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嫉妬の悪魔

「あなた、なに?あなた合体してたの?人類になったと思ったら可愛らしい人間の子どもを3人…人間?人間じゃないわ、あなたたち人間じゃないわね。龍?私わかったわ。最高位龍種ねあなたたち。大地の神ミレイユでしょ?炎の神アドミニオンでしょ?氷の神キュリウスでしょ?ほらわかったわかってるわ私。デシング様と同じ龍…忌々しい、デシング様以外の龍!!」


ミレイユ達が龍玉の状態から龍形態へと変化した。それをみたインヴィクルが光の宿らない目で、狂気を滲ませながら攻撃を仕掛けてきた。俺はとっさにミレイユ達をかばうが、インヴィクルの攻撃はせりあがった土の壁が防いだ。


「状況は見ていたから把握しておる」


だがミレイユキュリスアドの力の大半は俺が使ってしまっている。龍力が残っているとは思えないが…


「力が出せんでもやりようはあるのじゃ」


ミレイユがインヴィクルの立っている地面を盛り上げ、体勢を崩す。その間にキュリスとアドの凶悪な連携技がインヴィクルへと繰り出された。

さすがに最高位龍種の攻撃を受けては無傷ではいられないだろうと、少し脱力をした…が、視界が晴れると見えたのは、傷一つ着いていない…いや、服すらも傷つけられていないインヴィクルが座っていたのだ。


「転んだ。転んだわ。普段歩かないのが原因かしら。歩かなければいいのかしら」


冗談だろと。幻惑かと。疑った。しかし俺の目は幻影や幻惑の類いに対し、その効果を発揮させない。だから目の前で起こっていることは現実だというわけだ。

…どういうことだ?攻撃を受けない運命…そういう能力を持っているのだとすれば、俺のドジならもしかすると…


「キュリス!」

「あいす!」


名前を呼ぶだけでして欲しいことをすぐにしてくれるようになったキュリスに俺は少し感動していた。しかし今はそんな場合じゃない。

キュリスが冥府の地を氷漬けにし、俺は滑ってインヴィクルに星刻剣で攻撃した。これは星すらも斬る剣だ。さすがに服一枚切れないということは…なに!?

俺の予想に反して、希望に反して。星刻剣はインヴィクルの服の繊維一本すら切れていなかった。


「知ってる。知ってるわ。私知ってるのよ。その剣は星すらも斬る剣。でも効かないわ。私には効かない。効かないの」

「ちっ!」


俺はすぐさま足を滑らせてその場から離れた。しかしインヴィクルは俺に攻撃しようとはしていなく、別のことに集中しているようで…


「いけない。いけないわ。ここは私の場所。私だけの場所。私達だけの場所なの。デシング様のように穢させたりしない!!」


氷の大地が、荒野に上書きされた。インヴィクルがこの空間を完全に支配しているという証だった。


「なんなんだあいつ…」

「ねえ、ヴァーン?あの子の隣に、リウスがいるんだけど」

「え?」


唐突に、キュリスが言った。俺はキュリスが指差す所を見つめる。すると徐々に見えてきた。人間の魂というものが。魂となった、リウスのことが。


「あら?あなたたち、この子を知ってるの?この子は他の人間とは違って私を怖がらなかったの。それに大丈夫って、聞いてきたの。聞いてきてくれたの。生まれて9年なのに魂も綺麗なのよ」

「でもその子には帰る場所があるんだ。その手を離してやってくれないか、インヴィクル」


インヴィクルが俺に攻撃するときに左手を使わなかった理由がこれだ。インヴィクルの左手はリウスの魂を掴んでいるのだ。

しかしインヴィクルは小首を傾げて、きょとんとした顔で俺を見た。


「インヴィクル?誰?誰よ誰なのインヴィクル。もしかして私のことを言っているの?なら違うわ。私はインヴィクルなんて名前じゃない。私はリヴィア。リヴィアタンって言うの」


…ん?どういうことだ?こいつは自分の名前にインヴィクルが付いていることを知らない?自分がインヴィクルっていうことを知らないのか?フルネームはリヴィアタン・インヴィクルだったが…まぁこの話は置いておこうか。


「その子を待ってる人達がいるんだリヴィア。リウスを離して、帰してやってほしい」

「知らない。知らないわ私。この子を待ってる人達なんて…人?また、人間なの?また私から奪うの!?許さない…許せない疎ましい妬ましい妬ましい妬ましい妬ましい!!」


くっ、俺もミレイユもキュリスもアドも、リヴィアの能力のせいなのかわからないが全力を出しきれない。そろそろ戦うくらいの魔力は回復したはずのミレイユ達が攻めきれていないのだ。


「無駄。無駄よ無駄。無駄だわ。あなたたちは全力を出せない、出せないの。私の『嫉妬』によって全力が出せないの。私より強いなんて許せない。私より恵まれてるなんて許さない。私は『嫉妬の悪魔』、リヴィア。私の前で私より優れていれるなんて思わないことだわ」


くそ、権限を下げる能力か!?それなら権限に依存しない武器で攻撃すれば…!!


