3大宗教と方針
さて、神龍に成る方法が分かったのはいいが、成ったときに問題があるな。龍神のときの力と神龍のときの力は全くの別物と考えなければならない。まぁ極端に考えるなら龍神は創造神、神龍は破壊神と考えればいい。神龍になる場合はよく考えないといけない。アルヴテリアの位置は時を戻した後に元の位置に戻り結構遠ざかったのだが、神龍になったとき、気づいたら残り100kmのところまで来ていた…というか現在進行形で来ている。一応、龍神の力で重力は押さえて緩和しているが、どうにも俺の質量が乗っかって空間に歪みが生まれている。龍神の力だけで神龍の力が抑えられなくなったとき、空間に亀裂が入った時がタイムリミットだ。
「アルス。どうしたんだ?」
おっと、ドレークのことをすっかり忘れてた。そういえば正体聞かれた時に格好をつけようとしてドジって神龍の力と均衡していた龍神の力が下がったんだっけ。龍神の力がそのままだったらたぶん、重力も意識をしなくとも抑えられていたんだろうな。
「いや、なんでもない。それで、願いとはなんだ?」
話している間にも龍神の力は減っていっている。その消耗を抑えるために、再度力を反転。龍神形態へと戻る。
「また変わったか…まぁいい。リディル王国現国王は今や乱心した狂信徒だ。周辺国も我が国も疲弊しきっていて、もはや手に終えない状況だ。この状況を脱するには龍教か王を変えないといけなくなる。」
またダサい名前の宗教だな…
「龍教って?何を信仰してるんだ?」
名前からして龍を信仰するっぽいが。
「龍教の信仰の対象は竜の上位存在となる龍種だ。生前に龍種の試練を達成し力を限界まで極め、死後、極めた力が魂に宿り龍種に転生をするという救済。強者の血や肉を体内に取り入れるか身に浴び、肉体を昇華させ龍種に至るという思想。そして龍種に生け贄を捧げ続け、龍種が生まれ住まう土地へ誘われるという信仰。最後に、龍種を絶対的とし、畏怖と崇敬の念を込めひたすら祈り続ける崇拝だ。最後は人間の信者が多いな。」
…1つの宗教にもいろいろあるんだな。それにしても龍、龍、龍って、アルヴテリアには俺以外に龍種はいないはずだが、なぜ龍は竜の上位存在だと…
「なるほどな。そういえば大陸が浮かんでいるだけで、なぜその浮かんでいる大陸が龍人の国になるんだ?」
今のアルヴテリアで空を飛べる手段は限られているはずだ。飛竜に乗せてもらうか、魔法で飛ぶか。そして魔法で飛ぶ手段より飛竜に乗せてもらう手段の方が現実的だ。飛竜を調教して言うことを聞かせればいいし、その前に卵を盗んできて育てればいい話だしな。まぁ飛竜を調教出きるならの話だし、卵も盗めたらの話だ。
「7年前、天空浮遊せし大陸、龍の王生まれり。龍の王、浮遊せし大陸統治せりという神託を信仰枢機卿が授かり、大陸全土に広まった。初めは空飛ぶ大陸なんて誰も信じなかったが、6年前に空飛ぶ大陸が突如出現してからその噂がだんだんと信じられてきた。空飛ぶ大陸のこのままの動きからすると、2週間後、空飛ぶ大陸はリディル王国の真上を通過する。空飛ぶ大陸が通過する際に生け贄の儀式を行えば空飛ぶ大陸に誘われると王は考えている。その生け贄に、純潔で高潔な若い女の生け贄がふさわしいという理由で、周辺国を攻め、純潔の王女を要求したわけだ。」
「なるほどな。」
正直そんな生け贄いらないんだが。生け贄側はとんだとばっちりだし、はっきり言って、もらう側も迷惑だ。それに、こっちの知らないうちに勝手に生け贄捧げられて答えなければいけない雰囲気を作られても生け贄を捧げられたことを知らないんだから答えられるわけがない。
