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心優しき少女

2話同時です

「どうやらあやつはリウスを大事な友だと思っておるようじゃ」

「そうだな…あの分だとリウスを手放すことはないが、傷つけることもないだろう。一応リウスの魂にも、危険があったら俺に知らせが届く権限を与えておこう。直ぐに駆けつけられるようにもしないとな」


あの心臓に悪いおっさんにも与えた権限である。そしてセラスが持っている装備の中の権限の1つである『虫の知らせ』の原型とも言えるこれは、セラスのときのような遠回しな警告ではなく直接頭に目覚まし時計が鳴るような知らせが届く。誰が危ないのかは感覚でわかる。

今の俺が他者に権限を与えるには、一度触れてないといけない。そうでないと直接的な繋がりがないためである。その繋がりを利用して権限を与えるため、家に戻すために触れていたリウスには離れていても権限を与えられたのだ。


「キュリス、アド!一度戻るぞ!」


キュリスとアドを呼び戻して、俺はアルヴテリアへと戻った。一度こじ開けた道はそう簡単には戻らない。それを利用してアルヴテリアに戻ったのだ。しかしリヴィアにはその道を知覚できないだろう。そういう概念を持っていたとしても、一度通ったことがなければわからないはずだ。


「さて…こいつ、どうするか…」


ついでに拾ったメガネ野郎。別に置いてきても良かったのだが、リヴィアとの戦闘でアホみたいな体勢で転がっていたので、視界の端で目立っていた。まぁまぁ可哀想だったので連れてきてやったのである。


「まぁほっとくのが良いのじゃ。監視の目を付ければ良いじゃろう。こやつの目的は冥府の証明、そして神話の証明じゃろう?ならその目的は果たされたのじゃ。ついでに宇宙の真理とやらも見ているようじゃしの。狂わなければ誉めてやるほどじゃな」

「え、なに宇宙の真理ってそんなおぞましいものなの?」

「逆じゃ。おとんのドジによって作られたものだと知れば、自分がどれだけちっぽけな存在なのかと分かりもしよう」

「…なるほど」


俺は施設ごと異空間へ放り込むため、まずはそんなことをして大丈夫なのか確認するためにリウスとリウスの妹が中に入っている大型の機械へと近づいた。半透明なガラスのような何かで、リウスと妹の外見的な状態は確認できるようになっている。純白の衣服を纏った二人は寝ているが、リウスだけは目を開けていて、なにかこちらを見ているような感じがして気味が悪いというか、なんというか―――




「消えた、消えたわあの龍たち。まぁいいわ、リウスとの時間がまた……ねえ、リウス」

「…どうしたの?リヴィア」

「あなた…いいえ、リウス。リウスは帰りたい?」


リヴィアが素っ気ない顔で聞いてくる。でも私は知ってる。この女の子は恥ずかしいや、嬉しい、悲しい、楽しい。そんな気持ちをうまく伝えられなくて、羨ましいって気持ちだけは真っ直ぐ伝えられる不器用な女の子だって、知ってる。本当はすっごく優しいのにひとりぼっちで、ただただ、空を飛ぶ汚れた光を綺麗にしてる。そんなリヴィアを放って置けないから、私の答えは1つだけ。


「ううん。私はリヴィアと一緒にいる」

「…そう」


私が知らないリヴィアの表情。嬉しげなのに、どこか悲しげ。あまり表情に出ないリヴィアの気持ちを感じとるのに最初は苦労したけど、今ではよくわかるようになっていた。そんな私でもよく分からない表情をしたリヴィアに、私は悪い予感がした。そしてそれは、当たってしまった。


「リウス。あなた、帰るべきだわ。帰るべきよ」

「え、どうして」

「だってあなた、優しいもの。あなたみたいな優しい存在は、私と居るよりずっと、あなたを必要とする存在の所にいたほうがいいわ」

「でも、それじゃリヴィアは!」

「いいの。私はいいの、リウス。あなたは良い子。私は悪い子。あなたと私は一緒にいちゃいけないの」

「そんなの、」

「いいの、いいのよリウス。私は知れた、知れたのよ。あんなに嫉妬してた、"温かい"を。あなたのおかげで、知れたから。あなたに貰ったから、それだけでいいの。だから、お別れよ。あなたはあなたを必要とする人間のとこで、元気で、元気で……幸せに、生きて、また、ちゃんとした道を通って、ここに来るといいわ」

「リヴィア!私は」

「ばいばい、リウス。次に会うとき、あなたの光の汚れは丁寧に綺麗にすると、約束するわ。きちんと汚れてくるのよ、リウス」


リヴィアは笑って…あまり顔に出ないリヴィアが笑って、私から手を離した。最後に見たリヴィアの顔は笑っているのに、泣いていた。




「…あんなに嫉妬してた"温かい"が、こんなにも辛いだなんて思って無かったわ」


リウスは、帰りたくないなんて、言わなかった。本当は帰りたいのに、私を選んでくれた。もし、帰りたいってリウスが言っていたなら。私は彼女を帰さなかったでしょう。でもリウスは私を選んだ。そんな"温かい"を、私は貰ったから。…リウスはこの"温かい"を、なんて言うかしら。嬉しい?楽しい?幸せ?何でしょうね。……でも"温かい"は、冷めてしまうから。だから辛い、辛いの。でもこの辛いを、リウスの大切な存在も、リウスが大切な存在も味わっているのだとしたら。リウスが良い子なら、リウスが大切な存在も良い存在のはず。私は悪い子だから…悪い子より良い子のほうが、"温かい"に包まれているべきだわ。私はそんなリウスが汚れて来るのを楽しみにして…ふふ、これが"楽しみ"って、気持ちなのね。リウスはいつくるかしら。どれくらい汚れてくるかしら。どうやって綺麗にしてあげようかしら。何万年後に、くるかしら――――




「あったまきた!!リヴィア、私の気持ちも聞かないで、自分のことばっかり!!」

「うおう!?」


びっくりした!!目を開けていたリウスが突然しゃべりだしたのだ。そして内側から半透明なカプセルをこじ開けて起き上がるリウス。ずいぶんとアクティブなことだが…って、なんでリウスが起きて!?


「ど、どういうことだ?リウス、なんで起きれて…」

「リヴィアが、リウスはリウスが必要な人の所に居なくちゃいけないって!リヴィアのとこにはいちゃいけないって!!」

「え、えっと…つまり、帰してもらったと?」

「帰されたの!私はリヴィアを置いて帰りたくなんてなかった!!」


ポロポロと涙を流すリウス。その話はにわかには信じがたいが、リウスが言うならそうなのだろう。


「リヴィアはただ、羨ましいって気持ちしか真っ直ぐ伝えられないだけなの。ほんとは優しくて、誰かのために悲しめる良い子なの」


邪神デシングの左目の涙であるインヴィクルは、邪神デシングの悲しみとして生まれてきた。しかし悲しみとは、マイナスの意味しか持たないわけではない。他人のために悲しめるというのは、人間でもできるやつはそういない。インヴィクル…いや、リヴィアが心優しき少女だということを、なるほど。分かっておかなくては。

炎龍権限のときにヴァーンがインヴィクルをお母さんだというようなことを言ってましたが普通に少女です。ここからお母さんになる予定は………あるような、ないような

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