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地龍顕現

1時間が経った。初めは重力によって動きが拘束され苦戦していたが、今では慣れたもので、ただ避けて無力化 (・・・)するだけの作業となってしまっている。

無力化するのにも意味がある。

まずは魔力を吸収すること。龍の石像と大樹を無力化するには一定量まで魔力を減らせばでき、接触した部分から魔力を吸収すれば良い。元の性質が俺の力…龍力に近いからこそできる芸当だ。他人の魔力だったならば出来なかったかもしれない。

もう1つはやはり、自分の子供の子供…孫を壊すというのはやりたくはない、という理由だ。理由としてはこれだけで十分だろう。

ただ、俺がこうすることも見越してだったのなら、この山の地下深くに埋もれている龍玉もとんだ策士だ。まんまと時間を稼がれているのだから。しかし、それを分かっていても甘んじている部分はある。アヴくんが龍玉によって生み出されたのなら、今回も、もしかしたら生み出されるかもしれないのだ。孫たちもそれが確定的なことを言っていた。ならば待っているのもいいだろう。どっちにしろ多からず、少なからずとも、魔力の補充はできるのだから。


「さて、と。最後の一体だな」

「 …我らが主よ。我らが主は我らの魔力を吸収するばかりで、我らには一体も、少しの破損もない。我らが主はヴィヴァム(龍玉)を回収しに来たのではなかったのか?」


なるほど、もっともな疑問だ。龍玉から生まれた存在…アヴくんから供給される魔力よりも、龍玉を直接取り込んだ方が魔力を大量に補充、生成できるだろう。

だが、その龍玉から生命体が、自分の子供が生まれると分かった。分かってしまった。前世での家族を未来に置いてきてしまっている俺は今、心が、家族のためにあるリソースが空っぽなんだ。だから。


「俺はな。今暇を潰しているんだよ」

「…?」


首をかしげた最後の石像龍…一番魔力が与えられている個体だ。まぁ無理もない。石像ならば、実の子供を持ったことがないだろう。子供の誕生を経験したことがないのだろう。


「いや、昂る感情を紛らわせている、と言った方がいいか。孫どもと遊ぶのもいい経験だ」

「なにを…」

「分からないか。当然だ。…この、実子が生まれる瞬間を待ちわびる感情なんて。いいか?親が!実の子供の誕生を願わないわけがないだろう!!?」


そうだ。この昂る感情は、喜びだ。俺は今、ものすごい期待と喜びが心を支配しているのだ。無意識に人間の姿を取っていたのも仕方がないだろう。


「さて、そろそろか?」


俺は石像龍の横を素通りし、もっと奥深く…最高位龍が生まれる場所、祭壇へと向かう。

祭壇は精巧な装飾が施されていて、神聖で神性な雰囲気を帯びていた。

アヴくんの時は空間が割れて顕現…生まれたが、さて、今回はどうなることやら。

と、待ちわびてみると1つの装飾に掘られていた龍が動いた。龍は祭壇場内を巡り、やがて祭壇の装飾についたと思うと、装飾が動きはじめた。

掘られた模様が幾何学的に変化し、台から中央に鎮座する龍玉へと長い橋のようなものが伸び、つながる。そして先ほど祭壇内に入った龍が橋を渡り、龍玉内へと入っていった。

それは受精を意味するようだった。だが、何も起こらない。

突然、ボコ、と地面が隆起した。それは連鎖反応を起こしたかのように続き、天井、壁、そして華美な装飾をも侵食していった。空間内は隆起した地面により埋まり、ヴァーンも龍玉もそれに漏れず、埋もれていた。

だが、ヴァーンからしてみればそれは埋もれている、というよりも包まれていると言った方がいいと感じていた。

受精したら細胞分裂―――そして、産卵だ。

地震が起こり、地面が―――地球が割れ、大陸ほどの質量を優に越えているだろう巨大な卵が地上へ出た。ヴァーンもそれと共に地上へ出たが、優しく地上に降ろされただけだった。だが卵はそれにとどまらず、ひび割れた。パキ、パキ、まん丸の卵にひびが入っていく。

ヴァーンはそれを見守っている。

卵が完全に割れ、中からそれが見えた。

それは、亀だった。ゾウガメのようにのっしりとしているようでいて、ウミガメのように泳ぎにも適応しているような。それが見えたと思えば、瞬間に消えた。

いや、消えたのではなく、小さくなったのだ。

ヴァーンは落ちてくる少女…否。幼女を受け止める。それは人間の姿をしていて、どこか自分の面影があった。


「ありがとう」


ふと、そんな言葉が口から零れていた。だが、零れたのは言葉だけではなかった。ツゥ、と目から雫が流れる。心から、感動していた。


「お主が妾のパパか」


鹿威(ししおど)しのように落ち着いていて、風鈴のようにきれいな。そんな声がした。


「あ…あぁ、そうだ。生まれてきてくれてありがとう。名前を聞いてもいいか?」


天龍…アヴェスト・ジ・ユレイナスの時は感涙に咽ぶ暇も余裕も無かった。だから、こんなにも感動しているのだろうか。この幼女が人の姿をしているというのも理由の1つかもしれない。

幼女はその声で、言葉を紡ぐ。


(わらわ)は地龍。地龍ミレイユ・ランド・ヴィーナスじゃ」

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