「そういえば龍種って、俺以外にいないはずなんだが、どこでその存在を知ったんだ?」
ずっと気になっていたんだよな。俺は龍形態で地上に姿を見せた覚えはないし…ドレークの屋敷でサイズは違うけどまぁ降り立ったが、それもついさっきだ。地上には龍種はまだ発生していない。どこで龍種の概念が生じたのか、不思議なのだ。
「あぁ、龍教は太古から存在していてな。伝承では夜、空を見上げれば金色に光る月と青色に光る龍が夜を照らしていたとある。月と龍が夜の番をしていたと言われていて、感謝と畏怖から龍教が生まれたわけだ。アルスの姿を見ればその瑠璃色に光る龍がアルスだと分かるが。」
うっわぁしくじった!宇宙空間にいれば大丈夫だろうと楽観してたのが間違いだった。太陽の光が反射して地上からでも俺が見えていたのか!しかし、なんでセラスは知らないんだ?俺が時空転移前にいた時代の宗教だろ?そんなに古いなら、セラスにも知られているだろうに。
「まぁそれは龍教の発祥の元で、いまでは龍だと思われる生物はいるぞ。」
「そ…そうか。しかし、セラス…生け贄は龍教のことを知らないみたいだったが?」
「宗教に関して、この世界では大きく分けて4つに分けられる。龍教、ディーヴェス教、メレリー教、無信者だ。龍教はさっきも説明した通り龍を信奉する。ディーヴェス教は原初と終焉を崇め、天地創造をしたとされる神、ヒュール。世界に終焉をもたらすとされる神、エグナを主神にしている。メレリー教は地神、炎神、海神、嵐神の4柱を主神とし、それぞれ崇めている。メレリー教には4つ教派があり、それぞれの神を信じる派閥のトップを立て、信仰しているわけだ。おそらくその生け贄は無信者なのだろう。国にとっても宗教というのは政治の都合上、良くも悪くも密接に関係がある。その生け贄の国は宗教については自由なのではないだろうか。無宗教の国の箱入り娘。あまり外界のことにも触れていないのだろう。」
この時代だと宗教というものは必要不可欠なものだと思っていたが…賢者と魔法がある分、必要のない部分もあるんだろうな。
「他に何か質問はあるか?無いなら俺は早く寝たいんだが。」
「あぁ、とりあえず生け贄達については俺が王に勝てばいいんだな?」
「それで止まればいいんだがな…王が止まらなかったらどうしようもない。」
「そのときはなんとかするさ。」
ドレークを地上に戻し、俺は思案する。
今日の東部での動きについてだ。セラスは最初に観光、次の日は冒険者の仕事…冒険をしたいと言っていた。東部の地理を頭に入れるためにアルヴテリアの地理を把握しておいてよかった。いちいち規格外で細かい調整が出来ないのが難点だが、今回はそれに救われた。これからは世界中を回って龍玉を探さねばならないからな。
一瞬だけ力を反転させ、龍玉の座標を把握する。
ふむ…宿を現在地とすると、1つは極東の列島。1つは深海。1つは地核?1つはゆっくり移動している。このままの軌道で行くと…リディル王国?これはもしかすると、空飛ぶ大陸…浮遊大陸にある可能性が高いな。ここら辺はまだ楽だが…1つはどこにあるかわからない。反応が凄く微弱だ。反対に、別の1つは存在を誇示するように反応が強い。しかし、どこにあるのかは曖昧だ。どちらの反応も霧のように霞がかっている。最後の1つは座標が掴めない。こっちにあると思いきや高速で移動したり、高速で円を描き出したり。最初に回収すべきなのは近づいてきている浮遊大陸の龍玉だな。
今後の目的を定めた俺は、明日、セラスをエスコートするに当たって訪れるであろう絶景スポットや店を絞りこむのだった。




