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ファラン王への謁見

またまた場所は変わって、いまいる場所はファラン国王城前。すこし用があってここにいる。


「なに?陛下に謁見だと?冒険者の分際で…何者だ?」

「勇者ヴァーンという者なんですが…」

「北の大地で名をあげているあの勇者か…?それならば…だが、いくらSランクとはいえ国王陛下はお忙しい身。しかもいまはリディル国との深交もあって時期が悪い。一応上に伝達はしておくが国王陛下への謁見には2ヶ月以上はかかると思ってくれ」

「ありがとうございます」


わりと厚待遇を受けた気がする。門兵が話の通じるやつでよかった…あとは冒険者組合に返事がくるのを待つだけ。門兵には国王宛に相談したいことがあるという手紙を拇印付きで渡したから、きちんと国王様に連絡が行くようならスムーズに事が運ばれるだろう…という希望をもってる。

まぁ特に急ぎの用でもないし、せっかくだから軽くファラン国内を見て回るのも良いかもしれないと思い、適当な依頼がないか探すために一晩明けてから冒険者組合へ行くと…早速、国王陛下から返事が来てたようだった。…はやい。あの門兵優秀すぎんだろ。


「こちら、王女殿下からでございます」

「うん?思ってた人物からじゃないな」


中身を開けて読むと…どうやら差出人はセラスから。…まぁ、話のついでにセラスの様子も見たかったから構わないけど、まさか俺から連絡する前にセラスから話がくるとは思わなかった。

内容としては、城を守る兵士から話を盗み聞きしたような感じで申し訳ないという謝罪から、国王様にはまだ話は行っていないが俺にこの手紙が届いている頃にはセラスから直接国王様に話を通すということ。そして追伸として、もう会えないかと思っていたとか積もる話がいっぱいあるとかそういうことが書いてあった。

ふーむ。よく考えればあのときは変に格好着けて別れたな。ただ、あのときはひよっこも甚だしい冒険者だった俺も、いまやSランク冒険者。セラスに合うにふさわしい肩書きを持っていると言える。…言えるよね?デリワルド王にも謁見できたし。それにしても…全く会わないという気は無かったから、またなと書いた置き手紙もプレゼントと一緒に置いてあったはずなんだけど届いてなかったのか?まぁ再会できるわけだから、問題ないとするか…?

というわけで約束の日までは二週間。ちょっとしたお茶会の合間に面会をしてくれるそうなので、こんなに早く謁見できるようになったわけだ。ただ条件として、俺と国王様の一対一ではなく、セラスも交えての三人での密会という形で、ということだった。別に第三者…従者がいてもスパイがいても問題のない相談内容なのだが、国王様が俺に配慮してくれた形でもある。まぁ、セラスを入れてくる辺り抜け目もないのだが。




二週間ファランを見て回り、謁見の日。今日は俺一人だ。キュリスアドリウスはコッペリアが加わったことでミレイユとコッペリアだけに任せられるようになった。今頃、コッペリアの渓谷で遊んでいるのではなかろうか。

出されたコーヒーを飲んでしばらく待っていると、わりとラフな格好の王様とセラスが入ってきた。あくまでも非公式なものとして扱ってくれるということだろうな。


「失礼、少し遅くなってしまった。おっと、楽にしてくれて構わないよ。なんて言ったってこのファラン、ひいてはセラスの恩人だ。遠慮はいらない」

「そうですか、それではそうさせてもらいます」

「ふふ。ヴァーンったら、敬語、使えるのね」

「あったり前だろ!?あの時のセラスは身分を隠してたが、いまは(いち)冒険者に、対するは王様と王女様だ。本当ならこうやって話せる機会もないかと思ってたんだぞ。最悪一年くらいはここで名を上げようとも思ってたんだしな」

「あら、それは少し残念なことをしたわ。優秀な冒険者サマがファランを護衛してくれる機会をみすみす逃してしまったわね」

「調子の良いことを」


そう言って、差し出された手を握る。セラスの顔色は以前よりもだいぶ良くなって、というかむしろ今は少し日焼けをしているくらいには健康的なようだ。全体的に肉も着いてきたようで、握られた手にはしっかりと適度な力が加わっている。