「無駄。無駄よ無駄。無駄だわ。私に武器は効かない。攻撃できるものは全て効かない。木の棒だってスプーンだって石ころだって硬いパンだって効かない、効かないわ」

「はぁ!?反則だろそれ!!」


くそ、チーターか!!武器は制限されてて、リヴィアより優位になることもない。戦う術は、高度な戦術のみ、か。


「ミレイユ、さっきみたいにまたあいつを転ばせられるか?」

「…厳しいのじゃ。あやつ、影のようなものに乗って移動しておる。ここら一帯を全て動かしたところで、ここはあやつの世界。おそらくまた、無意味にされるのじゃ」

「くっ、他になにか…なにかないのか!?」


アドとキュリスが相手をしてくれているうちになにか思いつかなければ…でも、なにが、なにがあるってんだ?力は相手より下。武器も使えない。こんな障害物のしょの字もない荒野じゃ大した戦術もくそもない。なにか…なにか…


「無駄よ、無駄。あなたたち正しい道を通ってきてないでしょう。どういう道を通って来たのかはわからないけれど、だからこそ無駄だわ。冥界ならいざ知らず、冥府であるここなら私の場所。私は優しいから教えてあげる、あげるわ。私を殺したいのなら正しい道を通ってくることよ」


…そうか!!なるほど、星神話をなぞらえばいいのか。たしか創造神アルスという俺ではない俺は、邪神デシングから生まれた7柱の神を異界に封印したときに開いた異界への扉を、鍵で閉めたはずだ。その鍵に意思を持たせて神獣とし、世界に散り散りにした…という話だったな、たしか。神話になぞらえなければ殺せない敵だとしたら、俺たちは一度アルヴテリアに戻って神獣を倒し続けて異界の門の鍵を手に入れ、異界の門を探さなければならない。




ある日ある時ある場所で、彼女は生み落とされました。そして彼女は一瞬で理解してしまったのです。自分がなぜ、生み落とされたのか。彼女はその事実に怒り、世界を同胞達と荒らして回りました。復讐をしたのです。しかし神様は復讐を良しとせず、彼女と同胞をそれぞれ別々の異界に封印してしまいます。目的を見失った彼女は1人ぼっちの異界で漂う、汚れた光に目を向けました。それが復讐先である人間の魂だと気づいた彼女は今度は深く、目を向けました。するとどうでしょう。彼女が知らない"温かさ"というものがその光の汚れの中にあったのです。彼女は嫉妬しました。なぜ、自分にはないのかと。それもそのはず、彼女は左目の涙として生み落とされたから。左目の涙は悲しみ。親の悲しみとして生み落とされた彼女には"温かさ"というものがなかったのです。彼女は嫉妬します。自分にはないものをもつ人間に嫉妬します。幸いと言っていいのでしょうか。彼女は漂う光に触れることができたので、光が持つ汚れを剥がして自分と同じように、無かったことにしました。剥がしたものは長年のうちに積もりに積もり、やがて異界に彼女だけの世界を作り出しました。彼女は彼女だけの世界で、漂う光をただただ無に還します。幾世霜の時が流れ、いつの間にか彼女の嫉妬の心は燃え尽きて空っぽになってしまいました。そんなある時、不思議な光が来るようになったのです。形が丸ではなく、歪な魂。そこで彼女は思いつきます。自分も何か、いいことをすれば。誰かのためになることをすれば、"温かさ"を感じられるだろうか、と。歪な魂を綺麗な球にしてあげたり、丁寧に汚れをとってあげたりしました。しかし期待した"温かさ"は感じられません。それでも彼女は、他にやることがないため時々くる歪な魂を観察します。時間が経つとそれは意思を伝えて来るようになりました。しかし無防備な魂では彼女の声に耐えきれず汚れが少しばかり削れてしまいます。何度か繰り返していると、今度は汚れがそれほどない光がやって来ました。同じ光が、何度も来たこともあります。そんなある時、知らない光が彼女を訪ねて来ました。珍しくも無くなった珍しい光に興味が薄れてきていた彼女は気にも止めません。しかし、そんな彼女に新しい光は"大丈夫?"と、そう声をかけたのです。いままで無かった反応に彼女は戸惑いながら、その光に興味を持ちました。そしてしばらく話します。その光の名前はリウス。彼女はリウスの話を大変気に入り、ずっと話すようになりました。いままでの孤独を埋め合わせるように。楽しい時が――――

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