潜入
イー一家と別れた俺たちは、本格的にインヴィクルの調査へと移りこんだ。まずはしたっぱを襲って調査することだが、このしたっぱがなかなか見つからず苦労した。最初は本拠地から出てくるやつを狙えばいいという考えもあり、そしてそれを実行したまである。だがインヴィクルは拠点それぞれに広範囲の魔力探知結界を開いていたのだ。この魔力探知結界、魔力を持つものが結界を潜ると術者に知らせるというもので、その方法は薄い膜状の結界に魔力をもつものが通過した時、その通過した魔力の大きさに比例した振動が術者に伝わるというものである。イメージして一番近いのはプリンだ。つまりは、無尽蔵ともいえる莫大な魔力をもつ龍種である俺たちはプリンをスプーンでつつくというよりも、プリンを大砲でふき飛ばすというような感じになってしまうのだ。
そしてやっと捕まえたインヴィクルの構成員第一号といえば、まだまだ若い青年だった。二十三歳頃の人種で、未来が明るいはずの存在だ。それが何故、邪神の復活を目論む組織なんぞに。と、これは後々分かったことがだが、インヴィクルはどうやら反抗するものには思考を操り手駒としてしまう方法があるようだった。そしてその解除は俺たちでも困難で、それこそ第6神位の熾天使か第5神位をもつような神と似た存在でなければこんな思考誘導はできないというほどだ。そしてやはりその体にはインヴィクルに属している証である刺青、もしくは焼き印があった。第一号である青年は焼き印であったが、第三号である壮年のおばさんは刺青であった。おそらく焼き印が思考誘導をかけている構成員で、刺青が自分の意思で属している、ということだろう。
「ふう…こいつは焼き印か」
「そうじゃな…いままでの記憶を消せればいいのじゃが、妾はどうも精神系の魔法が苦手でできんのじゃ」
「俺もここまできつく縛られてるとほどけんな…」
俺らでも手が出せないほどの思考誘導をしていることはつまり、俺らよりも強い相手がいる可能性があるということでもある。神位6になっている俺ではあるが、それでも敵わない敵はいないと思っていた。だがそんな考えは甘く、考えなしに敵の拠点を潰し回らなくて本当によかったと思っている。そして俺らでも手が出せないほどの敵がいるということはもしかすると多数の冒険者でも敵わない相手かもしれないということでもあった。だからこそ、念入りな調査が必要なのだ。強力な思考誘導をするような奴が何人もいるとは思えないしな。
「ここで待ち伏せすること2週間だが…出てくるのは全部したっぱだな」
「じゃな。特にこれと言った変化もないのじゃ」
「それで、ミレイユ。分体を作ることは成功しそうか?」
「人間に似せるというのは難しいのじゃが、獣ならいけそうじゃ」
この二週間ただぼーっと待っていた訳ではない。俺は創造でカメラと望遠鏡と鳥形のドローンを作り、ミレイユには分体を作ってもらっていた。ミレイユは物質系のスペシャリストだ。そんなミレイユならば一つ人間のような人形を作れると思ったのだが、ミレイユが言うには心が足りないということだった。やはり精神系のスペシャリストである龍種もいるのだろうか…仲間であったのなら心強いんだがな。まぁ無理なく、心をいれなくて済む獣で妥協だ。
「よし、潜入させよう。まずは俺の鳥形ドローンで偵察だ」
「どろーん?の出番じゃな。妾も操作してみたいのじゃ」
「また後でな」
「むぅ」
一つ作ってしまえば後は簡単、コピーで増やせる。まずは一機、飛ばして見せよう。このアルヴテリアでは全ての生物が大なり小なり魔力を持っている。だからこの鳥が入る時の振動も違和感を持たれないだろう。この鳥形ドローン、少ない魔力で操れる優れものなのだ。質感もミレイユ監修のもと、本物の鳥に似せてある。これにより鳴き声も完全再現できた。これでバレることはないだろう…なにせミレイユが生み出した肉のような物質が材料なのだから。
チチチチと鳴き声を上げホバリングして見せる鳥形ドローン。偵察しやすいようにハチドリに似せたのだ。
「よーしよしよし。いいぞいいぞー」
「おー凄いのじゃ。問題なく動作出来ておるな」
ドローンが撮影する映像は魔力で作ったモニターに映る。画素がまんま魔力なので高画質なのだ。
入り口は何度も構成員が出入りしているところを見ているので特定できている。認識阻害で隠蔽された森を特定の木に触れながら時計回り、反時計回り、反時計回り、時計回りというように順番通りに回り進む。とまぁ心があればその手順を踏まねばならないが、機械相手に認識阻害は効かない。光学迷彩でも仕込んどくんだったな!!はっはっは!!
