表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
76/106

冥府への誘い

俺とミレイユは急いで西へと目指した。キュリスとアド、そしてムスペルヘイムは異空間で子供達と遊んでいる。誰かいてあげたほうが子供達も不安が和らぐだろうという計らいからだった。


「ちっ、ここも違う!!」


西へと向かって、確かにインヴィクルの拠点を見つけた。それも、いくつか。しかしリウスの気配が感じられないのだ。俺は一度覚えた気配は、個人のものならば忘れない。ミレイユのようにインヴィクルの構成員の気配というものはわからないが、リウスの気配ならば例え姿形が変わっても…もしくは無くなっていても、感じ取れる自信がある。しかしそれが感じられないとなれば、俺たちは見当違いの方向へと進んでいるに違いない。5日。5日だ。あの村を出て、5日経っている。この間にインヴィクルがリウスに何もしていないという可能性は、限りなく低いだろう。


「くそ、くそ!!」

「落ち着くのじゃ。此度も相手が一手、上手だったということじゃ」


そう。よく考えればフィフスと呼ばれる男は転移のようなものをしていた。リウスをさらった奴らも同じようなことができないと決めつけられるはずもない。

道すがら見つけたインヴィクルの拠点を、俺らは人質が居ないようなら文字通り潰して回っていた。もちろんミレイユの気配察知だけに頼っていれば万が一が起きてしまうかもしれないため、内部に侵入して速攻して壊滅させ、ミレイユの魔法で大地へと還して次へと移る。しかしそんな、人質がいないような拠点は、そもそもインヴィクルの手にある龍玉が精神系であると予想できるため少なかった。心をもっているのは、人類だけ。心を実験対象にするなら、人類が実験台にならないといけない。


「やっと、やっと見つけた…!!」


結局、7日かかってしまった。俺らはミレイユの分隊を利用して拠点内部を制圧していく。ここら辺は手慣れたものとなってきて、救助された人質は壁に近づけばミレイユの地下トロッコで安全な場所に輸送される。だが、だが!!肝心のリウスがいない!!


「まさか、イルの時のように…」

「…十中八九、その通りのようじゃな」

「…?」

「いる?」


そう言えばキュリスとアドに、俺ら龍種の力をもつ人類がいることを話してなかったな、と思い出したがとりあえず後回し。俺らは直ぐに実験施設最奥へとたどり着いて…普通、この時代では見られない、大規模な機械を見ることとなった。


「なん…だ、あれ…」


いままでのインヴィクルの実験はほとんど魔法を使ったものだった。魔方陣で刻印するか魔法使い数十人が同時に同じ魔法を使っているか。だが、こんな機械。かつての世界である地球の日本のスーパーコンピューター『天』並みの迫力がある。

その光景に圧倒されていると、奥から目に狂喜を滲ませた男が出てきた。


「お、お客さんかな?ちょうど良かった!ちょうど、あのインヴィクル神と意志疎通し、交流するという実験の最終段階でね。知らないお客さんだけど、よかったら見ていってくれよ。恐らく、神という不確定な存在を確認する空前絶後の歴史的瞬間になるだろう!ああ、それとあまり暴れないでくれよ?大事な実験器具をすこしでも傷つければ、実験は失敗に終わってしまう」

「…失敗すると、どうなる?」

「被検体の意識は冥府に置き去りにされてしまうだろうね。ま、ゆっくりしていってくれよ」


くそ、くそが!!リウスを救うのに、救うためにここまで来たっていうのに!!救おうとすれば救えず、救わずにいれば助かる可能性のほうが高いだなんて!せめて精神系の龍玉を回収できれば…くそ!!


「ねえ、ヴァーン?リウスは?ここにいるんでしょ?名前をつけてあげてやっと友達になれたのに、まだ遊べないの?」


…そうだ。俺はもう、自分の力を制御できないわけじゃない。回収できていない龍玉はあと3つ。だが今ある4つで、いまこの一瞬だけ奇跡を起こすことはできる。


「おい、フケ湧きメガネ野郎」

「ん?それは僕のことかな?仲間をそんな風に呼ぶとは思えないからね。でも、僕にはボイドというきちんとした名前があるんだ。そのほうが反応しやすいんだけど。それにフケなんか湧いてないよ。ちゃんと毎日お風呂に入ってるから。まぁ生まれつきのパーマは煩わしく思っているけど」

「お前の事なんてどうでもいいんだよ。お前、神を見たいって言ったか?」

「見たい。見たいさ、見てみたい!神話だけの存在…特にインヴィクル神は興味深い。人間の贖罪をなぜ、助けるのか。インヴィクル神は生みの親を人間に穢されたというのに、なぜ人間に寄り添うのか。知的好奇心ってやつさ。人間には誰にでもあるものだろう?それはもちろん、竜人である君にも。そう言えばお客さん、名前を聞いていなかったね。君達、名前は?」


…知的好奇心。文明の発展には犠牲が付き物だということは理解している。コンピューターももとは戦争のための兵器だった。文明は戦争によって発展していく。それはよく分かっている。…だが、そうならないために転生者を呼んだのではなかったのか?俺がそれを助長して、下手に掻き回して、あとは人類に任せる?それは無責任って奴だ!


