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リウス

うーん…今回も死ぬ描写があるけど…次話で救われるので大丈夫ということであらすじは省きます!

「…?ここは?」


目が覚めると、目に入ったのは見慣れた光景、自分の部屋の壁だった。

昨晩のことはあまり覚えていない。がむしゃらになって、気づけば勇者様のいるところへついたくらいしか…あと、そういえば。


「…リス…リウス!」


そう、リウス。私はリウスだ。いままで、お母さんのとこの娘さん、で不便がなかったから、私を呼ぶ言葉なんて必要なかった。妹もそうだ。双子の妹。

起き上がって外を歩く。そうすると


「なに?あの勇者がどこか行った?ふん、やっとか」


勇者様がどこかに行った?…たぶん、私が昨日会って話したからだ。…いや、私が話したことは夢だった?…どっちでもいい。これで何かが変わるならなんでもいい。


「おはようございます。何か、手伝えることはありますか」

「毎日毎日同じ事を聞くんじゃねえ!黙って水汲んで来い!」

「……はい」


襲撃があってから私達のやることは変わらない。変わらず、水汲みだけ。村にある全ての家の水釜に水をいっぱいまで入れる。それを村に残った子供達全員でこなす。それがここ最近の仕事だった。

最初は桶半分を一つずつしか運べなかった。けれど今は二つを一辺に運べるようにまでなってる。大分力がついてきたと思う。さすが、お父さんの子供だって誉められた。


「お、おもい…」

「そんなになるんだったら、一つずつに分けなって言ったのに」


隣で私と同じように桶二つを担いでる男の子。彼は私の幼なじみで、小さいころから何かと一緒にいる。妹は彼の事が好きだと言っていたが、私はよくわからなかった。彼が好きだってことも、恋愛も。


「だ、だって…良いとこ見せたいし」

「一人でなにゴニョゴニョ言ってるの。早く行くよ」

「ま、待ってよ~」




勇者さんが居なくなってから3回朝が来て、その日ももう傾いてきた。


「やーっと終わった」

「手伝ってもらって…ごめん」

「そこはありがとうでしょ。謝ってほしくてやってるわけじゃないの。少しでも楽できるようにやってるんだから」


もう晩御飯を作らないといけない時間になってきている。あと100歩を200回くらいで日も落ちる。晩御飯を作る手伝いをするのも私達子供の役目だ。けれど、その時は訪れなかった。


「まただ!また奴らだ!!」

「戦える奴らは全員出ろ!勇者が居なくても俺達だけでやれると証明するんだ!」


また、あいつら…インヴィクルが来た。私は大きい子どもたちと協力して、一ヶ所に固まって、少し前に大人達が作った地下に避難した。泣き出しそうな子ども達がたくさんいたけど、泣いたら駄目だし、泣いても仕方がないっていうことをこの前のことでよくわかっているから涙だけを流して、口を押さえて声が出ないようにしていた。

穴の中の明かりは最小限で、穴の中心に少しの焚き火だけ。でも穴の中に少しの布団と毛布があるから、小さい子ども達は一足先に寝てしまってる。秋先だったのがよかった。寒さに凍えず、少しの果物もここに入れていたから空腹は凌げる。けど。


「のど…渇いた…」


流石に、小さな水釜では20人ほどの飲み水をまかないきれなかったみたいだ。大人達は全員、インヴィクルとの戦いに出ていってしまってる。ここは一番力持ちで桶を運ぶのが速い私が行った方がいい。


「私が水汲んでくる」

「えっ、危ないよ!」


幼なじみの彼が服を掴んで引き留めてきた。でも、私が一番桶を運ぶのが早くて、危険が少ない。


「私以上に速い子どもなんて、いないでしょ。すぐ戻ってくるから。それに、ここから井戸、結構近いし」


ほんとは300回くらい歩かないと井戸にはつかない。けど私が一番速いのは確かだ。確かに、普通に歩けば年上の子どもの方が速い。けど桶を持ったとたんに私のほうが相手より3つ分、速くなる。


「でも…」

「2つ同時に運んでくるのなんて、いつもやってるんだから」


そう言って、私は穴から抜け出た。後ろからまだ引き留める声が聞こえたけど、私以外の子どもを危険な目にあわせるわけにはいかない。

回りを見て、大丈夫だと判断した。大人達が戦う音は遠く、まだ戦っているからこっちにくることはないと思う。帰るときの体力も考えて、走らずに、はや歩きをして井戸を目指した。桶は井戸の回りに置いてあるためいまは身軽だ。