とりあえず席について、改めて挨拶だ。


「久しぶりね、ヴァーン」

「ああ、久しぶりだな、セラス」

「元気にしてた?」

「ああ、絶好調だ」

「ふふ、そのようね。ファランの名が世界中に広まった後にもう一度会おうと思っていたのだけど、その前にヴァーンから連絡がくるとは思いもしてなかったわ」

「ん?あー…まぁ、ファランの名は聞いてないがセラスの名は聞いたぞ?北の大陸、ノースブラントで」

「ほんと!?というか、なんでノースブラントに…」

「それは今日の本題、願い事にも繋がる話なんだが…」


二週間見て回り、やはりファランが最適だと思った。これなら、願い事を全て言ってしまおうとも。まだファランがその段階ではないと思ったのなら一段階引いた願い事をしようとしていたのだが、いま、全部言ってしまおう。

と、次の言葉を言う前に。


「受けた」

「うん?」

「その願い、我が国ファランが全力を以てして受けた」


国王が俺が願い事を言う前に受ける…じゃなくて受けたと言ってきた。大丈夫か?この国王。とか思う前に、国王が続ける。


「もし、君がファランが欲しいというのなら喜んでファランを渡そう。その時は…そうだな。セラスの婿に入ってもらおうか?ファランの食料が欲しいというのならむしろファランごと差し出そう。その時もセラスの婿に。ファランの土地が欲しいというのならやはり、ファランごと差し出そう。もちろんセラスの婿として。誰かを紹介してほしいというのなら紹介しよう。当然、婿入りが条件だが、セラスを」


なんだ、どうしても俺をセラスに婿入りさせたいのか…?それとも国王ジョークか?判断に困るな……ただ、この国王。こんな事を言うわりに、馬鹿じゃない。どころか、大分頭がいい。俺の願い事を全部、言い当てやがった。


「まぁ…ファランはいらないから、ファランに住まう権利が欲しいなって、お願いに。未開の地でもいいから、数千人規模で。もし余裕があったら農耕狩猟も許可してほしい」


そう。俺の願いとは、第一優先がファランに俺が匿っている難民…難民?を住まわせてやって欲しいということ。コミュニティは既に異空間の中で出来ているため、そのまま異空間から取り出して土地を借りて村、町を作ってもらう。異空間内の難民からの要望で、そろそろ自立しなければならんだろうという多数の意見というか満場一致の意見からだった。ただノースブラントにはまだまだインヴィクルの残党がいるし、フィフスとやらも倒せていない。だから安全で広大な土地もあると分かっているファラン国内、しかもなにかあればもしかしたらリディルも支援してくれるかなという希望をもって、土地の貸しつけをファランに願いにきたのだ。

第二優先はファランの経済状況が整っていればそのまま農耕、狩猟と、ファランの資源を得たいという願いだ。もしファランの経済状況がまだ整っていなければ定期的に俺が出向き仕送りをするという予定だった。

もちろん危険がある。俺の異空間内にいたほうが安全で、俺も安心できる。俺の異空間内なら、俺がいないときに襲撃されることもない。しかし…正直、これからも難民が増えることを思うと、どうしても、容量が足りないのだ。異空間内に物理法則を入れることにだいぶ容量が喰われるし、そもそも、俺は得る魔力のほとんどを神位の維持に使ってしまっている。これからは、難民の異空間での維持は親のいない子供達だけにして、新しい難民はひとつに集めて異空間で一定のコミュニティができたら借りた土地で村や町を作ってもらおうと思っているのだ。

皆、インヴィクルに襲われたという過去を持っている。だから協力できる。今回はそうだった。だが次回の難民もそうだとは限らない。だから、今回は親がいない子ども以外は全員を出せる。だが次回からは異空間から出すのは出たい、出て自分の力で生きていきたいと願った人たちだけにする。


