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成功体

2話同時です

仲間の遺体はミレイユに埋葬してもらい、直ぐに皇帝宅へ突撃した。俺らだけになったのなら馬はもう必要ない。強化魔法を解き来た道を引き返すように走らせたなら終わりだ。


「チッ」


まぁ当然何事もないはずもなく。手厚い歓迎を受けた。そのときのマルスの凄まじさといったら。武器を持ったマルスが強いのは身をもって知っていたが、本気になったマルスは五十人近い敵を会敵したその瞬間に殲滅。すべての敵をさきほど使っていた空絶という技だけで殲滅してみせたのだ。技名の感じからしておそらくは空間を絶つという技だろう。

さきほどの攻防で敵味方の魔法が地球の重火器とほとんど変わらない威力だったところをみる限り、マルスは本当に規格外のようだ。なんせ、味方は大国でトップクラスの魔法使い。相手も相当な手練れだったと思える。それでも、地球の大砲や戦車の砲撃、ミサイルと同じレベル。それが急に空間を切るとか、もはや核以上のものだ。 次元が違いすぎる。

内部を進んでいく。ちらほらと敵にエンカウントさえしたものの、マルスの手によって滞りなく進んでいられた。人質はおそらく最上部にいるとは思うのだが、内部の隠された部屋、もしくは地下などの可能性も捨てきれないため壁を登るということはしなかった。そんな理由で内部を進んでいくと、広い部屋に入った。おそらくはパーティーの会場になったりする大広間だろう。そこには敵が五人、待っていた。待っていたと表現して間違いない、悠々とした態度でそこにいたのだ。


「こんばんは、ようこそいらっしゃりました剣王マルス、勇者ヴァーンとお付きの方々。(わたくし)たちを代表して名乗らせていただきます、私ミゲルと申します。一度きりの付き合いではございますが、どうぞお見知りおきを」

「「「「お見知りおきを」」」」


見るからに執事三人、メイド二人といった風貌だが、その気配は侮れない。ここはもはや敵の本拠地。いままではマルスが瞬殺していたが、敵のこの雰囲気からしてそう易々とは殺らせてもらえないだろう。


「それでは早速。準備が必要でしたらお待ち致しますが?」

「その必要はありません…よ!!」


マルスが斬りかかる。神龍の目でミゲルと名乗った執事のことをみてみれば…


名前『ミ%#?!¥&@%!#¥&?%!@#&!#@?@!』

位『最高位』

種族『純血種族』

権限『混ざりもの』

特殊権限『命の一つで一つの命』『成功体』


あの喋り方が独特な襲撃者と同じ名前の文字化け。権限に『混ざりもの』と特殊権限に『命の一つで一つの命』がある。しかしあいつと違うのは、種族のところが文字化けしていないのと、特殊権限に『成功体』というのがあるところだ。

察するになんらかの実験の結果であの影の世界に干渉できる力を得たのだろうが、襲撃者の時点で大分苦労したのにあれがもしかしたら失敗体だったのだとしたら、成功体であるこの執事は…と、そこまで考えて思い至る。このミゲルだけが成功体だというわけは、と。そしてその疑いは確信へと成った。残りの四人全員に、『成功体』の表記があったのだ。そしてその権限の有無によってもたらされる戦闘力と言えば…


「おっと」

「外した!?」


油断のないマルスの攻撃を避けるほど。そしておそらく、全員が抵抗龍力を持っているだろう。これは少し…いや、厳しい戦いになりそうだ。


「おやおや、ヴァーンさんも準備が出来たようですね。それではこちらからもいかせて頂きます」


ミゲルが指でパチンと音をならすと、一歩も動かなくてもしかしたら人形(にんぎょう)なんじゃないかと思っていた他四人の執事とメイドたちが、一斉に動く。先ずは瞬間移動でこっちに斬りかかってくるのを防ぎつつ、反撃…と思いきや、もうそこに敵はいなかった。マルスの部下達を殺した襲撃者だったら当たっていた攻撃が当たらなかった。おそらく瞬間移動にはクールタイムがあると踏んでいたのだが、これはかなり厄介だ。


「ミレイユ!」

「了解じゃ。キュリス、この階全部を氷付けにするのじゃ」

「はーい、あいす!」


この階に王女は居ないということでこの大胆な動きだ。これで敵の動きも阻害できれば御の字。目的は俺のドジが連発できるということだが…阻害は無理か。マルスが氷の上でも大丈夫だということは初めて会ったときに確認済みだ。

そして俺はといえばすっかり滑ることにも慣れ、かなりアクロバティックなこともしている。だが一向に状況は好転せず、膠着状態が続いていた。斬りかかっては避けられ、避けられては斬りかかられて、斬りかかられては避け、避けては斬りかかって。持久戦になればなるほど追い込まれるのは俺たちだ。疲労を感じるとかそう言うのではない。長引けば長引くほど、救出するのにかかる時間が多くなる。そうなった場合、手遅れになる可能性が高くなる。もしかしたらもうすでに…いや、考えては駄目だ。いまは集中しよう。

一手二手三手と詰めればその分詰められる。マルスには三人、俺には二人が着いているが、どちらももう一手が欠けている状態だ。


「くっ、きりがない!」


マルスがぼやく。相手の戦いには慣れてきたが、逆にこちらの戦い方に慣れられてもいるのだ。階はキュリスが作ったフィールドをミレイユが補強したため、ボロボロになった形跡もない。一度キュリスにも戦いに参加してもらいはしたのだが、効果はなかった。戦闘慣れしていないのだ。ちなみにミレイユは抵抗龍力の警戒をしてもらっているため動かせない。しかしそうこう言っている場合では無くなってきた。これ以上時間を稼がれるわけにはいかない。ここで一手、場を荒らす何かを投入しなければ不利なのは俺たちだ。


「あ!そういえば!!」


やらかした!そういえば、ミレイユとキュリスに伝えなければいけないことがあるんだった!!

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