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第26話 見えてくる長旅の終着点

 沿岸部に出た今、最高の結末は海上保安庁・自衛隊・他国海軍により発見されその場で回収されること。しかしこの近辺は制海権を奪われているのか、はたまた沿岸部から攻めない方針なのか、船ひとつ見当たらない。


「どう? 動かせそうなのある?」


「いいや。さすがにあれだけの酷い空襲だったしな」


 浦賀が敷島と共に、そこらの道路に放置されている自動車を覗く。しかしそれらすべて横転していたり、パンクしていたりとまともに動かせる状況にない。一見まともな車も見られるが、カギが抜かれているものばかりである。災害時では誰でも動かせるように鍵を差したままにするのが良いはずなのだが、やはり持ち主たちはその間の窃盗が不安なのであろう。もっとも火事場泥棒は決して珍しくないため、それはそれで真っ当な防衛反応ともいえるが……


「使えない」


 敷島はいったい誰の者とも分からない車に蹴りを入れる。それでへこんでしまうわけだが、今更へこみの一つや二つ気にする状況ではないのもまた事実だ。


「歩く?」


 開かないカギのかかったドアを開けようとしていた水波。彼女の提案に、敷島は「仕方がない」と肩を落とす。車の確保は難しいだろうと思っていた彼であったが、やはり彼自身もここまでの踏破で疲れているのである。楽ができる者ならば楽をしたいのだ。


「はぁ。いつになれば着くんだろ?」


 水波がつぶやく横で、嵩佐木も小さくため息を吐く。やはり全員、疲れを隠し切れなくなってきているのである。


「今までのペースで歩き続けて、何もなければあと2日……」


「何もなければ……ね」


 敷島のやや希望的な回答に浦賀が含み気味につぶやく。少しずつ最前線に近づいていくのである。浦賀らが無謀な行動を取ったあの時を覗けば、かれこれ安全には来られている。だがここからはそう簡単にはいかないだろう。味方に近づくと同時に、それだけ敵の多いところにも近づいているのである。


「でも、ほんとうに目的地は近そうですね」


「葛城、何か見えるのか?」


 敷島は空を見上げる。そこには電信柱によじ登っている葛城。多少斜めになっていて、垂直になっている時よりも登りやすいとはいえ、つくづく身軽な男である。


「あの光ってるのは橋かな」


「光ってる?」


「うん。ライトというよりは光を反射している感じ」


 敷島らのいる地上の高さからは何も見えないが、高い位置にいる葛城には見えるのだろう。それがいったい何なのかは分からないが、彼の向く方が海であるということ、それも目的地のある方ということは、目指すべき関門海峡が近づいてきているということか。加えて彼の目から見て視認距離にあるということは、相当近いと見ていいだろう。こうなると運が良ければ今日中にでも突破できるはずだ。


「よぉぉし。目的地まであと少し。頑張ろう」


「はい」


「この長旅ももう少しで終わり、ですかね」


「なんにせよよかった」


 水波の意気上がる声に続け、嵩佐木、電柱から飛び降りた葛城、そして浦賀が答える。しかしひとり不安そうな声を1人出す者がいた。誰にも聞こえないほど小さな声で。


「あれが橋ならいいけどな……」


どうも、日下田弘谷です

この小説ならびに現在平行進行のもう一作は、

今までの野球小説に比べて1話あたりがとにかく短いです。

なお今回は1300文字くらい

短すぎるかな?(長いのに慣れた人)

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