「そうか…ファランはいらんか」

「そう…私、捨てられたのね…」

「変なこと言うな!別に、そこまではいいって話。そもそも俺には嫁と娘がいるってセラス、知ってるだろ?」

「あら?そうだったかしら。でもヴァーン。ファランは一夫二妻までは許されているのよ?ついでに異種婚も、先月認められたばかりだわ」

「それってもしかして…」

「そう。私が議会に通したの」

「セラスは既に、ファラン内政の全権を握っているからな」


セラスがリディル王と手を組んで龍教の新しい派閥を指導してるって聞いてそんな予感はしてたんだよな…って、いかんいかん。話の流れを全部持ってかれている。


「それで、願い、受けてくれるか?」

「もちろんだ。未開の地でもいいと言うのならこちらとしても、願いたいくらいだよ。土地を貸し付ける大義名分はこちらで用意するが構わないかい?」

「それはよかった!民衆に反発されない程度のことなら、国王様に任せるよ」

「そうか、では私は権利書と場所を記した地図を用意する。少し席を外すよ」


そう、席を立って部屋から出てく王様。なかなかにフレンドリーな王様で安心した。さて、ここからはもうひとつの本題。


「それでもうひとつ、これは個人的な願いなんだが…」


願いはもうひとつあるのだ。まぁ、個人的な願いと言っても私利私欲のためじゃない。その内容は…


「腕がいい医者を紹介してほしい。外科、特に人体の構成、構造に詳しい医者を。身寄りの無い子供だから、一緒に孤児院もやっててくれると助かる」

「ふん……条件が少し厳しいけれど、そういえば最近、エイドという男が小児病院兼孤児院を開く許可を求めに来たわね。そこでどう?大きな実績はないけれど、この数週間で確かに、命を救っているわ。残念だけど、紹介できるとしたらそこしかないわね」

「そうか…そこを頼ってみる。ありがとうセラス」

「ただし、条件があるわ」


なっ、ここにきてこいつ…!!…まぁ、さすがにこっちとしても無償という気で来てはいないから、もとからそのつもりだったまである。そしてこっちには…ふふふ。インヴィクルの拠点壊滅の報酬としてかなりの額のウェイズを持っている。一年分の国家予算でもなんとかできるぞー。


「ウェイズなら、1年くらいはファランを支えれるほどあるぞ?」

「そんなもの要らないわ。もとから予算の3割くらいの収益があるもの。財政危機になったのはリディルから戦争を仕掛けられた年から4年の間だけ。その間が最悪だっただけよ。餓死者も出していないから、他の国よりもマシな方だったわ」


あれぇ?


「それじゃ、条件って?結婚はする気はないぞ?」

「それはもういいわ。ヴァーン…あなた、私との約束、果たしてないものがあるわよね?」


ん?セラスとの約束…?って、ああ。なるほどな。


「1日冒険者、か」


たしかいざ冒険に出発!ってときにセラスが連れていかれたんだったっけ。


「そう。ヴァーンもいまや名のある冒険者なわけだし」

「そうだな。んじゃ近い1日、予定を開けといてくれ」

「1日じゃないわ」

「…え?」

「守ってもらってない約束を守れと言うのは当然の権利でしょう?約束を守るのは義務だし。私が出す条件は、1日を1週間にする、というものよ」

「1週間!?」


1週間、俺はセラスを守りながらキュリスのわんぱくに付き合わないといけないのか!?いまやファランの政治の中心にいるセラスを連れるんだ…切り傷一つ無いように、簡単な少しの依頼だけで…


「そうね…初日は、低位竜を狩ってみたいわ」

「おまっ!自分の立場!!」

「知らないわよ。その間は冒険者なのだし。守ってくれるのよね?約束だものね?」

「ぐっ…ぐおおおお!!!いいぜ!やってやろうじゃねえか!!」

「ふふ…それじゃ、明日を楽しみにしてるわ」

「はっ、明日!?」


いくらなんでも、早すぎるだろ!!

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