「そうか…知的好奇心か。神を見たい。そんな、知的好奇心。…ミレイユ、キュリス、アド。すこし、力を貸してくれないか」

「いいじゃろう。おとんはおとんの好きなようにするのじゃ」

「それでリウスと遊べるようになるなら、いいよ!」

「キュ、キュリスがいいって言うなら…」

「そうか…ありがとう。それじゃすこし、俺の手に触れててくれ。力を大分吸って、たぶん、人間の形を保ってられなくなると思う。だけど安心して欲しい。絶対にお前らも、そしてリウスも守って見せる」

「ん?聞こえなかったのかな…何かをしてるみたいだし。ねえ、名前!君たちの名前、教えてよ!」


あいつが声を張り上げて言う。あいつを直接狙えば、近くにある機械ももれなく傷つけてリウスが危ない目にあってしまう。それだけは避けなければならない。ならどうするか?答えは簡単。


「妾はミレイユ。ミレイユ・ランド・ヴィーナス」

「え、名前?私はね、キュリウスって言うの!キュリウス・ウォレスト・プルトゥだよ」

「あ、アドミニオン・ヴィ・マーキュルです…」

「ふーん、ミレイユちゃん、キュリウスちゃん、アドミニオン君かぁ。ふふふ、キュリウスちゃんとアドミニオン君にはあとで話をしたいな。それでそこの竜人さん、君の名前は?」

「俺は…俺はアルス。知っているよな?アルスがどういう存在か」

「もちろんさ!インヴィクル神の生みの親の生みの親。原初の神、創造神アルスだろう?創造神サマの名前を貰うなんて君、相当な期待を込められているんだね」


原初の龍、ヴァーン。龍神であるヴァーンの力はいま、格段に落ちている。だが、原初の神アルスの力は依然、衰えてなどいない。


「そうだな。そうさ。お前、知ってるか?原初の神アルスの、本名」

「だから僕にはボイドって名前があるんだって!って、原初の神の本名?原初の神の名前はアルス。アルスだろう?その名前に続きなんか…どこの出典がソースだい?根拠は?」

「根拠は俺だ」

「は?なに、君…いや、アルスだったね。アルス君。アルス君はすこし、オツムが弱いのかな?根拠は俺だって、ふふ、そんなに大きくなってまで、そんな幼稚なこと」

「俺の名はアルスヴァーン!原初龍ヴァーンにして創造神アルスであり、神龍アルスヴァーンである!――権能解放、『神龍』」

「は、君、狂って…ドゥッヒェン、ヴォルス――な、なに!?」


ミレイユ達が龍玉に戻り、その力が俺へと流れてくる。しかし全部盗らないように、1割残すところで流れをぶつりと切った。

そして性質は反転する。漆黒の瞳が瑠璃色へと、瑠璃色の鱗が漆黒へと変わる。竜人から龍人へと。龍人から龍神へと。龍神から、神龍へと。龍神のときは多次元同一存在という存在だったが、神龍へと反転した今は神という概念、ただの現象へとなる。

俺の質量に圧され、世界は収縮する。空間も、時も、何もかも。だがそれでは意味がない。俺はミレイユ達から分けてもらった力、そして自分の力をフルに使って、収縮を抑え、時を止めた。

そしてその質量で、空間をねじ曲げる。ウリエルは俺の質量を以てすれば異世界にも行けると言っていたが、異世界までとは言わない。異界でいい。そう…行き先は冥府だ。リウスを直接、救えばいい。そしてあのメガネも一緒に、連れてってやる。


「景色が…これは、冥府か!?幻影…いや、しかし…それになんだい、アルス。その、姿は…その、威圧感は!!」

「俺はアルス。アルスヴァーンだ。創造神、原初龍。神龍アルスヴァーン。どうだ?冥府に来た感想は。どうだ?神を見た感想は!!!」


機械を壊さないように、傷つけないように戦うには、どうすればいい?答えは簡単だ。機械に依存しなければいい。機械のない場所で戦えばいい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