冒険者の依頼
「はじめまして、セラスよ。今日から1週間、よろしくお願いするわね」
「うむ」
「よろしくね!」
「よろしく…お願いします」
「よろしくお願いします」
「よろしくお願いいたします」
ミレイユキュリスアドリウスコッペにも紹介を済ませ、まずはとセラスの権限を見てみる。
名前『セラス・ガイナース・ファラン』
位『中位』
種族『純血:アルヴヒューマ』
権限『耐久力5』『耐性5』『筋力2』『魅了3』『熱魔法:暖1』『大地魔法2』『万能魔法1』『智力4』『威圧3』
特殊権限『上に立つもの』『将来の約束』『生け贄』『虫の知らせ』『権限任意装備』『傾国の救世主』『教祖』『王女』
権能『敬虔なる使徒:善』
うーん。やっぱり、装備で上乗せしているものを除けば一般人の域を出ない。セラスの出自になにか特別なものがいたとかあったりとかしたらまた変わったのだろうが、そんなことがなければ結局、一国の王であっても人をまとめる一人間に変わりはない。もちろん、王女であっても例外ではないのだ。ま、セラスが普通の人間でよかったと思っておくしかないな。
「あげた装備はしてきてくれてるようだな」
「もちろんよ。むしろしてこなかったら、あの準備はなんのためのものだったのかわからなくなるわ」
「そりゃそうだ。回復薬は赤色を1つ使ってしまったこと以外にはあの時買ったまんまだから、このまま出発しよう」
「ええ、わかったわ。それで、何いくの?」
「あれ、低位竜じゃなかったか?」
「ん?ああ、もちろん冗談よ本気にしてたの?ふふ、笑えるわ」
こいつ…!!低位竜狩るって言うから謁見(?)のあと俺はすぐに図書館に行って万能魔法のことを調べたんだぞ!!くっ…これを言うとまた笑われそうだから言わんがな!
ちなみに俺は万能魔法をアヴくんの空間、ミレイユの大地、キュリスの冷、アドの暖のように司っているわけだが、万能魔法はその実どの属性にも当てはまらない余ったものを押し付けられているに過ぎず、俺が全ての万能魔法を使えるかと言われればそうではないと答えられる。そして万能魔法も万能魔法で、大した名前ではあるが実際のところは万能魔法というよりは万納魔法とでも言うべきもので、めぼしいものと言えばほんと、回復魔法とか強化魔法、それを聖水に付与する魔法、刻印を刻んで意味を持たせる魔法、運気を上昇させる魔法やらなにやらぽわぽわふわふわしたものなのだ。
「そういえばヴァーン達はいつもなにをしているの?」
「ん?ああ…あー…」
聞かれて、答えていいのかどうか迷った。そういえば、冒険者としての活動でいえば、まともにやったのはいっちばん最初の低位竜の討伐依頼くらいで、それ以降はもうインヴィクルへと専念している。まともな冒険者活動をしていないことに気づいた。
「あー…。セラスはインヴィクルって知ってるか?」
「知ってるわ。星神話に出てくる女神のことでしょう?」
結局、答えることにした。が、セラスが知らないなら知らないでいいと思い話を終わらそうとした。だが。
「…ああそれだ―」
「そして、邪神復活を目論む組織の名前。どう?一応これでも、政治のために勉強したのよ」
「はは…意地が悪いぞ、セラス」
「ふふ。それで?そのインヴィクルが、どうしたの?」
「そう、その組織の方のインヴィクル。俺らはそのインヴィクルを強襲して、壊滅させて人質を解放している」
歩きながら、はしゃぐキュリスとリウスを微笑ましく見て、俺の話を話半分に聞いていたセラスは、ん?と気づいたように、俺の方へと振り向いた。
「あれ?知ってるわ、その話。たしかノースブラントで活躍されてる勇者様も同じことをやっていたわね。ヴァーンは勇者様となにか関係があるの?」
「あれ?」
セラスは勇者が俺だってこと知らないのか?
