転生者の特権
ヴァーンが降り立ったのはシホンと呼ばれる国だ。大きさはやはり日本の10倍はあり、周囲を海が囲んでいる。日本の10倍ほどもあるのならいくつかの国に別れてもいいものだが、やはり織畑、豊村、徳海…おそらく信長と秀吉と家康だろうが、その3人が統一したのがシホンという1つの国だ。
街並みは木造で江戸時代風の建築模様。武器も刀を腰に下げていることから地球の文明を教えたのだろう。しかし魔法があるのも確かで、そこら辺はアルヴテリアにあった感じになっているか。
「ちょっとそこの竜人!どいたどいたぁ!」
「うぉ!?」
「っと!ふらついてんじゃねぇ!!」
「す、すまん。」
とかげのような生物を操る御者に怒鳴られ避けようとしたところをちょうど後ろを通りかかっていた灰の収集人にぶつかり灰を被った。いろいろと賑やかなようだ。
「すいませーん!これもう1つ!」
「お客さんよく食べるねぇ~毎度あり!」
ここは食事処。そう、日本といったら米だ。シホンにも米はあるのかと思ったらあった。しかも美味しい。やはりパラパラとした米よりも粘りけのある米のほうが日本人には美味しく感じるんだな。
「あ、これももう1杯!」
「あいよ!」
さて、情報収集といこうか。
ふむふむ。最近魔物が強くなって数も増えてきたと。龍玉のせいだな。最近娘が構ってくれなくて抱きつきにいっていると。自分のせいだな。最近米が高くなってきていると。龍玉のせいか?
広範囲の音を拾うのに集中していたせいか、ヴァーンは近くの音、状況の変化に気づけなかった。いつのまにか騒がしくなっていたのだ。そしてヴァーンはそいつが目の前に来たときにやっと周囲の状況に気づいた。全員が頭を下げて土下座をしているということに。
「おいお前。珍しい色をした竜人がいると思って見に来てやったらここのルールも知らねぇのか?」
「ん?」
いつのまにか俺の目の前に偉そうに仁王立ちした奴が立っていた。見るからに子供で、服のしたから下駄を長くして身長を大きくしているのだろうが、腕の長さと頭の大きさで子供だと分かる。しかし、気づくと周囲のみなはひれ伏し、俺だけ遅れて目をつけられているのだと分かり焦った。
「なんだ?ちびっこ」
「ちびっ…!?」
「あぁ!!お客さん…どうか神のご加護を…」
俺がちびっこと言った瞬間にひれ伏す全員の雰囲気が変わり、店のおばちゃんは神へ祈る始末。なにか地雷を踏んじゃったのか…
「へぇ…お前入国するときに注意事項があったはずだが、それを忘れたのか?それとも正規の手段で入国をしなかったのか。お前、きちんと入国手続きしたんだろうな?」
ギクッ…アヴールトーランから直接転移してきたから入国手続きはしてない上に注意事項の説明も受けてない…こんなことなら面倒くさがらずにやっとくべきだったか。
そうヴァーンは後悔する。しかしいまさら嘆いても過去には戻れないことは分かっているため、潔く諦めるヴァーン。
いまヴァーンができることといえば神龍化、転移、創造神の目、龍の感覚、一部権限上昇、使徒化、異空間が代表的だ。神龍化と転移はその名の通りで、創造神の目というのはアクセサリーの権限を見たように、自分以外の対象の能力を見ることができる力だ。龍の感覚というのは先ほどまでヴァーンがやっていた広範囲の音を収集するなど、龍の身体的能力が使えるというもの。一部権限上昇というのは心臓に悪い竜人につかったように運気を上げるというような身体的に影響がない権限が対象だ。使徒化というのは、ヴァーンは何気なく対象者に危険が及んだら知らせがくるという感覚でつかっているが、その全貌はヴァーンも知らない。ちなみに、この能力はセラスにも使っている。異空間というのはヴァーンが剣をしまっているように自身が所有する異空間を自在に操る権限だ。
や、やべぇ。完全に裏目にでたな。転移して逃げるか…
「ちなみにお前、常識では考えられないことだが瞬間移動や転移のような一瞬で姿を消すようなことをやったらシホン中に御触れを出してこの国にいられなくするからな。」
なんだと…!?か、完全に退路を絶たれた…しかし妙だな。まだ転移や瞬間移動等は人外の領域のはずだ。それをさも当たり前に人類ができると思っているこの子供は…
名前『織畑 信短』
位『最高位』
種族『混血:アルヴヒューマイクス(先返)』
権限『耐久力2』『耐性7』『筋力1』『話術4』『威圧7』『魅了8』『再生6』『夜目8』『忍び足6』『孤独7』『目利き』『農民』『天才6』『忍者9』『酒豪10』『上に立つもの』『真祖』『転生者』
上位権限『第六天魔王』
な!?こいつ、信長…いや、その子孫っていう線も…む?転生者ってことはやはり信長か!!
「ん?いまお前なんかやったな?たぶん。悪寒の原因がお前だったらだけどな。」
こいつ…!分かるのか!!…世界にはそういう奴もいると早めに知れてよかったかもしれないな。
「頭ん中で考えてないでいい加減なにか喋ってみたらどうだ?それともシホン語は分からないのか?」
「い、いや。理解できるし喋れる。しかし、どうして3武将のうちの1人、織畑信短様がこんなところに?」
「お前…頭を下げないのか?いや、いい。面白い。お前うちに来ないか?」
「の、信短様!!」
「良い良い。頭を下げなかったやつは久しぶりだ。こいつと少し話してみたいんだよ。」
こうしてヴァーンは信短によって街を見通すほどの城…の庭の小屋へと案内されたのであった。




