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デリワルド王国対リュノン皇国開戦

2話同時投稿です

「リュノンがインヴィクルに乗っ取られてる?」


まぁリュノンに俺との関係などそれほどないし、愛着もない。しかし一国、しかも大国が数年で簡単に乗っ取られることなどあるのだろうか。…いや、相手には洗脳する技術がある。あり得る話ではあるな。


「明日の作戦は中止。新しくリュノンへの進行作戦を立案する」

「許可しよう」


デリワルド王が許可する。まぁ当然か。子供と孫を拐われているのだから。

別室へと移り作戦を考える。見合わせるのはデリワルド王とマルス、第一から第十五までの旅団団長とマルスとは別の戦術顧問三人、戦略顧問一人。それと外交代表と経済代表、政治代表だ。


「ここでリュノンへと大規模攻勢に出たところで、空いた本土をインヴィクルから襲撃されると言うのが関の山だろう」

「リュノンがインヴィクルに乗っ取られてるとして、それが我が国にどう影響すると?むしろ好都合でしょうな」

「しかしインヴィクルが国を持つということはそれ相応の脅威に成りうるのでは?しかも相手はリュノン。その脅威ははかり知れませんが」

「周辺各国に協力を要請するというのは?」

「こちらの動向を悟られるのはいただけない。リュノンへは効果的に奇襲をかけるのが一番被害が少なくてよかろう」

「しかし潰しきれなかった場合、より被害が増すのでは?それならば戦力を集め圧倒的な力で捻り潰す方が効果的かと」

「仮に周辺国へ協力を要請するとして、その国が乗っ取られていない確証があるのか?」

「進軍時の問題も解決せねばなるまい。侵略行為だと言いがかりをつけられるぞ」

「物資の補給もしなければなりませんね。冬の備蓄をどこまで出せるかですが」

「まだリュノンがインヴィクルに乗っ取られているとは決まったわけではないのですよね?かもしれないとのことですが、それはなにで確認を?」


全員の視線がマルスへ向く。その圧に対し、マルスはそれ以上の圧でもって返す。そして取り出すはリュノンの国旗が刻印された勲章。それを見た面々は、驚きの表情で、しかし疑問を浮かべた表情でマルスを見返す。その疑問にマルスは答えた。


「これはリュノン国近衛騎士団の証である勲章ということは周知の通りだ。先日王城を襲撃した者の3人がこれをつけていた。そしてそいつにはインヴィクルの構成員である星痕、スラーが体にあった」

「なんと!?」

「…決まりだな。近衛騎士がインヴィクルに操られているのであれば、上層部が操られていないとは考えられん」

「ならばいかに早く敵を制圧するかだな。力をつける前に叩くのがいい」


どうやら王子たちが拐われているということは知らないようだ。箝口令が敷かれているのだろう。なぜそんなことをしているのかどうかは分からないが、それを知っている俺からみればこの会議は茶番だ。時間の無駄とも言っていい。なにせ、王子たちが拐われてさらにインヴィクルの実験台にされるという。時間的に余裕はないのだ。つまり。


「リュノンへの奇襲を決行する」


その裏で俺たち少数精鋭による本部強襲を建前とした救出作戦しかないだろう。

デリワルド王が宣言する。そこからは早い。どこから奇襲をかけるか。進軍時の領土問題はどうするか。本土に残す戦力はどれにするか。どのように軍を展開するか。様々なことをスムーズに決める様は流石の一言だ。一丸となった国は、こんなにも強いのかと言うほどに。

