アヴくんの助言
「よしわかった。追跡しよう」
「それは…なんという魔法ですか?あ、いえ!御法度でした!申し訳ございません」
「いや、いいんだよ。というか、魔法というより体質だから真似できるものじゃないし」
「体質…?」
「そう。万物の魔力の流れを視る眼」
「そんなものが…」
ウリエラさんが難しい顔をして声も出さずに何かを言っている。しかし、直ぐに止めて俺たちに会いに来たときの乗り物を手元に寄せた。
「考えてもわかりませんし、いまはアンディが最優先です。ついていってもよろしいですか?」
「いいよ。その代わり、問題が片付いたらその乗り物の乗り方を教えてほしい。報酬としてね」
「それだけでいいのですか?これ、一般的な魔法ですよ?」
「俺らの誰も、空路を持ってないんだよ…俺らにとっちゃ貴重だから、報酬としてふっかけるなら今のうちだよ?」
「そう言うのでしたら…ありがとうございます」
「それじゃ、出発しようか」
キュリスが氷の橋を作り、屋形を引いたフェンがその上を走る。それを見て、ウリエラは驚いていた。
「数百キロもの重量を乗せられるほどの氷の橋…しかもそれを宙に生成し続けているなんて。根元のほうの強度はどれほどなの…?この魔法の魔力係数は…わからない!?魔法係数も!少なくとも十は越えている!信じられない…」
うーむ…やはり俺たち龍種の使う魔法は信じられないほどに高度なもの…のはずなんだけどなぁ。マルスに武器にされたり魔王に通用しなかったり。まぁ魔王は防ぐのではなく回避をしていたけど。セラスが無反応なのは恐らく魔法をあまり見たことがないからだな。インヴィクルの奴らには奇襲をかけていたし…まぁ、再確認できてよかった。この国のトップである魔法師連盟首長様とやらはどれくらいの使い手なのだろうか。人類でもかなりの使い手なら、俺たちが使う魔法と魔王とマルスはとんでもない異常者となるが。
「…うん?ここで途切れているな…」
飛ばすこと2時間。見晴らしの良い開けた丘でアンディの魔力の痕跡は途絶えている。ということは、ここでアンディはパッと消えたわけだ。
ちなみに、転移の権限でも魔力の痕跡が途絶えることはない。転移とは現在地点の空間と、目標地点の空間とを魔力で結んでその間の空間を切り離すものなのだ。空間と空間とを魔力で結ぶときにどうしても痕跡が残る。
もう一つの可能性としては、アンディが死んだかだ。魔力の痕跡は先にも説明した通り、生命活動をしているときに消費する魔力のカスのようなものだ。つまりは、生命活動を終えれば魔力は痕跡を残さなくなる。…だがそれだと今度は逆に、ここかもしくは近くで生命活動を終える要因があるべきで、千里眼ではそれを見つけられていない。
心臓発作かあるいは脳卒中か…それにしても遺体がない理由がない。
「っていうか…」
「うむ、おとん」
「なにかわかりましたか?」
わかったというか、わかっていたというか。聞いた話によるとアンディの同行者は使い魔だけなはずなのに、もう一つ別の魔力の痕跡が加わっているのだ。しかも宙からパッと出現するように。これは…
「うむ。異次元へ連れ去られたと見て良いじゃろうの」
「だよな…そして、その連れ去った存在なんだけど」
「神獣かもしくは、悪魔の仕業かじゃな」
「うんうん、神獣の…って、悪魔?」
「知らんのか。悪魔とは、人を堕落させたり、誘惑したりする存在じゃ」
「悪魔の概念は知ってるけど…アルヴテリアにいるの?そんなやつら」
「リヴィアは嫉妬の悪魔だと名乗っておったろう。それならば他の悪魔もいるんじゃないかの?知らんが。まぁ、あくまでも可能性の話じゃ」
「ふむ…悪魔の話はあくまでも…」
「やかましいのじゃ。とにかく、その悪魔も方向性が違うのじゃが神獣と同じく神に近い存在じゃ。それゆえ、魔力の痕跡も似たものになっておるはずじゃ。まぁ妾は十中八九神獣が犯人だと思っておるがな」
「神獣による神隠し、か。コッペリアなにかわからない?」
コッペリアに聞いたのは、彼女が神獣だからではない。コッペリアも自身の権限による、異空間への強制転移をしていたからだ。
「そうですね…神獣同士、なにか特別な繋がりがあるというわけでもないので詳しいところはわからないのですが、強制転移の魔法についてならわかります。対象を強制転移させるには、相手の抵抗力を上回るほどの干渉力で魔法を使うか、相手が無警戒のときに魔法を使うかのどちらかです。アンディ様の魔法抵抗力はいかほどのものだったか…と聞かれてもわかりませんよね」
「あ、それならわかります!アンディは装備で魔法抵抗力をかなり上げていて、魔法抵抗力は9か10くらいだったと思います」
