵が使っていたのであろう、SF映画に出てきそうな銃がある。敷島が手にしてみるも、いまいち扱い方が分からない。ただ引き金を引けばいいというわけでもなさそうであり、物理的にロックがかかっている感じでもない。SFチックな見た目からして、もしかすると近未来的な個人認証のようなものがあるのかもしれないとも思わせる。
「どうするの? それ。使えないなら邪魔な気がするけど」
水波が暗に捨ててしまえばと口にするも、敷島はそうする気はない様子である。
「何かの拍子に使い道が分かるかもしれないし、牽制くらいには使えるんじゃない?」
「そういうならいいけど……早く別の所に行かない? その……あまりそういうのを漁るのは……」
浦賀と敷島はどこか感覚が麻痺し始めているのか。敵のものとは言え曲がりなりにも死体を漁っている2人に対し、やや引き気味の水波。嵩佐木に至っては見ていられないと影にいるし、葛城も少し距離を取っている。
「それもそうか……そろそろ今日の夜をなんとかしないと」
敷島が頭を掻きながら辺りを見回すも、浦賀は比較的落ち着いた様子。
「もうボロボロだけども一応は街中だし適当な建物に入ればいいんじゃない? 高い建物に登れば遠くも見えるかもしれないしいい案だと思うけど」
「高い建物か……あるにはあるけど」
敷島が見る限り大きなビルがところどころある様子。近くには地元銀行が1階に入っているビルが大きいものだ。もっとも敵に破壊されたか、はたまた人がいないのをいいことに泥棒が入ったのか、既にガラスは割られ店内はボロボロである。こうなると敵がいるかいないかも気になるが、そういった人間がいないかも気になるもの。仲間であればいいのだが、同類が仲間だとは限らないものだ。極限状態の人間ほど怖いものはないのである。
そこで死体漁りもほどほどにした浦賀・敷島は他3名を連れて今夜を明かすための場所探し。ところどころ人影も見えるような気もするが、そのほとんどが戦闘の末に倒れた敵である。その割には友軍の死体は一切見えない。だがこの場所が敵勢力下にあるとするならば、決して優勢というわけではないのだろう。敵側に回収されたのか、もしくは被害を避けつつ上手く撤退したのか、何らかの手段で一方的に攻撃したのか。
「こことかどう?」
と、先を行く浦賀・敷島に水波が声をかける。彼女が声をかけたのは比較的小ぎれいに見える中型のビル。と言っても1回のテナントに入っているコンビニは、もちろんのことガラスが割られ、商品はひとつ残らず持ち去られているが。だが5人にとって興味があるのは1階に限らず、一夜明かせるスペースである。2階や3階でもいいのだ。もっとも遠くの様子を見るという点では高い方が好ましいのかもしれないが。
「別にこだわることはないし、ここでいいか。何かあったらいいけど」
「どうせ計画通りならあと1日。何もなくても大丈夫でしょ」
楽観的な浦賀に対し敷島は首を横に振る。
「でもあったらいいじゃん?」
「例えば?」
「車のカギとか」
敷島はビルの隣にある駐車場。その奥にある、一見傷のなさそうな軽自動車に気付いていた。




