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第16話 救援要請

 目的地を目指して歩き始めた午前。湧き水のでる所こそあったが、小川など都合の良いものはなく、タオルを濡らして体を拭くくらいで汚れをとるのが精一杯である。しかしここで重要な水資源を補給できたのはとても大きい。しかもその場所から少しいった場所が開けており、そこに鉄道の線路があったのだからこれまた都合のいい事この上ない。


「この線路の線形、方角からして……今はこのあたり?」


「いや。そこだとトンネルの位置が合わない」


 浦賀と敷島はお互いに地図を指差し議論する。


 古そうな地図ではあるがいくらなんでも戦時中とかそういったことはないだろう。ということは主要鉄道の路線やトンネルの位置などは変わっていないだろうから、それさえ分かれば場所を特定することはできなくもない。彼らが苦戦しているのは慣れないことをしているからだろう。


 ただ時間さえかければ割とすぐである。


「じゃあ、ここ?」


「う~ん。そこっぽいなぁ。もっと情報があれば確証が得られるけど」


 2人の確証はないが一応は出た結論に対して、葛城が首を突っ込む。


「だったら、あと3日もあれば目的地に着きそうですね」


「確かに」


「目的地には付きそうだよな」


 浦賀は同意を示し、敷島は意味深な返答。当然である。目的地はあくまで目的地であり、状況の変化によってはそこに着いても助かるとは限らないのだから。


「さてと。じゃあ……水波は?」


 浦賀が立ち上がり辺りを見回す。と、


「あっ、お待たせいたしました」


 濡れタオルで体を拭いていた水波が、湧き水のあった地点からようやく帰還。彼女と彼らが離れた場所にいたのは、言うまでもなく異性だからである。彼女自身も1人でいることは不安であったし、彼らも誰か1人だけにすることは不安であったが、やはりそこは非常時と言えどもケジメを付けるべきポイントであったのだろう。


「汗は流せた?」


 敷島が柔らかい声で問いかけると、彼女は元気を若干取り戻しての返事。


「はい。おかげさまで――」


 するとその瞬間、浦賀が彼女にとびかかった。


「隠れろ」


「んぐっ!?」


 後ろから水波の口を押さえて、近くに倒れこむ浦賀。そして近くに伏せる葛城。どこかで見覚えのある光景に加え、敷島が木の陰に隠れる。


「誰か来る……」


 息を殺して音のするほうを覗き込む浦賀。加えて敷島と葛城も。そして口を封じられた上に、後ろから抱きつかれる形で身動きできない水波はまたもただ恐怖心と戦いつつ待つのみ。


 だが、目の前に現れたものは予想していたものではなかった。


 ボロボロの洋服と靴。薄汚れた肌、やや伸びた髪。


「人間? 葛城」


「どうしますか?」


 浦賀が葛城に目線を配る。すると彼は浦賀と敷島に判断を仰ぐ。


 人間であれば合流するのも一手である。しかし『敵』の素性が分からない以上、知り合い以外は信用できない点もある。だが、地元の人間であるならば情報が欲しい。彼らにとって福岡は地元であるとはいえ、『福岡県全域』が地元なわけではないのである。


 浦賀と敷島の考えが一致した。


 今はとにかくリスクよりも情報が欲しい。


 頷いた両者に葛城も動く。すぐに近くにある石を拾って、伏せたままで『彼女』の近くへ投げる。よくその体勢でコントロールできるものだが、見事にその石は彼女の近くの木へと当たった。


 小さくも無く大きくも無い音。それを聞いた彼女は怯えたように辺りを見回すと、軽く手を振る葛城に気付いた。そしてまるで駆け込むかのように彼の元へ向かってくる。


「ん? なんかあの子」


「へんなものつけてるな」


 と、浦賀と敷島が気付く。


 遠目に見た時は何かのアクセサリーかと思っていたし、覆い茂る木々でしっかり見えたわけではなかった。だが彼女はあきらかに『おかしなもの』を付けている。


 起き上がった葛城は飛び込んできた彼女を抱きとめる。面識のないはずの彼女も、迷うことなく彼の胸に飛び込み荒れた呼吸を整える。


「なんだよ、これ」


「こいつは……」


 近くにきた彼女を見た浦賀、敷島は言葉に迷い、依然、ほとんど動けない水波も目を丸くする。


「鎖付きの首輪? ……何があった!?」


 水波を放り投げて彼女へと向かう浦賀。敷島も一緒に向かう。なお水波は放置である。


 彼女が付けていたもの。途中で切れているとはいえ鎖付きの金属製の首輪。


「はぁ、はぁ、はぁ。た、助けて」


 そして葛城の目を見て助けを求める彼女。


「ち、近くでみんなが捕まってて」


「「は?」」「「え?」」

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