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リヒトの魔方陣

エラーと連呼するリヒトを抑え、一応、脳ミソに当たる基幹部分を見てみる。けれどわからない。ミレイユにも確認してみたが、わからないようだった。


「ふむ…こやつは神獣なのじゃろう?なんとかならんのか」

「って言ったってなあ」


どうすることもできない…まあ、リヒトはどうやら完全なロボットのようで、コッペリアのような心もなければフェンのような意思もないようだ。最悪、一度フォーマットして再起動するしかないか…?


「コッペリアはどう思う?同じ神獣として」

「うーん…申し訳ありませんが、同じ神獣としては何もないのですけど、私個人としましてはやはりヴァーン様…いえ、アルス様に作られたという誇りがありました。いまでも、ヴァーン様に作り替えて頂いたという誇りがあります。私は幸い、私という意思を変えられることなく体だけを作り替えて頂きました。しかしその際、例え同じものだとしても、私という意思が私じゃない私になってしまったら。そう考えると、嫌な気持ちがあります。それならいっそ、殺してほしいとも」


ふむ…自分のコピーは自分なのか?というやつか。うーん、難しい問題だ。他人から見たらそりゃ同じに見えるんだから同じだろうが、自分からしたら自分以外の人、大きく言ってしまえば他人になる。だから俺は基本的には、自分のコピーは自分ではないスタンスなんだが…どうしたものか。

そもそも、リヒトはなんの使命を持ったロボットなんだ?というか、コッペリアもなにか使命が与えられているのだろうか?


「コッペリアは星神話のアルスから作られたとき、なにか使命を与えられたりとかしたの?」

「いえ、私には特にこれといったことは…ただ、人形として生を受けたので誰かに遊んでもらうという、人形本来の存在意義はありました」

「なるほど。ありがとう」


なら、リヒトにはなんらかの役割があって作られたものであることが確定したな。ロボットとは、人の願いから作られる。自然発生するものではない。

要は、製作者がいて、自分もしくは他人がすべきことを自分以外のなにかにしてほしいから、その自分以外のなにかとしてロボットを作るのだ。作業の補助だったり、能力の補完だったり、作業の自動化だったり。どのロボットも作ろうと思われて作られる。なんらかの役割を持っているはずなのだ。

だから。


「このリヒトがどんな役割を持って作られたのか知れれば、もとに戻せる、か」


その役割を知るためには、リヒトをもう一度動けるようにして、本来リヒトがやりたかったことを最後までやらせてやれば分かる。だがそれでは…


「大丈夫です」

「アンディ!?」

「ウリエラ。大丈夫だよ。追われてる時に感じてたけど、この女の子は僕を傷つけようとはしてこなかった。たぶん、僕をどこかに連れ去ろうとしているんだろう」

「でも、連れ去られた先で何かあったら…私、私…!!」

「ウリエラ。普段なにもできない僕だけど、僕にしかできないことがやってきたんだ。ここで立ち向かわなければ、僕は一生、ウリエラの隣に胸を張って立てない」

「アンディ……。わかったわ。でも、アンディ。アンディがいつも私に元気をくれてるってこと、わかっておいて欲しいわ」

「はは…なんか今日のウリエラはいつもと違うね。……ヴァーンさん。お願いします」

「オッケー。でもま、アンディは魔法抵抗力が高かったろう?そしたら、俺の万能魔法とミレイユの大地魔法でかっちかちにしてしまえばよほどのことがなければ大丈夫だ。それじゃ、準備するぞ」


リヒトの心臓部をミレイユと共に直して、リヒトに魔力を充填する。しばらくして、リヒトが起動。アンディを連れ去った。

どうやら、目的地はこの世界の中にあるようだった。直接アンディと接触済みだからもとから問題はなかったが、同じ世界にいるため、千里眼で常に目視できる状態にある。万が一の事態になれば、転移できる。

リヒトはアンディをある地下施設へと連れていった。そこにはアンディの他に、多数の男性たちが囚われ、カプセルのような機械でコールドスリープさせられていた。初老の老人、中年、青年と年齢は様々だが、一貫して言えることは男児がいないことだ。どういうことだろう…としばらく見続けていると、どういうことか、アンディはある一室へと連れていかれ、そして、服を脱がされてリヒトに性行為を迫られていた。


「ちょおおいいい!!ただのダッ――」


ちらっとミレイユたちを見る。そして、これ以上は言うまい…とツッコミを断念した。


「どうしたのですか、ヴァーンさん!!?」

「い、いや…なんでもない。なんでもないが…」


なんでもないが、なんでもある。アンディの身の危険はないが、違う身の危険が迫っている。しかし、いますぐ救出しに行こうとするとアンディの尊厳とか、いろいろなものが傷つけられてしまうのでは…?

と、判断に迷っているうちに、状況が動いた。アンディにそういう反応がなかったのだ。それを確認したリヒトは直ぐに装備を着装し直し、アンディを他のコールドスリープされている男性たちがまとめられている一室に連行し、コールドスリープ機にアンディを入れ、地下施設を出て飛んで行った。

全く、リヒトは何がしたいんだ?ナニがしたいわけではないのか?