「よし、潜入できたぞ。さてさて、あとはばれないようにどこまで行けるかだが――あっ」
「――むっ」
ぐしゃり。という音と共に暗転するディスプレイ。言うまでもなく、潰された。なんでよ。完璧な潜入だったじゃんか。
「やはり鳥だったのがいけなかったのじゃろう。次はもっといてもおかしくはない生物で作ってみるのじゃ」
ということで制作に三日。ハチドリでノウハウは分かっていたのでここまで制作期間を短縮できた。あとはこれを量産だ。…そう、潜入にもってこいな生物。一匹いたら三十匹はいると思え。その名は―!!
「ふむふむ、これならば潜入にもってこいじゃな」
そう、Gだ!いざゆかん!!カサカサカサ。カサカサカサカサ。カサカサカサカサカサカサ。お?あれは試作機第一号のハチドリ君ではないか。さてさてなにに潰されたのか。
回りを見回してみる。ちなみに今回はミレイユも操作している。どっちかが死んでもその原因を知れるためだ。
「む、一号はこれに潰されたのではないかの?」
ちなみに作るドローンには体液に着色した魔力を仕込んである。もし誰かが殺したらその着色した魔力が飛び散り、特定するためだ。これは誰か、だけではなく場所も特定できる。そして魔力を見れるのは俺たち龍種。そしてそれに準ずる高位存在だけだ。とても人間に見れるはずのものではないのだこれぞ策士!
そんな着色魔力は洞窟の壁の両端にかかっていた。状況から察するに、異物が入った瞬間壁が閉じる仕組みなのだろう。問題はなにを異物と判定しているかだが…。
ためしにハチドリの隣を通ってみると、やはり暗転。これから察するに、あの信者である証の刻印が鍵なのだろうと思われる。
「―ということで描いてみました」
「描いたのは妾じゃろうが。おとんが描いたのは歪みまくりじゃったろう」
はい、ミレイユには絵の才能もあるみたいです。多才な娘にお父さん期待しまくりです。
まずはセキュリティに潰された残骸の処理をどうするかを調べるために張り込みしていたのだが、謎は待機すること2時間ですぐに分かってしまった。普通に、掃除しにきたのだ。構成員が。正直拍子抜けしてしまったのだが、ちょうどいい。予定変更で、構成員と一緒に入ればどうなるかも調べてみようと思う。
「扉が閉じたらどうするのじゃ?ここまで無殺で来たじゃろう」
「もし閉じたら、記念すべき1人目になるな」
「まぁ、そんなものじゃな」
そんな心配は杞憂に終わり、難なく施設内へと潜入できた。まずはカサカサと先ほどの清掃員についていく。やがて洞窟っぽい洞窟さはなくなり、人間の手が施された真っ白な施設へと入った。まさか非人道的な実験をしているのに真っ白な地面、壁だとは思わなかった…が、抜かりなし。このごき…G形ドローン、飛行能力に加え保護色機能も搭載。張り付いているものの色を完璧に再現するのだ。
「いいのじゃいいのじゃ、どんどん奥へ行っているのじゃ」
さてさて、恒例のダクトを発見。これで一気に深層へと入るぞ。
と、二、三階下に降りたころ、ドローンの触覚が何らかの異変を察知した。この反応は…血の臭いだ。
器用に触覚を動かし、血の臭いが漂ってくる場所を探る俺とミレイユ。そして見つけた。
「…ここだな」
「じゃな」
隔離された室内には二、三人ほどの子供。そんな部屋が百ほどあった。どんな実験をしているのかは分からないが、どうせろくでもないことだということは想像に難くない。今すぐにでも潰してしまいたいが、強力な洗脳をしてくる奴がここにいるとなれば返り討ち…いや、俺らまで洗脳されて世界が終わるかも知れないまである。よって慎重にならざるをえない。
「次の階、いってみるか」
「そうじゃな」
さぁ、ここではどんな実験を行っているのか。
あ、ここで注意喚起をさせていただきます。今後、普通に登場人物を殺します。むしろ殺すために登場させたりもします。しかし無意味な殺し展開はしません。あくまでも異世界の文明レベルと価値観の違い、敵の悪性を増すためと登場人物の(良い意味でも悪い意味でも)成長のためという目的です。輪廻月はループ物なので復活しますが、転生龍の方はただいま未来視や過去改変ができない状況というのは本編にある通りなので、死んだ命は戻りません。R15表記を看板と同程度の価値にせず、また他作品と同じような展開にはならないようにします。以上のことをふまえて、今後とも転生龍をよろしくお願いします。
早速ですが、次話。死にます。