「凄い高いですね。竜人種や高位の魔法生物並みにありますよ?ちなみに、アンディ様は人種の方だと思っていたのですがお間違いありませんか?」
そういえば確認してなかった気がする。これが実は、魔法で作られた人形とかクローンとかホムンクルスとかではないだろうな。
「間違いないです」
「魔法抵抗力が9以上ということであれば抵抗力としては最大級…それならば干渉力で力押しすることは出来ません。なので、無警戒のときに強制転移されたのだと思います」
「なるほど…それにしたって、手詰まりだな。どうしたものか」
手がかりが完全に失われた。異空間に転移されたとなっちゃ、そりゃ魔力の痕跡も途切れてるってもんだ。異空間は、その空間が存在している軸がいま俺たちがいる空間の軸とは別のものだから魔力眼では追えない。例えるならルービックキューブが常に動いているような感じで、その位置が一定ではないのだ。
ルービックキューブの一面に線を引いて、色の面をバラバラにすればわかると思うが、引いた線は当然バラバラになる。それと同じだ。
ゆえに本当に手詰まり。どうしたもんか。
「ふむ…転移となれば、アヴに聞けばいいんじゃないかの?」
「あー…でも隠れてもらうんじゃないの?」
「声だけなら特定されまいの。そして、いくら妾達龍種の力を借りているからと言ってもやつらは所詮人じゃ。借りている龍種の力もおそらくじゃが精神系のものじゃしの。空間を司る最高位龍種が本気で異空間に引きこもっているところを探しだし、まして乗り込めるはずもないのじゃ」
「それもそうか。おーい!アヴくん!」
『はい、なんでしょう?』
「呼び掛けてみたら繋がるもんなんだな…アヴくん、転移でさ、どこにいるかもわからない相手のところに転移したいときって、どうする?」
『現在地がわからない対象の近くに転移したいってことですか?』
「そうそう!」
『お父さんは転移をするとき、おそらく座標を指定して転移をしていると思います。しかし、転移は場所を指定するだけでなく、目的のものを指定してその近くに転移することもできるんですよ。例えば、イルのところに行きたいのならイルに、お父さんのところに行きたいのならお父さんに目的地を設定して行くことができます。場所ではなくものに目的地を設定する方法はいくつかありますが、一番確実なのはそのものしか持っていない特徴を鮮明にイメージする方法です。僕がイメージするのに使っているのは魔力ですね。魔力が同じ形質のものはありませんしいませんから』
「なるほど…ありがとうアヴくん。いまちょっと立て込んでるけど、落ち着いたらイルの近況も聞きたいし一回話そうか」
『はい!楽しみにしてます!』
んーかわいい。しかし、目的のものの魔力をイメージして転移する、か。会ったこともないアンディの魔力をイメージするなんて…って、あ!!アンディの使い魔の鳥の羽があるじゃん!!これを使えばアンディがいるところに転移できるんじゃね?アンディと一緒に使い魔の鳥が強制的に異空間に連れ去られているって確証はないけど、もし取り残されてたらウリエラに助けを求めるなりしてるでしょ。
「アヴ?」
「そうじゃ。キュリスとアドは会ったことはないんじゃったかの。妾達と同じ最高位龍種の一柱なのじゃ。空間を司る龍種での。妾達の何倍もの魔力を持ってる凄い奴じゃ。して、おとん、なにか掴めたかの」
「うん。厳密には違うけどアンディのところに行く方法が思い付いた」
「ほんとですか!?」
「アンディの使い魔のところに行く方法だけどね。この羽の持ち主のところに向かって転移するって方法なんだけど…流石の俺も龍種3体+αを一辺に転移できるほどの魔力はないから、一緒に行くメンバーを決める。まず、もしかしたらインヴィクルのメンバーの仕業かもしれないから、抵抗龍力相殺派を使えるミレイユ。そして、本人確認ができるようにウリエラさん。あとは…キュリスかアドどっちかを転移させるほどの魔力はあるけど、もしものときのために残しておきたいし、キュリスアドはお留守番。んで、危ないからリウスもお留守番。キュリスアドリウスのお守りがほしいのともしもインヴィクルに襲撃されるとキュリスアドリウスには対抗手段がないからコッペリアとフェンもお留守番。セラスは…うーーーん」
「いいわよ、私も残ってるわ」
「すまん、ありがとうセラス。それじゃ、アンディ救出作戦のメンバーは俺、ミレイユ、ウリエラさんてことで」
「うむ」
「ありがとうございます!」
よし、メンバーも決まったことだし、アンディを救出しに行くか!
他の悪魔たちも登場させる予定なので、せっかくなので嫉妬の悪魔リヴィアのアセロラースの部分を憤怒にして、代わりにインヴィクルとして、変更しました。