して、当のアンディはといえば、魔法も物理もかっちかちになっているから、コールドスリープしない。が、頭は冷やされている様子。まったくカオスな状況だ。

…ん?てかリヒト、こっちに来てないか?……気のせいじゃないぞ!!?


「なんでかしらんがリヒトが一直線にこっちにくるぞ!!」

「ど、どうして…って、アンディは!?」

「ひとまずは大丈夫だ。とりあえずまだ、リヒトの目的がわかってない。連れ去られても危害は(・・・)加えられないみたいだから、リヒトの出方次第でもう一度様子を見るか…?」

「それがいいと思うのじゃ」


リヒトの到着を待つ。俺たちの前に着陸したリヒトはどうやら、俺とアドに用があるようだった。リヒトが俺を警戒していたから、俺は仕方なく寝たふりをする。


「ひっ」


アドが怯え、反撃しようとする。アドもあれを見ていたんだろう…怖いはずだ。しかし俺は抑えるように言う。

アドを抱えた次は俺の番だった。俺もアドと同じように抱えられ、リヒトは俺とアドが無抵抗なのを確かめると地下施設へと連れていく。

先に俺のほうでよかった。リヒトはアンディにやったことを俺に繰り返す。しかし。


「エラー。アンノウン。エラー。アンノウン」


エラーを吐き出して、終わってしまった。俺もコールドスリープ室へ…というところで、俺は見た。リヒトが書いたのか、それはシステムコードのような魔方陣だった。

リヒトを適当にやり過ごし、俺はそれを見る。どうやらリヒトの役目に沿ったものだろうが、それだけではなにを表すのかわからない。俺はとりあえず、それを覚えておくだけに留める。…って、あ!!

気づいたときには既に遅し。魔方陣が置いてある部屋を出ると、ひぐひぐと泣くアドがリヒトに連れていかれていた。

リヒトが施設を出たのを見計らい、アドとアンディを回収して施設を出て、ミレイユたちと合流する。アドは傷心からか、俺の中へ入っている。


「ミレイユ、これわかるか?」


ミレイユに、俺が見た魔方陣を転写した紙を創造して渡す。


「おとんは妾を物知りかなにかかと勘違いしてるのかの…魔方陣に関しては、刻印魔法の領域なのじゃ。おとんがわからんのなら、妾にもわからんのじゃ」

「そうか…」

「あの、これ、闇魔法のものじゃないですか?これほどまでに膨大な量の情報を魔方陣に、それもこんなに綺麗に…」

「読めるのかウリエラ!?」

「なんとなくですが…。自動人形の制御を闇魔法で、ですか…いままで私は大地魔法でやっていたので、衝撃的です」

「解説してもらっていいか?」

「心苦しいですが、信じられないほど高位なもので、これが何であるかはわかるのですがなにを表しているものなのかはわからないのです。知り合いに闇魔法に強い方がいるので、そちらに解読してもらいましょうか?」

「人質に関してはひとまずは危害を加えている様子はない、か…よし、ウリエラ、お願いする」


「なるほどそういうことでしたら…しかし、ここまで高度な術式は私も初めて見ます。この魔方陣を預からせていただいても?」

「ぜひとも。むしろこちらからお願いするところです、ナタスさん」

「いやはや…いつになるかはわかりませんが」

「でしたらその間、私たちの家に泊まってください。アンディを見つけていただいたお礼もまだですし、無駄に広い家ですので」

「んー…それじゃ、お邪魔させて貰おうかな。セラス、いいか?」

「ウリエラさんがいいのなら私は構わないわ」

「んじゃ、お邪魔させてもらいます」


ここは遠慮すべきなのだろうが、アンディも頷いているし、ここで断るのは逆に厚意を無下にしてしまう気がするので、セラスの意思を確認してから返事をする。

ナタスさんに魔方陣を渡し、時間もできたことなので、俺たちはゆっくりとブラクティシア魔法師連盟国を観光することにした。

ブラクティシア魔法師連盟国の国土は、北海道くらいの大きさしかない。アルヴテリアの直径が地球の10倍だから、地球の表面積の25倍あるアルヴテリアで北海道くらいの大きさしかないというのはすごく小さいというのがわかるだろうか。

そんなブラクティシアがなぜ、他国から侵略されないかというと、やはり高度な魔法技術があるからだ。いまのアルヴテリアにとって、魔法師は通常の兵の何十倍もの兵力を持っていると言ってもいい。なにせ、簡単なゴーレムでも作って戦わせればいいのだから。

かといって、それは外国から見た場合のことだ。ブラクティシアからしてみれば、ゴーレムを数百数千も作って外国に攻めいるようなことはしない。この国にいるのは研究者なのだ。侵略者ではない。

そのため、攻めることはせず。攻められることもない。国土が小さくても争いはない平和な国がブラクティシアなのだ。




しかし。


「そろそろ頃合いか。ブラクティシア侵略作戦を決行するぞ」

「はっ」


それでも、優秀な魔法師が集まるこの国は魅力的なのだ。

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