あいす
ミレイユとキュリスに伝えていなかったこと。それは
「ミレイユ、キュリス!こいつらは多次元同一存在だ!それを利用して超常的な動きと回復力を可能にしてる!」
「…ほう?」
「…??たじげんどういつそんざい?」
龍種が相手に特効と呼べる存在だと言うことだ。キュリスにはまだ早いが、ミレイユは俺の言葉の意味をよく理解して攻撃してくれるだろう。今の俺は力を落とし、多次元時空同一存在ではなくなってる。はっきり言えば、普通の人類と同じ存在だ。次元も時空も現在に閉ざされているため相手への有効な攻撃手段がないが、ミレイユ達最高位龍種はその限りじゃない。次元が閉ざされていても多次元同一存在だ。例えるなら、分身ができる忍者が、一人しか入れないほど狭い空間に閉じ込められている状態。できるけどできない状態だ。そして、地龍、氷龍、天龍は時空が閉ざされていても時空間転移ができないためあまり関係ない。
アヴくんは空間転移はできるけど時間を自由に行き来することはできない。だが俺やミレイユ、キュリスが空間も時間も自由に行き来できないのとは違い、天龍であるアヴくんは空間を自由に行き来でき、干渉できる。こいつらにとっては天敵のようなものだ。
しかしアヴくんはいまイルを匿うためにアヴくん固有の世界、異界とも言える場所に隠れてもらってる。だから、ミレイユとキュリスが異次元へ干渉するには次元の壁を認識し、異次元の自分に攻撃をさせないといけない。それを言うは易し、行うは難しだ。
ここで思い出しておこう。抵抗龍力という対龍種の異能を授けられている相手がぞろぞろと出てくるから霞みがかっているのであって、その存在はこの星、アルヴテリアに限ったことではなく、この宇宙全体で最高の存在である、最高位龍種だ。そして抵抗龍力を授けられているものもおそらく最高位龍種か、その力を利用するものである可能性が高い。つまりは
「ふむ、心得た。キュリス、先ほど言った、この階全部を氷付けにするというのは撤回するのじゃ。新たに、階全体を氷付けにしてくれるかの」
「ん?はーい、あいす!」
「――っ!?」
そう、それは決定的な違い。こそあどの指事語は目に見えるものを指すのだ。これ、それ、あれ、どれ。この次元でこれ、とミレイユが指定したのをキュリスはこの次元のこの階という判断で氷らせたのだ。つまり、指事語がなければ全ての次元の今いる階を氷らせる。そしてそれは
「…一気に20、持っていかれましたか」
相手が焦りを見せた。異次元に匿っている自分の分身を一気に消されたためだ。しかしそれは、ここから激戦になることを表している。そしてそれは予測ではなく、相手が抵抗龍力を使い出したことで現実になる。しかしその抵抗龍力はミレイユが打ち消してくれるため気にせず戦えるが、ミレイユからのアシストが無くなるということでもあった。ここからが本番だ。
「やはり邪念を消す術があるようですね。流石は勇者様と言ったところですか。しかし!」
相手の動きが変わる。いままでのヒットアンドアウェイではなく、味方との連携を織り混ぜた戦術になった。その攻撃は分身が少なくなったために捌ききれてはいるものの、ギリギリという感は否めない。なにせさっきまでは反撃が出来ていたのに、いまは防御しかできていないのだ。そんな中でも攻撃できているマルスは流石だと思う。
未だ無傷な俺とマルスだが、俺はギリギリ、マルスは一歩足りないというところ。また膠着状態になるなという判断をミレイユは下した。そこで、ミレイユは切り札を出す。あまり気乗りするものではなかったが、致し方ないと。
「キュリス、敵に攻撃するのじゃ」
「えー、私たたかい得意じゃないのに」
「あとで極上のアイスクリームをあげるのじゃ」
「よしやるぞーーー!!」
頭はクール心はホット。つまりは、体を直接暖めずにやる気を出させればキュリスは暴走させずに済むのだ。その効果は
「が…ふ…」
この大広間を覆う氷を氷柱にして敵に突き刺すことで、敵を一人仕留めたほど。しかもその敵はこれ以上復活する予感がない。異次元の分身も一緒に倒したためだろう。そしてその攻撃はそれだけに留まらず、空間にダイヤモンドダストを漂わせる。それをキュリスは
「あいす!」
氷を大きくさせ、敵体内を破壊した。敵は生物で、呼吸が必要なためだ。俺は一応龍なためと、マルスはキュリスのコントロールで影響はない。敵を完全に一網打尽にしたのだった。
敵が沈黙したのを確認してすぐにキュリスに約束通りの極上アイスクリームをあげる。でなければ敵に特攻するのが目に見えていたためだ。しかしこうも一瞬でキュリスが敵を片付けた所から見ると、やはり最高位龍種は最高位龍種なのだ。




