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試練

「そう言えば、2人は転生者だろ?元の世界に帰りたいとは思わないのか?」


これはヴァーンが信短と合ったときからの疑問だ。てっきり元の世界に戻って天下統一をもう一度、と考えていたのかと思っていたが、そんな様子は微塵も感じなかったのだ。


「えぇ。私達の共通の認証では、前世を思い出しても今の自分は前世のものなのかという問いに、1秒もかかることなく否と言えます。前世は前世でしかなく、思い出したといっても前はそうだった…いえ、この魂の前の持ち主は、そうだったのか、という感じで、現世は現世と割り切っています。」

「そもそも俺と秀代、信短が同じ世界から来たとは思えないしな。」

「それは?」


とヴァーンは問う。しかしだいたいは予想をつけていた。まぁそれもウリエルからヴァーンがもといた世界…番外世界1番を元にした平行世界があるということを聞いていなければ予想すら出来なかっただろうが。


「俺がいた世界の、信短の前世、信長ってのはそうそうに殺されてるんだよ。」

「私の世界での信長は馬鹿で無鉄砲でした。」


なるほど、信長という人物はいたとしても、それは同一の人格を持っていたわけではなかったと。だいたい予想していた通りだ。


「それに、秀代の前世、秀吉は男だった。」

「私の世界での和将の前世、家康はそもそも人質でしたし」

「ついでにいうと俺の世界での秀代は女で、徳川の人質として連れてきた小僧を言うんだったら康正っていう暴れん坊だったぜ」

「うおっ!?」


とヴァーンは驚いた。対し秀代と和将は驚いた様子もない…というのは語弊があるか。慣れた様子だった。振り返ると目の前に、信短がいたのだ。


「あぁ、そうか。ヴァーン殿も神々に準ずる方だったか。ならば信、…信短の気配を察知出来なかったのも無理はない。」

「……」


実はもう人類に降格していて、ただ信短の気配に気づけなかっただけとは、言う必要がないから言わなかっただけなのだ。そういうことなのだ。


ただ、ヴァーンも人類に降格しているとはいえ、いまは竜人。蛇のピット器官に似たものがあり、索敵能力は高い…はずだ。ただ、信短の隠密能力が高かったというだけで。


「後少しで到着だ。あの山の真下、地下深くに原因があると俺は睨んでいる。その周囲の魔力濃度も桁違いに高い。強力な魔物が多く発生していると報告もある。気をつけていくぞ。」


信短が言う。俺は気にならないほどだったが、同行者の3人はそうはならないようだ。とくに険しい顔をしているのが秀代。魔力と深い関係があるからか、魔力の機微に敏感なのだろう。現に、乗り物酔いで吐きそうな顔をしている。


山を覆い尽くす樹海はまさしく、異様と形容するしかなかった。高い魔力を浴び続けた結果、木々は天高くまで伸び、果ては濃厚な霧で見えない。花は養分を摂ろうと獲物を狙い罠を張っていて、生き物どもはそんな罠を掻い潜らんと進化し、そんな生き物どもを捕らえんと罠を工夫する。そこは世界の縮図とも言えるほどに弱肉強食という言葉が支配していた。


そんな場所を俺らは迷いなく進んでいる。信短が斥候し、秀代が支援。和将は歌う。斥候は罠をあらかじめ排すという目的で。支援は言わずもがな。歌うというのは、濃い霧の中、信短に俺達の居場所を知らせるという目的がある。この濃霧には『眩惑』という権限があり、森への侵入者は仲間が敵に見えたり、見えるものが見えなくなったり、その逆にもなったりする権限だ。


歩き続けるとやがて、山の麓に着いた。確かに、魔力は山の地下から噴出し、龍玉の気配もそこからだ。その山を探ってみると、山頂に地下への入り口があるようだった。その入り口に向かい、入ろうとする。しかし。


「…?」

「どうなっている?」

「空間に何か仕掛けが?」


俺以外の者が奥に進めないようだった。何かしらの条件を満たした存在でなければ入れないということだろうか。とりあえず、信短達には待っててもらう。


「んじゃ、いってくる」


俺はそう言い、祠の中へ入ったのだった。




何もない通路をひたすら進んでいくと、神殿のような、そんな大広間に着いた。通路は山の中だけでなくシホン中を縦横無尽に喰っている。その先に着いた大広間は地下深く、マグマに届くかというところであった。

見渡せば龍の彫刻が所々にある。それは精巧な作りで、1本の大樹の周りを1体の龍が螺旋を描くように守護していた。

奥に進もうとする。

だが、どこからか声が聞こえた。


「何用か。我らが主よ」


ヴァーンはピタ、と足を止めた。


「否、分かりきっているか」

「その力を取り戻しにきたのだろう」

「道理だ」

「持ち主はもともと主にある」


声はそこかしこから聞こえ、順繰りに発しているのか特定はできない。ただ、ヴァーンは大体のめぼしは着けていた。


「だが我らは抗おう」

「我らが創造主のため」

「我らが王のために」


瞬間、ヴァーンの体に負荷…強い重量がかかった。

周囲に魔力はなく、吸収はできない。さらに、天龍アヴェストとの繋がりも阻害され、余分な力も使えない状態だ。

周囲の状況を確認してみれば大樹に絡まっていた龍達が皆ヴァーンを囲んでいた。大樹は蔓をのばし、バシバシと打っている。最後に目の前に出てきた龍の動く石像は一際大きく、力も与えられているようだった。



「さて皆のもの。我らが王の顕現のための時間稼ぎだ。―――王の親など、知ったことかぁぁぁぁぁ!!!」


戦闘が、始まった。

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