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正体

こちらいれ忘れの話です…


「結局魔力が高くなっていたのと作物が根付かない…地が腐っているのは関係がないんだろ?」


話を纏めた時点で、信短が切り出す。俺の目的は解決したが、問題は解決していなかった。今の俺では地について干渉する権限が全く無い。だが、ミレイユならば。俺の目的を達成したことによってこの問題が解決しそうだ。


「ミレイユ、何か知ってるか?」

「ふむ、その腐った地の土を持っているかの?」


流石地龍。原因に心当たりがあるのか俺の膝の上ではっきりとした声で言いきる。信短はそう言われると思っていたのか、ただ用意周到なのか。和将に視線を向けると、和将が懐から瓶を取り出しミレイユに渡す。

ミレイユはそれを手に取り、しばらく眺め、蓋を開け土を手に乗せた。信短が何か喋ろうとするが、ミレイユの顔を見て押し黙る。

土からは異様な匂いが立ち込めていて、腐っているとはそう言うことかとわかった。

だがミレイユはそれに顔をしかめるでもなくただ真面目な顔で見つめていた。見つめ、見つめ、見つめ続けて。そしておもむろにそれを口にした。


「お、おい!」

「大丈夫なのかミレイユ!」


信短と俺がミレイユに声をかけるが、ミレイユはいたって真剣だ。その雰囲気に飲まれたのか、信短は何も言わなくなり、和将も秀代もただ黙って待っている。そして、土を飲み込んだミレイユが信短に問う。


「この土に種を撒けば、種が腐るんだったかの?」

「いや、正確には使い物にならなくなると言った方がいいか。どう言えばいいのかは分からんが、種の水分が無くなり、死ぬ」

「なるほどの。して、種以外の物を撒いたことはあるのかの?」


ミレイユに聞かれたことに直ぐに答える信短は、やはりこの問題について深く知っているのだろう。それほど問題視していたということか。


「いや、無い。だがその土に触れた生物は、触れた部分から干からびるということが確認済みだ。…それで犠牲になった者が大勢いるからな」

「なるほどの」


とミレイユは相づちを打つ。そして、話を続ける。土を見た瞬間…いや、話を聞いた瞬間と同じ顔で。その現象に確信がある顔で。


「ならば、実際に見せながら説明した方が分かりやすいのじゃ。案内してくれるかの」


ミレイユは立ち上がり、急かすように脇を広げた。


…抱っこでいくのね。




途中意味も分からずに落ち葉を拾いながら目的地に着く。そこは異様な匂いが充満しており、そこだけ草木も生えずはげていた。通常の土と異常な土の境界ぎりぎりに降り立ったミレイユは、話し出す。


「お主ら、これを見てみるのじゃ」


とミレイユは自分が立っている所が徐々に異常な土に侵食されていることを見せた。だが信短は驚く様子もなく、冷静に言いきった。


「知っている。だから早急に手を打たねばならないんだ」


と。しかしミレイユは首を振る。見るべきところはそこではないと。


「よいか?侵食してきているということはじゃな。原因は地にあるのではなく、他の要因が絡んでいるということなのじゃ」


そこでミレイユは途中拾ってきた落ち葉をパラパラと(くだん)の土に落とす。すると茶色だった落ち葉が灰色になっていった。これを見せミレイユはなにを伝えたいのか。


「そうじゃな…ではそこの女子。この落ち葉に火を付けるのじゃ」


秀代は半信半疑で落ち葉に火をつける。ミレイユは火がついたのを確認し、しばらくしてから壺に汲んであった水でそれを消した。

当然地は濡れ、それを見た和将と秀代は何の疑問も抱かなかったのか火が消えたという事象をとらえた様子だ。

だが、信短は違っていた。驚愕で顔が染まっており、言葉もでない様子であった。むしろ和将と秀代はその信短の顔に驚いていた。

信短のその顔をみたミレイユは満足したように頷き、語る。


「そうじゃ。生物が触れれば、干からびると信短は言ったのじゃ。じゃが、瞬時に吸収されるはずの水分がここに残っておる」

「どういう原理で」


信短が結論を待ちきれないように問う。そんな信短に気分を良くしたのか、ミレイユは上機嫌に、その正体を告げた。


「この現象の正体。それは」

「「「それは?」」」

「大量の微生物なのじゃ」


それを聞き、俺はなるほど、と納得した。腐臭は微生物特有の臭いで、干からびるのは水分と少しの養分に反応し大量に集中、繁殖、さらに食い散らかすということだ。ミレイユがやって見せたのは熱によって死滅することを実演したのだろう。


「この微生物はの。まぁほとんどの微生物がそうじゃが、熱に弱いのじゃ。さらにその性質から、燃やせば大量の天然肥料となるのじゃ。水分と少しの養分があれば大量に繁殖し、養分を生成する。この微生物を利用すれば、作物はよく育ち格段に美味しくなること間違いなしじゃの。もし利用するならば適切な利用方法を教えるのじゃが、利用するしないはゆっくり考えるといいのじゃ」


とミレイユはまるで母親のように諭す。

流石地龍。母なる大地とは良く言ったもので、今のミレイユから感じる母性と包容力は何よりも勝ることだろう。

信短もそれを感じ取ったのか、ミレイユの話を聞き、直ぐに


「いや、考える必要はない。利用する。使い方を教えてくれ」


と言ったのだった。

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