2日目の冒険者区域で1
「よし、準備できたぞセラス。」
「そう。私も忘れ物はないわ。ちゃんと指差し確認したし。」
「転移はなるべく安全にできるようにしたから安心してくれ。」
「どうやってやったの?魔法って安全に、とかの調整ってできるのかしら…」
「そんじゃ、転移、と。」
一瞬で景色が変わり、視界いっぱいに青い空…薄暗い空?雲は遥か下方。ということは…現在座標確認。うっわ、ここ地上180kmだ。ということは大気圏ギリギリじゃね?地上8メートルのところに設定したんだが、今度は20倍の高さ違いか。下じゃなくてよかった。
「ヴァーン…少し寒いわ。」
「すまんミスった。」
セラス周辺の温度を24度にし、運動力魔法で向かい風を調整。魔力で翼を生やし、いざ飛行!
「ねぇヴァーン、あなた羽なんか生えてたかしら?それにこれ、嫌な予感しか-」
「ひゃっほう!」
セラスを抱え、翼をたたみ落下。
「ひっ…きゃぁぁぁぁぁ!!?」
体勢を立て直すために翼を広げ羽ばたき加速し、翼で体を包み急降下。摩擦を無くすと簡単に音速を超えることができた。
「ヴァーンどうなっているのこれ!?ぶつかるわよ!?」
「まぁ後々のお楽しみだ。」
「後々って、死ぬ未来くらいしかないんだけど!?」
よくよく思い出してみればセラスも最初は態度が硬かったが、軟化してきたよな。
一気に高度10kmまで下り、雲を突き抜けたところで翼を広げる。しかし勢いはまだ衰えないので、翼を大きく羽ばたかせ、運動方向を下から横にし、王都東側へと向かう。
「わぁ、これは凄い景色ね。過程はともかく、いい眺めだわ。ほらヴァーン!あそこに飛竜がいるわよ!あれはおそらく高位飛竜ね。あれ1体だけで国が1つ滅べるわ。家も埃みたいに小さい!見て!人がゴミのよう!」
「セラス、そのセリフはいろいろ危ない。」
リディル王国王都は広大な面積をもつアルヴテリアの大国らしく、広々としている。王都の地図を見たときに、それぞれの区域が三角形になっていたのは王都全体が四角形だと思っていたのだが、その実四つ葉のクローバー状だったわけで、この豪快な土地の使い方には驚いた。
「ほら、見えてきたぞ。」
「えぇ。終わるのは残念だけど、だからこそ楽しいものよね。忘れてしまっていたけれど、まだ朝食を食べにいく途中だったのよね。どこにいくのかしら?」
「冒険者区域らしい豪快な店だが、味は保証されている。そんな店だ。」
「それは楽しみね!行きましょう?」
冒険者区域のすぐそばに降り立った後急ぐセラスに俺は哀愁を覚える。それはおそらく、沙梛と香奈を思い出してのことだろう。二人は今何をしているのか。セラスの笑顔を見ていると、そんなことを考えてしまう。力を失う前に一度未来視を使ったが、二人のことは見えなかった。ウリエルはまだその未来がないからだと言っていたが、高位以上の龍種は多次元時空同一存在で、俺が存在している限り未来は確立されているはずなのだ。しかし、なぜ多次元時空同一存在にもかかわらずその未来が見えなかったかについてはウリエルも分からないと言っていた。
「ほらセラス、そんなにはしゃぐと転ぶ―」
「ひゃっ―」
「…言わんこっちゃない。大丈夫かセラス?」
雰囲気は大人びていても、やはり年相応なのだろう。それに今まで生け贄だのなんだのと、状況が状況だ。張り積めていたことを忘れているのなら、俺がこうしていることは間違いではないと思うことができる。
「えぇ、大丈夫よ。ちょっとはしゃぎ過ぎちゃったみたい。」
「ったく…何歳だよ。」
「今年で16よ?」
「まじか。」
てっきり19くらいだと思っていたんだが。王族だからか、やはり雰囲気が大人びている。
「痛みはあるか?」
「それくらい自分でなんとかできるわよ?だてにひとりで旅なんかしていないわ。」
「そうだな。それじゃいくか。」
「えぇ、すっごく楽しみ。だってヴァーンがあんな移動の仕方をするくらいなんだから。」
「はっ、俺も食ったことはないんだがな。」
それでも俺の今使える全能力をもってして冒険者区域で一番上手いレストランを選んだからな。まぁ今回は朝食、ということもあって控えめなメニューだが。
「ここだ。」
「…ねぇ、こういう店って人気なんじゃない?それに朝に重いもの食べると…」
「大丈夫だ、問題ない。」
不安がるセラスを連れ、店内に入る。そしてすぐに接客が入る。
「ヴァーン様ですね。準備はできています。こちらへどうぞ。」
とまぁ事前に予約しておいたのだ。
「何時の間に…といっても、準備する時間があったわね。」
本当はその時じゃないんだけどな。だって落ちてたんだし。日の出の前、目的地を絞りこんでいた時に予約しておいたのだ。何か問題があればすぐにほころびが出るほどに綿密に組んでおいた予定だ。朝は少し支障が出たが、早めに行動していたから問題ない。しかし、今の時間は予定通り。この後に問題がでないことを願うばかりだ。
「ご注文されていた品物です。」
出されたのはサンドイッチ。しかし、そのどれもが厳選された素材だということがみただけでわかる。野菜のみずみずしさで取れたてということがわかり、少量の肉は艶がありとても良い匂いを醸し出している。全て一口サイズで、バリエーションは10。朝のあまり入らないお腹にちょうどよく、満足して食べられる。
「豪快と聞いていたからどんなものかと身構えていたけれど、朝にふさわしくそれほどの量でもないし、飽きないから食欲がなくても食べられるわね。とても良いお店だわ。」
「そりゃ良かった。」
その後、ゆっくりと食べながら今後の大まかな予定を聞かせるのだった。
「ん、美味しかったわ。次はどこへいくのかしら?」
「まずはここでの冒険者ギルドを見に行く。」
「どこかは分かるの?少し不安だわ。」
「あぁ、きちんと地図を把握しているからな。」
以前のように迷ったりはしない。なぜならアルヴテリアの地理は掌握済みだからだ。
「さぁ!俺についてくるが良い!―
―って言ったのは誰だったかしら。」
…はい。調子に乗りました。今のところ予定に狂いがないのは、セラスが一度地図を見たいといったので創っておいた地図を渡して出発したからだ。地図を渡していなかったら冒険者ギルドを見つけるのに半日はかかっていただろう。だって、向かう方向が違かったのだから。
「結局私が先導するんじゃない。まぁいいけど。」
「悪いな。ここがファラン国最大の冒険者ギルドだ。」
「知ってるわよ。というか案内したのは誰だと?」
「はい…セラスさんです。」
「正直でよろしい。」
これでは俺の立つ瀬がないな。まぁいつものことか。
「ここには歴代のSランク冒険者の肖像画がある。」
「ということは魔王様もいるのね!」
「そうだな。まぁ入ってみるか。」
すいません、忙しくて遅くなりました…この後も更新が遅れたり延期することがあると思うので、気長にお待ちいただけると幸いです。