井戸に着いた。急いで水汲んで桶に入れて、水がいっぱい入った桶を2つ、かついでもどる。いままで歩いて来た道が凄く長く感じる。汗が滲んできた。体を拭くために使う水の分もあるな、と考えていた。その時だった。


「あー!みっけ、見っけた見っけたよヴォルス!」

「騒ぐなドゥッヒェン。しかし、探したな」

「えっ」


知らない声が2つ、後ろから聞こえた。女の人の声が最初に、そのあとに男の人の声。インヴィクルは大人達と戦っているから、偶然居合わせた冒険者さん達が大人達に頼まれて私達子供を守るように来てくれたのかと、そう思って振り向いた。けど。


「ひっ」


女の人も男の人も血に濡れていた。インヴィクルの返り血だったら良かった。けど、女の人は誰かの……まだ新しい心臓を、食べていた。


「うんうんそっくりそっくりだよこの子でいいんだよね?」

「間違い無いようだ。さっさと寝かせて引き返すか」


そっくり。寝かせる。その言葉から、相手は味方ではないと判断できた。だって、私とそっくりなのなんて妹しかありえない。その妹の顔をたまたま居合わせた冒険者が知ってるわけがない。だって、妹は…


「インヴィ、クル…!」


連れ去られたのだから。そして寝かせるという言葉から、相手が妹と同じように私を連れ去ろうとしていることが分かった。

私は迷わずに走り出した。


「あれれ、逃げちゃったよ?妹ちゃんとは違って、お利口さんなんだね」

「あっちももうすぐ終わるだろうな。夫婦よりも、幼い双子の方が(・・・・・・・)効果が高い(・・・・・)と分かってから夫婦の価値は下がったからな」


そんな話が、前から聞こえた。


うそ、逆の方向に逃げたのに!


私は直ぐに反転して走り出した。でも、インヴィクルの二人はまた前に居た。今度は横に走り出した。けどまた前にいた。段々と、近づいてるような気がする。走って、前に居て、方向を変えて、走って、前に居て。段々と走る時間が短くなってる。段々と近づいてる。段々と追い込まれてる。段々と、段々と。段々と、段々と。…もう、走れない。


「ふふ、そろそろいいかな?」


もう、逃げれない。インヴィクルの男の方が私の口を塞ぐように、手を近づけてくる。


「い、いや…」

「ま、ままま待てえええ!!!!」


口を塞がれる寸前に、聞きなれた、でも震えた声がした。


「ちっ、もう一人ガキが居たか」


彼は木の棒を持って、構えていた。全身は震えていて、怖いのを無理して飛び出してきたのがよくわかった。


「あのガキは…必要ないな。殺して構わん」

「はいはーい!あの子の心臓、ちっちゃくて美味しそうなんだよね!」


標的が、変わった。その事を感じ取って、私の体は無意識に動いていた。


「私を連れ去るなら連れ去って!この男の子には、手を出さないで!!」

「…面倒なことになったな」

「感動的な展開!」


いつの間にか私は、幼なじみの男の子を背にして庇っていた。


「そんな、なんで…君…」

「リウス。私は、リウス。リウスって、言うの。覚えてて」


私は彼に向かって、足の震えを無理やり抑えて、私は大丈夫だって、笑って言った。

視線を離した前方から、インヴィクルの二人組が近づいてくるのが分かった。私は覚悟を決めて、向き直る。インヴィクルの男の人の方の手が、私の口を塞ぐようにして手を近づけてくる瞬間が、どうにも長く感じて。

――グッと、私はなにかに引っ張られた。


「リウスは…リウスは渡さない!!」


その背中は小さかったけれど、とても大きく見えた。けれど


「ふふふ、どっちにしても美味しそうな心臓、逃すわけは無いもんね。そっちからくれるって言うんだったら、遠慮なく貰うとするよ、ふふふ!」


ゴジュリ。骨が折れる音と、肉が裂かれる音がまざった音が響いて、びたびたと何かが顔に着いて、ぼたぼたと黒い液体が地面に落ちた。男の子の胸から、手が生えている。その手には、動く心臓が…まだ、動いて…うご、いて…

顔に着いた何かが頬を伝って、口へと入った。それは独特な臭いを…転んだときにできた傷口を舐めて知った、この味は……!!


「いや…いやあああああああ!!!!」


血、血が、血がどばどばって、流れて!!

私は近づいてくる男も気にしないで、目の前の光景を受け入れずにいた。そして、口を塞がれて、意識を失った。

いずれ背中は大きくなる…

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