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氷
氷の塊のようだと思いました
コップの中でカランと
音をたてたとき
手のひらの上でスンと
音もなくじんわり消えたとき
私は気がつくのです
どれだけ大きいと感じていても
少しづつ形を変えて
触れることさえできなくなるのだと
私は気がつくのです
いつだったか急に
遅れていた認識が
時間の経過の隣に立ち
足並みをそろえ始めました
言葉を話し始める頃には
なんとなく目にしたことがあって
言葉を話し終えるまでいつも
目の隅に写っているのでしょう
きっかけさえあれば
いつだって視界のど真ん中を陣取り
私に真実を見せようとします
テレビ画面に映る
弱いアルカリ性の
透明な血液を拭う
白いハンカチを見て
他人事に思えなくなったのは
つい最近の話です
できるだけ長く
追いかけていたいのですが
科学は日々進歩していると言いますから
いつかは並んで
追い抜いてしまうかもしれません
あなたが追いかけてくることは
明らかにないですけれど
その頃には私も
あなたと同じように
追われていたいものです