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決着、

「こ、こは…?」


ヘイルが戸惑ったように周囲を見回す。周辺には生い茂った草しかなく、おそらく空間魔法だろうが、浮かぶ大地は広大で果てが見えない。そんな大陸に、小さな点が3つ。


「ここはアヴールトーラン。お前ら信仰龍教が熱望していた空に浮かぶ大陸だ!」

「ここ、が?ここが……この大陸がそうなのか…!!我らが渇望し、我らが信じた龍人たちの国が!!…しかし、龍人は…?」


ヘイルが大袈裟に身振りを交えて声を上げる。


と、ここでアヴくんがピクリ、と反応した。いい加減、堪忍袋の緒が木っ端微塵になるところだったところに、思い込みで龍人の国があるされ、アヴくんにとってはゴミ以下の存在を捧げられそうになり、果てには間抜けな姿と言動でアヴールトーランを侮辱されたのだ。プライドの高い貴族で例えるなら、下民の家に住み着き廃棄物を漁る溝鼠(ドブネズミ)が王家直系の血をひく公爵家に住み着きたいと、すこし良いものを食べてるだけの同じく汚い溝鼠の首を捧げられると言うところだろうか。さらにはその溝鼠は、公爵家には公爵の血を引く鼠が暮らしていて、国を作っていると盲信し、その一員になりたいと懇願している。不敬にも程があるだろうと、貴族のなかでも最高位の公爵は考えるのではないだろうか。一発で皆殺しだ。それに対し、アヴくんはまだ寛大だろう。王に言われ溝鼠と同じ食べ物を食べ、それを美味しいと感じ、まだ選択の余地はあると考え直したのだから。


「家畜風情が…いいか?お前が今、どういう存在を前にしているのかを教えてやる!!」


そう言いアヴくんは空間をさらに拡張し、自身も最初に会ったときと同じ…いや、それ以上に肥大化させる。周囲は極大の魔力の嵐で吹きすさび、地上だったならば建物は大地から引っこ抜かれ、上空を飛んでいたであろう。大地が文明の欠片もなく更地になっていたであろうことは言うまでもない。しかしそれも、龍種にしてみればただ存在するだけで起こり得るのだ。漏れでた魔力を俺に流してこれだ。ただ、なんの意図もなく動く、という何気ない行為でさえ人類を滅亡に追い込む。それが故意的にもなればオーバーキルにも程があるというものだろう。その力の奔流を間近に受けて辛うじて立てているのは流石竜人の王といったところか。


「な…な…」


これが驚愕のあまり言葉が出ない、の例だろうか。それとも、恐怖のあまり言葉が出ない、の方か。どちらにせよ、自身が狂信した存在が目の前にある驚きと、存在するという確たる証拠とその存在を最初に目にできた喜びと、そんな存在に知らないにせよ無礼を働いたこと。そして人類とは隔絶された上位存在の威圧感と敵意を向けられる恐怖。様々な感情が胸中に渦巻いているだろう。


そして、気づけば周囲をおびただしいほどの数の高位竜たちが囲んでいた。…口に火球を含んで。


「っ!?」


ヘイルは一瞬で戦闘体勢にはいるが、それも意味がないと諦めたようで、すぐに絶望した表情で戦闘体勢を解く。1体で1国を落とせるほどの力をもった高位竜が見渡す限りにいるのだ。…アヴールトーラン!全竜と言った瞬間アヴくんを止めてよかったと思う。


そして、今度は顔を真っ青にしてヘイルが膝をつく。アヴくんが俺を龍神だと言ったことを、アヴくん自身が最高位龍種だということで信じたのだろう。ここら変が潮時か。


「ヘイルヴァウパー・シンセ=リディル。俺はリディル国を潰そうとは考えていない。ただ、その狂信的な信仰に他者を巻き込んで、俺と親しい人間(・・・・・・・)を生け贄に捧げようとするお前が目障りだっただけだ。以後ーー気を付けろよ?」


威圧的に言った俺の言葉に疑問を持ったのか、ヘイルは困惑した顔で俺に問いかける。


「生け贄の人間…まさか、龍神様が我ら人類ごときと交流を?」

「お前がそれを知る必要はない。分かったのなら今後不用意なことはするな。」


俺と天龍アヴェストはその言葉をきっかけにし、ヘイルを地上へ戻したのであった。高位竜達はふっと消え、天龍アヴェストはアヴ君になり、今回の目標は達成した。


「この後はどうしますか?」


セラスを迎えにいくかどうか、それとも今後の予定か。アヴ君はきっと、2つの意味を込めて聞いたのだろう。


「あぁ、そうだな。アヴ君はどうするんだ?」

「僕は一応ここの王なので、国を作らないといけません。ですのでずっと一緒にいられるのは終わりです。」

「そうか…そうだったな。なら俺は他の龍玉を回収しにいくよ。」

「いいのですか?」


これは、セラスを迎えにいかなくていいのか、という質問だろうか。アヴ君も人間に気を使えるようになったということだな。


「あぁ。」


これ以上関わってもお互いのためにならない。おそらく俺なしでもセラスは綺麗に生きるだろう。だから俺というイレギュラーは近づかないほうがいい。せめてでも裏からささえてあげるということで十分なはずだ。


そう、俺は次の目的地へと向かうのだった。

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