35番目の神獣
名前『フェン』
位『最高位』
種族『純血:アルヴフェンリウルグ』
権限『耐久力5』『耐性4』『筋力8』『威圧10』『熱魔法:冷6』『運動力魔法1』『大地魔法2』『空間魔法2』『万能魔法4』『狼長』
上位権限『神狼』『統率』『強圧』
特殊権限『上に立つもの』『氷結界』『フェンリル』『雪毛』『凍てつく吐息』『従順』
権能『35番目の神獣』『使徒』『主神の加護』
ふむ。全体的に攻撃寄りなステータスをしている。とくに氷関係の権限が高いな。森を凍らせていたのはおそらく氷結界という権限か。
「よーしよしよしよしよし。ふっさふさだなあお前」
「ワォン!」
体をわしわしと撫でてやると、フェンは大層喜ぶ。今は大型犬より一回り大きいくらいのサイズで、縮んだときは驚いたものだ。
そんなフェンにキュリスは乗って移動している。目的地は当然、冒険者組合だ。
「それでは報告してきます」
コッペリアとフェンを向かわせて依頼の達成を報告する。その際、フェンの威圧が効いてるのか、コッペリアにちょっかいを出す輩は居なかった。
依頼内容は調査だけだったが問題の解決も同時にしたため、報酬3割増し。
報酬はセラスと半々で分ける。
「いいの?私何もしてないのに」
「謙遜はいらんぞ。セラスの指示がなければフェンの命は無かったかもしれないんだから」
「そう。それじゃ遠慮しないで貰っとくわ」
そう言って何でもないように受けとれていると思っているのだろうが、目が輝いているし、口角も少し上がっている。ミレイユ謹製の丈夫な小包に入れて渡したから、数百年経っても壊れることはないだろう。一生もんの宝になるぜ。
「そんじゃ、次、どこ行こうか」
「それじゃ私、次は魔法大国に行きたいわ。ファランはお世辞にも魔法技術が発達してるとは言えないから」
「魔法大国?」
「そう。いくつかあるけれど…そうね、ブラクティシアとかがいいかしら」
「ぶ、ブラ…?」
「ふふ、そういうところは変わってないようで安心したわ。ブラクティシア魔法師連盟国。魔法使いが集まる国で、『銀造りの屋敷』というところでは日々魔法の研究がされているそうよ。その屋敷の奥にある『蜥蜴の尻尾園』には建国者であり魔法師連盟首長でもある方がいるって噂。本当の姿は誰も見たことないって話なのだけど」
ふむ。面白そうな国だな。俺もいまだに専門の魔法使いとやらを見たことはないし、一度見てみたいという気もある。
「よし、行こうか。ちなみにどこなんだ?」
「ゲール大陸よ」
「真反対じゃねえか!」
こんなことでアヴ君を呼ぶわけにもいかないし、龍種4体、ミレイユキュリスアドに異空間のムスペルヘイム、リウスとコッペリアにフェンに異空間とセラスを合わせ数万人の人。流石に全部を転移させることはできない。最高位龍種1体だけでもかなり消耗するのに、3体プラスαだと何日かかるか…その後にリウスコッペリアフェンと万人がいることを思えば、素直に移動したほうが速い。
というわけで。
「ミレイユ、なんとかできない?」
困ったときのミレイユ様だ。
「おとん、困ったときは妾に頼めば良いとか考えておらんか」
「ギクッ」
「はあ…まあ良い。じゃが、これはその人の子の冒険者を体験したいという願いでやっていることじゃろう?移動で土しか見えんというのはなかなか、その人の子が想像するものではないじゃろう。その上、人の子からすれば真っ暗じゃろうな」
確かにそうだな。ミレイユの移動方法って体の周りをカプセルのように土で覆って、土魔法で管を作って高速で移動するってものだし。当然カプセルの中には光源がないから、俺らみたいに真っ暗闇でも大丈夫な目でもないと、なにも見えない場所で延々待つって状況になる。光源を付けてもいいんだけど、見えても結局土。それなら新しい移動方法を考えたほうがより冒険者らしい。
となると、なにで移動するか。と言っても、鳥やらの空路に伝はないし、陸路しかないわけだが。だが陸路って言ってもゲール大陸に行くには海を渡らないといけないから海路も必要になってくる。どうしたものか…あ!
