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子ども用の異空間

2話同時です

「ちっ、遅かったか!!」


村は襲撃を受けた後だった。外周は血で染まっていて、激しい戦いがここで起こって終わったのだと、よくわかった。しかもこの場に遺体は無く、全て持っていかれていると予想できる。遺体すらも実験台にするとは、本当に速いところ殲滅しなければならない。


「血の感じからするに、戦いが終わったのはついさっきのようじゃ。中にまだ敵がいるかもしれん。戦闘体勢を維持して中に入るのじゃ」

「はーい」

「わ、わかった…」


数日前に追い返され入れなかった門を入ると、荒れた村の様子が見えてきた。これは十中八九、インヴィクルが中にまだ残っていると分かる。


「ミレイユ」

「…どうやら、地下に穴を掘って、幼子(おさなご)らはそこに隠れてるようじゃ。まだインヴィクルに見つかる気配は…む、すこし離れた所に瀕死の幼子(おさなご)がおる!」


俺らはミレイユの魔法で全速力で地中を進んで、瀕死の男児を見つけた。心臓を抉られて、息は既にない。しかし血は新鮮だった。


「ミレイユ、まだ、まだいけるか!?」

「うむ。おとん、妾が回復するゆえ、最上の回復薬を傷口にかけるのじゃ。その間におとんはこの幼子の治癒能力の強化を頼む」


俺は空間から赤色の回復薬を取り出し、その傷口にかけた。そして万能魔法である治癒能力増強も男児に付与する。ついでに身体能力増強も付与した。ミレイユは地面や空中から人体を構成するための物質を集めて集めて、動物性たんぱく質やヘモグロビンなどの足りないものは魔力で代用して、まずは心臓と血管を作り、管と管を繋いで血が漏れでないようにした。そして作り上げた心臓を手動で動かし、魔法で呼吸させる。酸素との結合を無理やり促進させて、いままで供給されてなかった酸素を急激に与えた。

もちろんそれは、本来なら体に悪い。けれど治癒能力増強と、そして身体能力増強によってぎりぎりいい方向に収まってくれていた。もちろん魔法による無理やりの増強も体に悪いから、ほどほどにしないといけない。


「かはっ」

「息を吹き返したのじゃ」


とりあえず一安心。セラスのために買った回復薬が、いまになって役にたった。本当に良かった。

ここからは急がず、この男児の体の負担にならないように傷口を直していく。脊椎の神経系は複雑すぎてよくわからないが、ミレイユなら問題なく治せる。少しずつもとの人の体を取り戻していく男児。傷口が完全になくなった頃にふうと一息ついて男児を異空間へとかくまった。傷口が塞がっても完治したわけではない。不足している部分は魔力で補っているという点もあるし、俺とミレイユも流石に専門的な医療知識をもっているわけではないためだ。事が終わったら大国の医療機関へと送らねばならない。


「ふう…ミレイユ、村の様子は?」

「…む、幼子らが襲われておる!」

「場所は!?」

「ここからなら走った方が速いのじゃ!」


一息つく暇は本当はなくて、俺は全速力で走った。ミレイユキュリスアドを抱えて、ミレイユが道案内をする。そして到着した時は、インヴィクルが子どもに危害を加えようとしていたその瞬間だった。


「ふっ」


ミレイユキュリスアドを走る勢いのまま地面へと置く。もちろん電車から飛び降りる以上の慣性が働くが、彼らの身体能力はその慣性をものともしない。そしてそれが最善だということが分かっていた彼らはすでに着地を完了してインヴィクルに攻撃しようとしていた。

俺は子どもをどうやって助けるか一瞬で考える。このまま子どもを抱いて攻撃を回避すれば子どもは電車に跳ねられる以上の衝撃を受けることになる。もしくは攻撃モーションに入っているインヴィクルの首を跳ねても、風圧で子どもにケガを負わせるのは必至。ならば物理法則に囚われない魔法で対処するしかない。