そんなこんなで話も終わり、王からの密命も受けた。報酬の話はしていない。そんなにお金を持っても使い道がないもんな。


「さて、相手は国を乗っ取るほどのもんだ。十中八九、抵抗龍力を持つ幹部がいるだろう。ミレイユ、対策は?」

「あの感じを忘れてなければ、問題なしじゃ」

「よし。キュリスも約束を忘れてないな?」

「うん。ランドの指示に従う!」

「よしよし。良い子だ」

「うまうま~」


とアヴくんがばくばく食べていたアイスをあげる。熱を持つものには要注意だが、冷たいものならば大丈夫なようだ。完全に餌付けに成功している。

キュリスの人形態(ひとけいたい)は地球で言うロシアン美人だ。まぁ年相応の美幼女なのではあるのだが。そういえばアヴくんの人形態は見たことがないな。また機会があったら人形態になってみてもらおうか。




準備を進めること数日が経ち、いよいよ作戦決行日だ。周辺各国への根回しは既に済んでいて、インヴィクルの息がかかっていない国も特定ができているそうだ。デリワルド王国はインヴィクルに乗っ取られてる国の解放も視野にいれている。

今回はリュノン周辺の国協力の長距離遠征訓練という名目でリュノンへと進軍する。インヴィクルに悟られないようにするためだ。まぁインヴィクル襲撃からこの進軍だ。バレてはいるだろうが、タイミングを図られないようにするためである。

そんな進軍時の俺が乗る馬車はデリワルド王の護衛左前側である。反対の右前側はマルスが待機しているため、俺への期待が分かるだろう。この魔法がある世界で一番襲撃されやすい場所だ。そう警戒している最中、リュノン国領内へと侵入した段階で。


「来たのじゃ」


ミレイユが魔法を前方に展開。大きな壁を作る。一拍遅れて響く轟音は開戦の合図だ。この進軍が察知されているという可能性は大きかった。だからここで開戦することに戸惑いはない。


「総員戦闘体勢!遠距離魔法部隊魔法準備!打てぇぇぇぇ!!!」


ミレイユが壁を消失させた瞬間に、今度は自軍の攻撃だ。圧倒的高密度で熱魔法の火球をうち、その火力を増すために運動力魔法で風を送る。一応火球の熱にやられないようにキュリスにはアイスを投入している。大量に用意しておいた。


「反撃くるぞ!タンク隊構え!」


巨大な盾を持った隊員達が構え、盾に魔力を送る。盾に刻印された刻印魔法が盾の防御力を増したのだ。一応、ミレイユにも盾の強度を増すように言って、ミレイユもそれを実行した。俺らはまだ、動く予定ではない。


「第4旅団第6旅団各員作戦コード4番通りに進軍!」


さて、ここで俺らも動きを見せよう。王はこのままここで陣頭指揮。デリワルド王は戦ができる将軍でもあるのだ。そして俺とマルスとその部下五名、精鋭の魔法師三名で大回りで迂回し、首都にある皇帝宅を叩く。ここが一番インヴィクルの根城にされている可能性が高いからだ。首都へは馬の全力疾走で丸一日かかるところを、俺の強化魔法で一晩に短縮している。まぁ俺とマルスは走った方が速いのだが、他がそうではないため馬を使うのだ。

俺の強化魔法は生物にかけると肉体を摩耗させる。強化が強ければ強いほど損傷は大きくなる。馬には片道分しか期待していないため、強化具合はお察しだ。申し訳ないが、この戦闘が終わったらゆっくりと隠居生活を送ってくれと願うしかない。

Sランク冒険者とはそれ一つで一個の戦争を終わらせられるほどの戦力をもつ者達のこと。 俺は一応ミレイユとセットでSランクの称号をもらっているのだが、俺以外の者達は全員個人の力でSランクの称号をものにしている。

予定がスムーズに進み首都へと侵入できたことに悪寒を覚えつつも、俺らは馬を進めた。この町の人々に罪がないというのは数日間過ごしていたためよくわかっている。狙うのは皇帝を洗脳しているであろうインヴィクルだけだ。首都内を馬で疾走し、皇帝宅へと距離を詰める。皇帝宅もデリワルド王城に負けないほどに巨大な城…いや、要塞だ。潜入には苦労するだろうが…人質がどうなっているかわからないため、急ぐしかない。

