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セラスのその後

短めです。

31話


ヴァーンと離れ用を足した後、見知らぬ竜人が5人ほどいて、遠ざかる。私はそれを迎えだと確信し、おとなしくついていく。

もともとこういう贅沢も許されない身だったのだ。それが、たまたまヴァーンに会って、たまたま優しくしてもらって。私は国のために身を捧げる。

私の体、命だけで1つの国が救われるのだ。これほどの…贅沢、は、ない……なんで?なんで今なの?あと4時間もすれば日は暮れるのに。まだ約束の日まで時間もあるのに!王族は国民を守る義務がある。お父様にずっと言い聞かされてきたこと。でも、なんで?なんで私なの?まだやりたいことなんていっぱいある。1日中ごろごろして寝てみたい。釣りもしてみたい。弟妹といっぱい遊びたい。行きたいところなんて数えられない。恋もしてみたい!…ヴァーンのおかげでやりたいことの1つ、空を飛びたいは叶った。だからかな。これ以上贅沢はしちゃだめって神様が言ってるのかな。怖い…怖いよ…死ぬのがこわい…戦争で兵をたくさん殺した。その責任は王族にある。でも、でもでもでも!なんでファランなの!?なんでリディルは戦争を仕掛けてきたの!!平和だったのに!平凡だったのに!ずっと続くと思ってた平和も…一瞬で砂のように手から溢れ落ちて…神様がそんなに大事?神様がいるなら私も救ってくれるんでしょ!?神様のために人が不幸になって!!神様のために戦争をして!!…ヴァーンは龍神を信じてみろと言った。…信じられないよ…信じたらこんな気持ちも救われるの?それとも信じきれないから救ってくれないの?教えてよ龍神様…教えてよヴァーン…


「嫌だ…まだ、まだ死にたくない…」


そうこういてるうちに馬車についた。

もう、逃げられない。逃げたら弟も妹も、兄様も姉様も、お父様もお母様も国民も殺される。もともと引けなかったのだ。そういう運命だったんだと割り切らないと……できる、はずがないじゃない……


「乗れ」


短い言葉。決心もできていない。だけど、裏切れない。行かなきゃ、いけない。



着いた先は王宮地下牢。そこには他の生け贄もいた。みんな、泣いている。私のような少しの贅沢も許されなかったのだ。私は泣けない。泣いちゃだめだ。


「大浴場に行き身を清めてこい。」


私たちは兵の案内に従い、大浴場にいく。王宮地下牢には見張りはいない。

大事に育てられた王族の上に女なのだ。逃げたところで何もできないし、王族だから逃げたらどうなるかは分かっている。だから泣くしかない。


「どうして…どうして…神様…」


そんな声が聞こえる。この中には神様を信じる人もいるのだろう。しかしそれは龍ではない。それぞれ別の神様に救いを懇願している。大浴場には私たちしかいないから、タガが外れやすいのだろう。

私は黙々と体を洗い、湯船に浸かる。

昨日のお風呂は気持ちよかった。けど、今は違う。生きた心地がしない。…あはは、生きた心地なんて、リディルに向かうときからしてなかったじゃない。いや、戦争を仕掛けられたときからだ。ヴァーンの影響で忘れてただけだ。どうせならモンスターに襲われたいって思った。けど、何にも遭遇しなかった。


「あ、はは…」


力ない笑いは嗚咽の声に掻き消された。




そして当日になった。けど、私は戸惑っている。なにせ聞いたことと違う。地下牢を進み教会に行くはずだった。そこで目隠しをされて聖歌隊の歌を背後に首を切り落とされるはずだった。なのに、馬車に詰められ移動した先は闘技場。

意味がわからない。昨日はたくさん泣きそうになった。けど泣かなかった。夜は覚悟を決めた。国民の命を守るんだ。兄弟姉妹の命を守るんだ。お父様お母様、お爺様お婆様の命を守るんだ。私1つの命で。…ほんとはそんな事どうでもいい。どうでもよくないけど、違う。ヴァーンの好意を無下にはできない。短い間だったけど、それほど影響したのだ。だから、その好意に報いるように死のうと。

そう決心したことを思い出して、前を見据える。他の生け贄達はすでに絶望して何も話さない。違いなんて些末なことだ。死ぬことに変わりはない。

…ふと、足音が聞こえてきた。聖歌隊だろうか。目隠しをする竜人だろうか。斬首する竜人だろうか。さまざまな考えが頭に浮かぶけど、足音が5人分なのが気になる。生け贄は私を入れて6人。1人足りないのが分からない。

なんだろう?と顔を向けて見てみると-しょんぼりした顔をして綱を引かれて歩いているヴァーンと両足を縛られ棒に吊るされた幼竜が見えた。


…え、えぇ~~~

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