俺は怯んだ子どもの背後を瞬速で走り去り、傍らに開いていた門で子どもを空気ごと異空間へと突っ込んだ。インヴィクルは爆風に煽られて吹っ飛ばされている。近くにいた他の子どもについてはミレイユの魔法により、影響は無かった。

俺はすぐさま引き返して吹っ飛んだインヴィクルの首を小太刀で跳ねた。そこからの殲滅は、早かった。ミレイユはともかく、キュリスもアドもだいぶ慣れたものだ。…人間を、殺すことに。

後片付けをした俺らは、子ども達と話すことにした。詳しい状況を聞くためだ。


「俺は勇者。勇者ヴァーンだ。君たちを助けにきた」

「ま、まだ、まだ男の子と女の子が、外に!」

「男の子と…女の子?」


と、心当たりのある男の子、先ほど治癒した男児を異空間から出した。異空間から出したときに子ども達から若干驚愕混じりの歓声があがったが、男の子以外に出る様子がないのを悟って潜んだ眉に戻った。そこで、キュリスの一言が、やけに。何気ない一言がやけに、響いた。


「うん?リウスは?ねえ、リウス、知らない?」

「りう、す?」

「うん。背がこのくらいの女の子。リウスって言うんだけど、ここにはいないの?」


子ども達はみんな、リウスを知らないみたいだった。ここにはいないのか…と、もしかしたらもう手遅れかもしれないという不安。そして、奇跡的に逃げ延びたのかもしれないという希望が湧いてでた。しかし。


「リウスは…あいつらに、連れ去られた…」

「君、意識が!それに、リウスが連れ去られたって!?」

「インヴィクルに、連れ去られた…守れ、なかった…守りきれなかった…」


リウスがインヴィクルに連れ去られたと言った男児。察するに、この男児はリウスが連れ去られる現場に居て、あの傷はそのときインヴィクルに負わされたものだと推測できる。

むせる男児。それは泣いているからなのか、傷が治りきっていないためなのか判断しづらいが、とりあえず俺らは急いでインヴィクルを追わなければならない。


「俺らはインヴィクルを追わないといけない」

「そ、そんな!大人達はみんな、戦いにでて、それで…」

「大丈夫だ。この男の子が入ってた所に、君たち全員入ってもらう。みんな一緒だから、安心してくれ」

「そ、それなら…」


選択肢は1つしかない。それを理解しているのだろう。恐れながらも、一番年上だと思われる子どもが空間に入っていった。それを皮切りにして、次々と子ども達が入っていく。そしてその反応はみな、喜んでいるようだった。

村を救ってくなかで、もちろん、子ども達はたくさんいた。だから作ったのだ。遊びに遊べる、子どものための異空間を。食べ物は作物用の異空間を作って、ミレイユが管理している。流石に動物性たんぱく質は肉からじゃないと摂取できないため、大豆に似た植物性たんぱく質が豊富な食べ物で我慢だ。まぁ、肉を食えないほどの人のほうが大半だからそれほど必要でもなかったけど。ただ食べ盛りで成長期の子どものために、出来る限りの肉は牧畜用の異空間で賄っている。

ちなみにムスペルヘイムこと動く上に暖かいトカゲの人形はこの子供用異空間に入ってもらって、たびたび子ども達の面倒を見てもらっている。あれでいてあのトカゲ、子どもが嫌いではないというか好きな方で、面倒見も良い上にユーモアにも富んでいたため、安心してまかせられるというものだった。いまも子どもを乗せて乗り物ごっこをしてるくらいには慕われてるようだ。


「さてと、せっかくインヴィクルの残党を生け捕りにしたのだから情報収集して…なに!?」

「…死んでおる。自殺対策は万全だったはずじゃが」

「んー…そんなに時間、経ってないはずなのに体が冷えきってる」

「うん、普通じゃありえない。たぶんこれ、精神系の魔法だよ。僕達以外の低級な熱魔法じゃこんな、外傷なしに急激に冷やせない」


ちっ、速く追いたいってのに…まぁ方角は大体わかりきっている。俺らは東からきて、さっきまで南にいて、まだ探せていないのは西だ。急いで西を探すとしよう。

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