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ゲール大陸へ

申し訳ありません。活動報告で申し上げましたが、この更新からしばらく時間を頂きます。

「わあ!なにあれ!」

「おいセラス!勝手に動くな危ないって!何があるかわかんないから!」

「わーーー!!」

「待つのじゃキュリス!リウスとアドもいい加減止めんか!」


ミレイユと一瞬目配せ。すぐに自分の役割を悟り、それぞれの保護対象を追いかけた。


「ど、どうしましょう…」

「ワォン!」

「そうですね。私たちは私たちでしばらく観光いたしましょうか。顔を隠せる被り物も作って頂きましたし、フェンも首輪を作って頂きましたし。では行きましょうか、フェン」


取り残されたコッペリアとフェンも何も考えずに歩き出す。


ここは港町、ドント。ゲール大陸はジュエ大陸の地軸を挟んで真反対に位置しているため、ジュエ大陸からゲール大陸へと向かうにはいくつかの大陸か島に寄っていく必要がある。

セラスが居れる期間はあと6日だけ。直径が地球の11倍あるアルヴテリアだが、表面積は単純計算で121倍。円周は11倍ある。

フェンがいくら音速で走ってくれたって、地球ですら音速で一周するのに32時間ちょっとかかるというのに、アルヴテリア一周にはその11倍かかる。

反対側なんだから半分だろ?と思うかもしれんが、んじゃ帰りは?ということで結局1周分ある。移動だけに14日かかるんじゃ素直に他の冒険者らしいことをする。

だがそれは地表を移動する場合だ。それも、物理法則に従って。

忘れちゃいけない。地表を移動していたのはサービスである。セラスのために冒険者らしいことをしていたまでで、セラスが見ていなければ…つまり、セラスが寝ちゃえばあとはこっちのもん。ミレイユに頼んですぐさまゲール大陸…の近くの島の一番近い港へ一直線だ。

程よい時間でセラスを起こし、ゲール大陸行きの船に乗ってどんぶらこ。4時間ほどでゲール大陸に到着だ。魔法で船の速度を速めようとも思ったが、流石ゲール大陸へと繋がる船。ちゃんと自前で速くなっていた。それに、航行時間を早めてはリアリティに欠けるだろうということで、俺らは適当に船の中で過ごしていた。

セラスの希望で最上級の船ではなく、中級の速さを求めた船だったが、それなりに楽しめた。釣糸を垂らしていたら大型の魔物がかかってしまい、船長に怒られたのは笑い話だ。

そんな道中を経て到着したゲール大陸は、それはもう、幻想的なものだった。

そこかしこを精霊が飛び交い、人手もなく物が浮いて動き、魔物っぽい馬が馬車を引いている。機械化はされていないが、魔法がかなり生活に浸透しているようだ。


「こらセラス。危ないだろ」

「ごめんなさいヴァーン。エスコート」

「仕方ないな…ほら。腕、貸すよ」


セラスが俺の腕を抱き、引っ張った。一応王族という体をとっているんだろうが、急かす様子は完全に冒険者に染まっている。


「ミレイユちゃんたちは?」

「ミレイユはキュリスアドリウスのお守り。コッペリアはフェンについてもらってる」

「そ。久しぶりに二人っきりね」


お?セラスが急に年頃の女の子のようなことを言い出したぞ…と思ったが、思い出せばセラス、20歳にもいっていないんだったな。今年で16と言っていたから、あれから何ヵ月か経ったいまでも年は変わっていないはずだ。

年頃の娘を持った父親の気持ちを俺は知らない。が、たぶん、こんな気持ちなんだろうな。


「せっかくだから、カネのことは気にせずはしゃいでいいぞ」

「流石ヴァーン!その言葉を待っていたのよ!」


ぐいっと引っ張られて、服屋へ連れていかれた。

そして買わされたのは…俺の服だった。


「セラス…せっかくの異大陸の異国の服屋なんだぞ?自分のじゃなくていいのか?」

「いいのよ。自分のも買うから」


こりゃ…丸1日服屋で時間が潰れるな、という予感がした。




「これキュリスアドリウス!やっと止まったと思えば、人に迷惑をかけおって!」

「だ、だってミレイユ…」

「だってもこうもないのじゃ!素直に謝らんか!」

「…ごめんなさい」

「すまんの、人の子。妾からも謝るのじゃ」


そう言われて美幼女3人と美幼児1人に頭を下げられ、たじろぐ行商人。

しかしその行商人、何を扱っているかと言えば、奴隷だった。


「君たち、大人は?君たちだけ?」

「そうじゃ。いまは妾達だけじゃ」




「ふふ、そんなに鼻をひくひくさせて匂いを嗅いで、なにか美味しそうな匂いでも漂っているのですか?」

「ワォン!」


ぺちぺち、ぶぉんぶぉん。大型犬ほどの大きさに縮んだフェンは、肉球で大地を踏みしめ、尻尾をアンテナに周囲を探っていた。ふんふんと匂いを嗅いでみると、なにやら美味しそうな匂い。フェンは早速、その匂いがする方角へと向かってみる。

それについていくコッペリア。コッペリアの機嫌はすこぶるいい。主人に作ってもらった被り物を被っているということもそうだし、何より、自身と同じように主人を待ち望んでいた存在と共に、主人がいるという確信を得て、そして、その旅に同行しているのだ。

あの気が狂いそう…いや、気が狂ってしまうほどの永き日々のこと、その時の気持ちのことを思えば、いまでは空も飛べそうなほどに心も体も軽い。


「ふふ、フェン、良いお店を見つけましたね。流石です。良い子です。それでは一つ、実食してみましょう」

「ウォン!」


と、店に入ろうとしたとき。そう言えばと思い出す。


「…人間のお店は基本、ペットは入ってはいけませんでしたね。申し訳ありませんが、フェン。少し待っててください」

「クォン…」


そして、コッペリアが店に入ること10分ほど。土魔法で作ったであろう皿と、紙袋に野菜と果物を入れたコッペリアが店から出てきた。

皿の中には食べやすく切られた生肉が入っている。コッペリアは邪魔にならない所まで移動してそれをフェンの足元に置き、魔法でベンチを作って座った。


「私が野菜を食べてみるので、フェンはお肉の味を確かめてみてください。気に入ったのなら数日分買っていきましょう」

「ワォン!」


そしてこの後、コッペリアは10日分の食材をこの店で買うことになるのだった。

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