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天龍顕現

27話


「…ふんっ。所詮勇者といってもこの程度か……くそ、今度こそは全身全霊を懸けた良き闘争ができると思ったんだがなぁ……もう少し手加減してやれば遊び程度にはなったのだろうか。蒸発してしまっ-」

「たといつから錯覚していた?」

「っ!?」


ドラクが驚いて身を翻した。


いつもなんでラスボスはこういう時に攻撃しないのかと思っていたが、強者ゆえか。いまなら理解できる。


「なっ…お前!死んだと思ったぞ!!どうやって耐えたのだ!!」


さっきまでは悲しそうにしていたのに、いまではこんなにも嬉しそうに聞いてくる。どうやって耐えた、というのもただ転移しただけだ。


「転移しただけだ。」

「転移もできるのか!これは…これは楽しくなってくるぞ!!俺の全身全霊をかけて挑ませてもらう!」


闘ってみてもしかしたらと思い、この一言で分かったことがある。竜種というのは魔力に反発している種だということと、周囲の魔力を吸収し使えば使うほど力がはね上がることだ。言ってしまえば、戦えば戦うほど強くなっていく。しかし全身全霊というのは文字通り全身全霊で、この閉じられた空間では魔力がすぐに減って膨大な力を維持できなくなり、やがて崩壊する。だから、俺はこいつを殺さないために一瞬で終わらせなければならない。形態なんて関係ない。本気で。そう、文字通り全身全霊だ。


「あぁ。こいよ。一瞬で終わらせてやる。」


周囲の魔力濃度は43。ドラクは最初の57倍の力を得ていると考えられる。こんなにも一気に濃度が下がったのは、俺が一気に吸いとったからだ。


「形態解除。龍神形態。」

「いくぞ!炎化、オーバードライブ―」

「落ちろ、ドラク。そしてひれ伏すがいい。」

「―!?」


俺の望むことはこの世の理そのもの。一時的にアルヴテリアへの干渉権を得た俺はそれを使い理を創造する。


第17階層、じっちゃんのところまで床を突っ切って落ちるドラク。床が抜けたおかげで周囲の魔力濃度は74まで上がった。どうやら階段に細工があったみたいだ。


「この気配…原…初龍!?かつて鱗を見たことがあるが、その時と同じ気配!!」

「ふぉっふぉっふぉ。どうじゃ、久しぶりにわし以外の存在から落とされた気分は。未熟よのぉ。お主、こやつが原初龍だと気づいてなんだか。わしの体を隅々までマッサージし、1000年以上は若返らせたこやつは、わしに力を加えられた時点で頂きの存在だと分かりきっていたこと。」

「げっ!?じっちゃんを1000年も!?」


え、あれ比喩じゃなくて本当に1000年若返ってたの?しかもなに、力を加えられた時点で?なにこのじっちゃんつおい。


「従者は言っておったのじゃろう?勇者が力を取り戻しにきたといっておると。言葉の通りだったのじゃよ。しかし原初龍じゃと気づけなかったとても、気配でわかるじゃろうが。力が著しく低下しておっても、気配というのは千差万別。我らが上位存在の長たる最高位龍種の気配くらい感覚でわかるじゃろうが。しかしそれでもわからんという輩がおるから鱗を見せてるというに…その上命まで助けてもらっておる。これはもう特訓が必要かの。」

「ひっ」


心底恐怖に震え上がった顔で悲鳴をあげるドラク。正直唖然とした。


「すまんのぉ原初龍よ。老い先短く凝り固まったわしの体をほぐし魔力を入れる機能を改善しとくれたおかげで1000年…いや、2000年は若返ったわい。まぁ寿命からなんで人間でいうと…5歳くらいかのぉ…」


そう言われるともっと若返らせたくなるじゃないか。


と、じっちゃんの体構造で不要なところを解析…するとほとんどの部分にガタが来ていて、魔力が循環していないのが分かった。俺はじっちゃんの体構造を複製し効率化、それをじっちゃんの体だと世界に認識させる。残った体は異世界にポイッ。


「お…おお!生まれ変わったようじゃ!!全盛期の少し前…いや、これは生まれ変わる、じゃな!産まれる前の胎児の状態か!!!少し無理をしてもすぐに再生するわい!!これぞ神の御力…」

「なん…てことを……」


あ、ドラクが絶望した顔でわなないてる。


「して原初龍よ。こんな所で油を売っておって大丈夫なんか?そろそろ生まれるころだと思うのじゃが。」


ん?どういうことだ?


「分かってて急いだわけじゃないのじゃな。もうじき我らが王が生まれるのじゃ。じゃから竜たちが集まっておったのじゃが…そんなときにお主が来ての。」


と聞いたとたん、空間が悲鳴をあげた。比喩ではなく、空間が歪みうねり、それが音をたてているのだ。


「来おったか。」


その波動の中心は上…第20階か。向かうとするか。


形態変化、竜人。




波動はやはり瑠璃色の玉…龍玉が起こしていた。近づこうとすると、気づいたら後方にいる。おそらく空間の歪みが原因だろう。


突如龍玉が消え、中の卵だけが残ったと思った途端、ピキリと(ひび)が走った。


「うおっ!?」


瞬間、空間が一瞬にして膨張。それに驚いた瞬間―


「グオオオオオォォォォォォ!!」


と咆哮が。その咆哮の方を見ると、アルヴテリアの半分を1枚で覆えるかというほどの腕状の翼を1対、少し小さい翼を1対ずつ備え、さらにその背後に光輪という俺よりも神々しい竜がいた。


「うわ、大きい。ちょっとまって下さい、お父さん。」


そして思ったより性格厳つくないっぽい。

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