「セラス、俺の名前は?」
「なに、いまさら。ヴァーンでしょ?違うの?」
「いや、違くないけど。それじゃ、冒険者として広く知られてる名は知ってるか?」
「ヴァーンじゃないの?」
やっぱり。知らないのか、セラス。まぁそりゃ、ファランから遠く離れた大陸のことだ。あまり知らないのも無理はないな。
「勇者の容姿は?」
「さあ?内政にばかり力を入れていたから。そこまで詳しくはしらないけれど、幼い子どもを連れた竜…人……って…もしかして」
「そう、その勇者。俺、勇者」
「うそ!?ヴァーンあなた、そこまで有名になってたの!?…それじゃ、ファランの国家予算並みのウェイズを持ってるというのも冗談じゃない!?」
むしろなんだと思ってファランを守ってくれる機会がーとか名のある冒険者にーとか言ってたんだか…
「インヴィクルって、かなり過激な組織だって聞いたけれど」
「ああ…だいぶ、非道なことをやっていたよ。だがもう、組織としての力は残っていないはずだ。ただ、俺が冒険者組合と結んだ契約はインヴィクルだけじゃなくて、邪神復活を目論む組織の壊滅だから今後、同じような組織が出てくればインヴィクルと同じように俺が率先して対処しなくちゃいけない」
「へえ…それじゃ、ファランにも似たような組織が出てくれば飛んで来てくれるのね?」
「ああ、もちろんだ。そのための勇者って肩書きだからな」
円滑に動けるように、いままでの実績もないのにこれからの実績を見てくれた肩書きだ。正直言って、自分でも期待通りの働き、勇者の肩書きとSランクの肩書きに見合う働きはしたはずだ。が、まぁ。人類を作った責任として、平和維持活動はしていくつもりだったから、動きやすくなるというのなら存分に使わせてもらおう。
「だから普通の冒険者ってのがいまいちわかんなくてな…」
「そう…それじゃ、受付に聞いた方が早そうね」
「ああ、そうだな」
冒険者組合の受付は、その冒険者に見合った依頼を紹介してくれる。冒険者組合は国に縛られない組織で、国を跨いで冒険者を派遣するため依頼は尽きることがない。まぁ流石にアルヴテリアの裏側までいくかと言われれば無理だと答えるしかないが。報酬の割に合った依頼を受けるのが常だ。移動費は実費だからな。その点、俺らはアルヴテリアの裏側へだって目的地まで一直線、文字通り地球儀から結んで一直線で行けるってもんだからずるいよな。自分でも思う。アヴくんがいたら一直線どころじゃないし。
蛇足だが、半数くらいの冒険者には帰属意識がほとんどない。有名な話では、小国同士のいざこざで、片方の国はAランク冒険者がいれば余裕で勝てていたのにその冒険者は参戦せず静観して、戦争が長引いて非難を浴びた。その上、頭にきたのか敵国の戦力として参戦して、母国だった国は大敗して属国に。その後Aランク冒険者は家族を連れて他の大陸に移り住んだ、という物語がある。これは極端な例だが、冒険者の帰属意識が薄いという一番有名な例でもあるのだ。
「それじゃ、コッペリア。適当な依頼を頼む」
「はい。かしこまりました、ヴァーン様」
ということでCランク冒険者として登録してあるコッペリアに頼んで、適当な依頼を受けてきてもらう。
俺が依頼を受けようとすると、紹介されるのは最低でも準Aランクほどの依頼だ。Sランク冒険者がそこら辺の薬草取りにいくなんて、戦力の無駄遣いにも程がある。冒険者は自分のランク、若しくは自分が所属するパーティーのランクから2つ下までのランクからしか紹介してもらえないのだ。ついでに言うと、上は1つまで。戦力を遊ばせるのは無駄だが、戦力をむやみに潰すのはもっての他というわけだ。ただ、もちろんこのような抜け穴も存在する。まぁ、見ず知らずの他人に代わりに依頼を受けてきてくれなんて言っても、依頼を達成して報酬を受けとるときにぶん捕られるか逃げられるかして結局は損をするのが目に見えてるから、かしこい冒険者はなかなか背伸びしてランクを上げたがらないのだ。 背伸びをした結果なんて、大半はそのまま人生ごと転んで終了。転ばなかったやつでも大概大怪我している。そこから大成したやつはもとから背伸びなんかしていなかったってことだ。




