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呪いの人形

どこだ、ここは。いままでいた館はなんだったのか。ここに来れた条件は。ミレイユ達は無事なのか。そもそもここにいるのか。

いろいろな考えが頭を過る。しかしそれも一瞬。


「次はあなたの番よ」


そう、耳元で囁かれた瞬間、ここは敵地なのだと一瞬で理解、思いだし、尻尾の剣を振り回した。


「キャハハハハ」


子どもの笑い声が響き、その主は遠ざかる。姿は見えないが、気配は探れる。俺はそれが事の原因だとして、全力で追った。


「待てこの野郎!!」


通路を全力疾走で突き進む。だが声の主との距離は一向に縮まる気がせず、一定の間隔が開いたまま。ミレイユ達の気配は館に居たときと同じように探れず、近づくしかないだろう。龍気を抑制する特訓が悪く影響してしまったな。

通路の終わりが見えた。その終わりには、館の玄関にあったものと同じような扉がある。声の主に誘導された形だが、結局、他にやれることはなくここへと辿り着いていただろう。しかし全てを思い通りにさせるわけにはいかない。

というわけで俺は扉を尻尾の剣で斬る。しかし扉は斬れるには斬れるのだが、すぐに再生してしまって手応えがない。星刻剣は万物を斬るといっても、斬れたあとに再生するようなものには弱い。後々対策するとして、いまは…もう、敵の思い通りに動くしかないな。

俺は諦めて、なにかあったらすぐに対応できるように構えて扉を開けた。そして目に飛び込んできた光景は…


「なん…だ、これ…」


さんざん回ったあの館に似た作りの、広いホールで。大量の人形で遊ぶ、大量の旅人がいた。狂ったような…いや、狂っているのだろう。歪な笑顔を顔に浮かべて、しゃがれた声で笑ってやがる。

その旅人のなかにはやはり、ミレイユ達もいた。


「ミレイユ!」

「……」


反応がない。なにかに操られているとしか…でも、ミレイユが…いや、ミレイユに限らず、最高位龍種がそんじょそこらのなにかに操られるとは考えづらい。だが現に操られている。警戒心を最大にまで引き上げないといけない。もしかするとここは、精神系の龍玉に辿り着く前段階かもしれないしな。

よーく観察すると、一番奥に誰にも遊ばれていない人形があった。やはりと言うべきか、俺はそれに見覚えがある。キュリスが持っていた、あの人形だ。


「この野郎!!」


俺は問答無用で小太刀をその人形に投げつけた。しかしキュリスの人形に届くその前に、別の人形と遊んでいた旅人が盾になった。


「っ!?」


俺は咄嗟に小太刀を引き戻し、盾になった旅人に当たるのを避けた。

やっぱり操られているか…数百人が盾になることを考えると厄介だな。しかもなんなら、盾だけではなく矛にもなるかもしれない。ミレイユ達以外は異空間にぶちこんでいったほうがはやいぞ…ああ、いいねそれでいこう。

と、俺はミレイユ達を避けて旅人達を異空間に放り込んでいく。一緒にあった人形と共にだ。なぜミレイユ達を避けるかと言うと、即興で作っただけの異空間ではミレイユ達最高位龍種を収容しきれないためだ。もし収容できるようにつくっても、頑丈さが足りずに暴れられたらすぐ壊れる。そうしたら他の異空間になんらかの悪影響がでないとも限らないから、ミレイユ達を避けているのだ。

一度落ち着こうと、俺は扉の前まで戻って部屋を見回した。ミレイユキュリスアドリウスが人形で遊んでいて、その奥にキュリスの人形がある。それ以外にはとくに目だったものはない。そして、操られているならミレイユ達の凶悪な能力は大した脅威にはならない。あとはあの人形を壊せば、問題は片付くだろう。

そう考えて、俺は一歩、踏み出そうとした。しかしできなかった。足がなにかに拘束…いや、掴まれている。俺は足に視線を向け…やはりというべきか、足を掴んでいるのは、あの人形の右手だった。


「くっ!」


俺はすぐさま右手を斬って振り払い、人形へと駆ける。しかし次々と人形の右手が生えてきて、俺の足を掴もうとしてくる。恐ろしいことに、一瞬掴まれればそれで終わり。なんせ、少し触れただけでアドの熱線、キュリスの氷塊、ミレイユの重力場がとんでくるのだ。流石の俺でもひとたまりもない。

だが、人形の体は脆かった。だから力づくで行けばなんとかなった。俺はすぐに、原因の人形へと迫り、その人形の胸に尻尾の剣の先端を突き刺そうとした。しかしその時、悲しそうな声がポツリと、響いた。


「なんで…遊んでくれないの?」

「…え?」

「なんで私を創ったの?なんで創られてすぐに私は捨てられたの?なんで私で遊んでくれないの?なんで私は遊ばれないの?なんで私は人形なの?なんで…なんでなんでなんでなんでなんでなんで!!なんで…私を創ってどこかにいってしまわれたのですか、アルス様!!」

「なっ!!」


こいつ…もしかして!!


名前『コッペリア』

位『最高位』

種族『???:アルヴドーライクシス(???)』

権限『耐久力2』『耐性10』『筋力1』『魅了?』『運動力魔法2』『大地魔法1』『万能魔法1』『人形』

上位権限『人形の長』『完全耐性』『魅惑』

特殊権限『被造物』『コッペリア』『呪い』『恨み』『疑惑』『渇望』『願望』『哀れみの惑い』

権能『13番目の神獣』『使徒』『主神の加護』


やはり、神獣か!!俺が創った覚えもない神獣…その存在は半信半疑だったが、やはりいたか。リヴィアがいたからもしやとは思ったが、やはり、やはり星神話にかかれていることは実際に起こったこと、若しくは起こることだと言える。この問題が落ち着いたら一度、星神話は誰が書いたのかを調べないといけないな。精神系の龍玉ではないことに少し落胆したが、神獣でも結構な収穫だ。


「私は遊ばれる時を待っていますのに、拾われては捨てられ…ああ、アルス様。いま、どちらにいらっしゃるのですか…?」


こいつ…もしかして、俺が誰だかわかっていない?

そう思った瞬間、急に目の前の人形が可哀想に思えてきた。俺を騙る何者かが勝手に神獣とやらを作り、俺が知らないうちに放され、放置される。俺に悪い所は無いとは思うが、それでも、やっぱり俺がやったことのようだ。

しかし、可哀想と思う心こそが、人形の能力の発動条件なのだと知らず、俺はその人形に手を触れた。


「ああ、新しいご主人様。どうカ、ドウカ…次ハ、棄テナイデクダサイネ」


ギギギと軋んだ音を発ててカタカタと笑う人形。俺はその人形にひどくひどく…魅了されたのだった。

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