「フェン、お前海って凍らせられたりする?」
「ウォン?」
陸路でしか移動できない。だが海路も必要。だが海路は行けない。なら、海路を陸路にすればいい。ってことで海を凍らせて行く作戦だ。ついでに、氷の上だと犬橇ができる。
「わあ!この感覚、懐かしいわ!」
ダッシダッシと氷を踏みしめる音が聞こえる。
速度は結構出ている。だが辺り一面海だから、それほど出てないように感じられるか。セラスは前のときのように時速60kmほどだと勘違いしているかもしれんが、実際はその20倍以上は出ている。フェン、かなり速い。
「こらセラス、危ないから顔を出さない」
「いいじゃない。危ないものなんてないんだから」
喜んでもらえてるようで何より。フェンには感謝だな。
いまはフェンに屋形を引いてもらっている状況だ。これまたミレイユ特製の屋形で、乗り心地は最高だ。ミレイユが高性能すぎる。
中にはセラス、ミレイユ、コッペリアとセラス、俺が入っている。キュリスアドリウスはフェンに乗ってはしゃいでいる。
しばらく進むと、大騒ぎする声が聞こえなくなった。流石に飽きたのだろう、キュリス達の様子を見るために外を覗くと、ポツポツと雨が降ってきていた。そこで俺は閃いた。せっかくだからと。
「キュリス、フェンの走る速度を下げてもらって、進行方向を海の中へと誘導できるか?」
「んー…やってみる」
そして、景色が変わった。
フェンやキュリスが作る氷は透明度が高く、まるでガラスのように透き通る。そんな氷の中を進んでいるものだから、景色はまさしく天然の水族館だ。
「すごい!すごいわヴァーン!見て!あんな魚見たことないわ!あっちにはジャギョの群れ!あっ!おっきな魚が群れを襲ってる!」
キュリスが増えたかのようにはしゃぐセラス。
やっぱり、普段の王族として背伸びしたセラスより、いまのような年相応のセラスのほうが好ましい。ミレイユもふん…とどこか照れくささを隠すように笑っている。生命を誉められて嬉しいのだろうか。
フェンの権限である氷結界の影響か、氷の管に海水が入ってくる様子はない。それならばと俺はミレイユに頼んで屋形の天井を無くして貰った。
瞬間、体に叩きつけられる風。俺は慌ててなけなしの運動力魔法で風を調整した。その慌てぶりに、セラスが笑う。
天井が無くなったため、屋形はオープンカーのようになっている。そのせいか、少し肌寒い。俺はアドに言って気温を調節してもらった。
「はあ…すごいわ。幻想的ね。…普通の冒険者はこんな贅沢、できないんでしょうね」
「そうか?」
「そうよ。まず氷を作れる魔法師が少ないわ。炎を出せる魔法師は多いのだけど。冷たいより熱いほうがイメージしやすいからかしらね。そんな氷を作れる魔法師でもこうやって自在に形を変えられるのは世界でも一握り。それこそ、今向かってるブラクティシア魔法師連盟国のトップの二人ができるか出来ないか。Sランク冒険者の魔王様はできるって話だけれど」
そう言えば俺が会った魔法使いなんて大概規格外か人外で、まともな人間の魔法水準がどれほどか知らなかったな。
それにしても、とセラスが続ける。
「それにしても、別れたときからこんなに仲間を集めて。何があったか聞きたいわ」
「そうだな。移動中景色だけを見るのもつまらんし、話そうか。最初の同行者はミレイユだったか」
「あの私よりも大人びた小さい子が?」
「そう。あれでも、最初はよく俺に甘えてたんだぞ?よく抱っこしてやったもんだ」
「お、おとん!なぜそれを言うのじゃ!」
「あちゃ、聞こえてたか」
先ほどまで憂いた表情で海を見ていたミレイユが、顔を真っ赤に染めて声を上げる。大方、弱肉強食が顕著に現れる海の景色を見て、限りある命の儚さとはとか考えていたのだろうが、こういうところはまだまだ子どもなのだ。