そう急いている中に、不意に、虚空から。俺やマルスが反応しきれないほどの至近距離で短剣が現れ、マルスの部下である戦士の一人の眉間が貫かれる。


「くそ!どういうことだ!」


馬を急停止させ…ずに、馬の速度をさらに上げる。相手はこちらを狙い打ちできる場所にいる。止まるのはかえって危険だ…が。進行方向に怪しげな人物が。一応真夜中なため人通りは少ないが、襲撃からの怪しげな人物となれば十中八九、そういうことだ!


「総員戦闘体勢!」


マルスの号令を聞く前に馬から飛び降り地面を蹴って尻尾の剣で横凪ぎにする。怪しげな人物は回避できないと見るや持っている短剣で受け止めようとするが、ここは星刻剣。短剣ごと切り伏せた。深く被ったフードから見せた顔は女性の者。切り伏せた服の合間から見えたのは星痕、スラーの刺青と大量の刻印が施された紙だ。それが瞬時に爆発物だと判断し、ミレイユを呼ぶ。


「ミレイユ!」

「うむ!」


爆弾に関してはキュリスのほうが良いかもしれないし、凍らせてしまえば遺体も綺麗なまま埋葬できるだろう。だが、キュリスは名前を呼ぶだけで望むことをしてくれるほど察してくれる精神年齢ではない。ここはミレイユの魔法で包んで爆発を封じるしか方法はないだろう。残念だが遺体は爆発に巻き込まれ微塵になってしまうだろうが、そのままミレイユの魔法で埋葬することで許してほしい。ミレイユもそれを察して、遺体を地に還した。

俺らはそのまま要塞へと突入しようとするが、敵に囲まれた気配を感じとり足を止めた。


「処供物流秘奥、刺身包丁、出刃包丁」


マルスが一度見せたことのある二メートルほどの剣と、今度は刃の分厚い全長一.五メートルほどの大剣をその手に持った。警戒体勢に入る俺らに対し、じりじりと距離を詰める気配。


「…おとん、抵抗龍力持ちがいるようじゃ。相手に使わせなければ問題ないのじゃが、一応、警戒しておくのじゃ。キュリスもの」

「了解」

「わかった!」


そんなやり取りを聞いたのか聞いていないのかは分からないが、相手が動きを見せた。全方向から一斉に放たれる火球。こめられた魔力量からして俺らとマルスは問題ないが、集中放火をうけた仲間達は危ない。そしてキュリスに当たればまた暴走するかもしれない。ここはキュリスの魔法で火球を打ち消すのが吉だ。


「キュリス、あれらの火球を消すのじゃ」

「あいす!」


一瞬で降りる霜はその力がどれほど強力かを表している。そして防御に遠慮がいらなくなったとあらば、火球が来た方向、角度からだいたいの敵の場所は割り出せる。


「空絶」

「空縮!」

「バーニング!」

「バーニング!」

「バーニング!」


マルスが空間を絶つ剣で遠距離攻撃を。俺は空縮で瞬時に敵に近づき切り伏せ、ミレイユは無詠唱で魔法を。キュリスは防衛を。他の魔法師が短縮詠唱で攻撃し、マルスの部下の戦士は有効的な遠距離攻撃手段がないため弓で牽制だ。

最後の一人になったとき、その敵が逃げの一手から急に方向転換し距離を詰めキュリスを狙った。キュリスは防御に徹していたため自動的に迎撃に入りその敵を氷付けに…するはずが、空振りに終わる。


「あぁ危ないね~ぼぅ僕らが1つ~なぁ無くなってしまったよ~」

「…ミレイユ」

「…うむ、あやつが抵抗龍力持ちじゃ」


やはりか。相手は何らかの権限でキュリスの攻撃を避けたか。厄介な相手にちがいないな。

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