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イルの願い

「事情はわかりました。お父さんが言うのならそこのかち…人間は預かりますが、でも僕は子供の育て方を知りませんよ?」

「問題ない。いざとなればベテランに頼るといいさ」

「…?」

「ドラグハートのじっちゃんだよ」

「ああ、そういえばあのおじいさん、ものすごい大家族ですものね」


少なくともドラクレートとドラグを教育したことは知っている。ドラクレートのあの龍にも匹敵するような魔力をドラグハートのじっちゃんは軽々と受け止めているという話だし、さらにはあの好戦的な性格も完全に矯正していた。きっと良く教育してくれるだろう。


「ん…ここは?」

「起きたかイル」


起きたイルに俺らは今後のことを話した。俺らは冒険者としての仕事を続けインヴィクルやそれに類する組織を潰し回ること。その間、イルにはここアヴールトーランで隠れつつ力を完全に自分のものにして欲しいこと。…また、イーとウルの遺体のこと。イーとウルはミレイユが丁寧に綺麗な状態にしたが、それでも血の気は失せていた。


「遺体のことはどうしてもイルが決めなければならない。俺らで勝手に決めるものじゃないからな。神様に願うように、なんでもいいから言ってくれ」


そう、なんでも。たとえ死者蘇生を望まれようと、今すぐには無理でも全ての龍玉を回収し終えたら不可能ではない。星にしてくれと言われれば、いますぐにでも星にしよう。アルヴテリアから見える星の中で一番輝く星に。

そんな俺の気持ちとは裏腹に、イルの言ったことはそう難しいものではなく、むしろ至って普通の願いだった。


「それなら…この場所にミレイユの綺麗な魔法で眠らせてあげたい」

「了解だ。アヴ、ミレイユ」

「わかりました。せっかくですから、僕が一番良いと思うところに案内します」

「うむ。最高の手向けとするのじゃ」


そうしてイーとウルの埋葬は終わった。ミレイユの魔法で行う埋葬はそれはもう幻想的で、そして…ミレイユの内心が露になっていた。アヴがアヴールトーランの案内をするためイルを連れて行っても、ミレイユはしばらくその場に残っていた。


「ミレイユ…」

「良いのじゃ。初の友人をこの手で葬れるのなら、これ以上のことは望まん。…しかし、奴らは絶対に許さん。アルヴテリアにおる限り逃げ場などないと知れ。最高最悪の方法で塵も残さず葬ってやるのじゃ」


その怒りは確かな重力を持つほどに深かった。龍種が人間と親しくなるのは良いことだとは思うが、これを機に親しくなるのを避けてしまうようになるのはいけないな。しかし、俺もイーとは浅くない縁だとは思っていた。が、ミレイユほどの怒りは浮かばない。薄情なのか、思考が龍…いや、龍であるミレイユがこれほどの怒りを浮かべているのだから、神寄りになってきているのか。思い出せば、俺の本質は神だ。完全な自己を失う神位一の一つ下の、神位二の神である。考えたくもないが、少しずつ俺としての自己を失っているのだとしたら。きっと、神の力と拮抗していた龍の力を失ったためにこのようなことが起きているのだと思う。これは早めに力を回収しなければいけない。


「ということでミレイユ、俺は奴らに対抗するために北極点近くの龍玉回収を優先したほうが良いと思う。どうだ?」

「そうじゃな。妾もそれが良いと思うのじゃ」


これまでのことを鑑みるに、北極点近くの龍玉から生まれる龍種は氷系の龍だろう。正直時か運動力系の権限を増やしたいとは思うのだが、贅沢は言ってられない。…こう考えればいい。ドジが連発できる滑りやすいフィールドを自分自身で作れるのだと。あれ?最強じゃね?

ウリエルが言っていたが、俺のドジは運命を変える力だ。その力がたまたまドジという形をとっているのだそうだ。そして、その運命の強制力が強ければ強いほど俺のドジのよる影響力は強くなるという。


「同じ龍種の力ゆえ妾の弱体化なしでの無効化はできんのじゃ。しかし、それ以外にできなくなるのも考えものじゃ。じゃから妾も修行をするのじゃ」

「修行?」

「うむ」


ふむ…龍種にも修行、特訓、勉強などの概念はあるのか。最強だからと研鑽をしないイメージがあったのだが、そうでもないみたいだ。


「さて、そうと決まればアヴくんに送ってもらおう。そのあとはアヴくんたちに隠れてもらう都合上、転移はできないな」


さすがに今の俺に、龍種ほどの魔力を持つものは運べない。転移するには一緒に運ぶもの以上の魔力を要するのだ。イメージは箱。相手の魔力を自分の魔力で包み、郵送する。そのため、俺が龍種を転移できるようになるのは龍玉を五つくらい回収したときになるだろう。


「それじゃアヴくん、あとはよろしく」

「イルを頼んだのじゃ。そして、人間の可能性に驚き、学ぶと良いのじゃ」

「了解しましたお父さん。ランド、人間が僕に教えられることなんてないと思うよ?それでは送りますね」




…?あれ、龍玉の反応間近、数キロ先くらいの孤島に降り立つ予定だったのに、実際に降り立ったのはノースブラント最北端の(みさき)。…ズルはできないってことか。


「ふむ…この感じは、妾を誘っておるな」

「ん?」


ミレイユに言葉をかける前にミレイユが魔法を使い始めたため、俺は言葉を飲み込んだ。そして改めて見て気づく。これは魔法なんて生易しいものではない。地殻変動と同じような天災、(ことわり)と同じ部類だと。

モーセの十戒斯くありき。そして浮かび上がったのは…いや、沈み下がったのは遺跡のようなものだった。


「あそこにいけってことか」

「うむ。そうじゃな」


そうして割れた海の間を歩いて行く。断面をよく見れば両サイドの海は繋がっていて、右の断面に頭を突っ込んでいるものすごく太長いウツボのような生物が左の断面から頭を出していた。海を割ったのはミレイユだが、この光景はアヴくんの空間系の能力が作用しているのか。そういえばミレイユの核となる龍玉があった洞窟は俺以外のものが前に進めない不思議な現象があった。これはもしかすると、発生した最高位龍種に応じてなにか試練的なものが増えていくのだろうか。今回が氷系の龍種だったとして次の龍玉を回収するときに空間系、物質系、氷系と三つ試練があればこれは確信に変わるな。


「中に入るぞ」

「うむ」


今度はどんなやつが生まれるのか、楽しみだ。

最近、別作品の輪廻月がスランプ気味で…いま執筆している章が物語の核心に迫る部分なのでどうしても慎重になってしまい、また矛盾点も出て来てしまって思うようにいかないのです。設定を考えるのが好きで設定だけが独り歩きして物語がそれについていかない状況で。1月の転生龍の更新頻度もそれが理由です。そんな私ですが、どうか今後ともよろしくお願いします。

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