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1日目の夜 4

「美味しかったわね。」

「あぁ、それなりに量があったしな。」


コース料理って、フルコースともなるとそれなりに量があるんだな。


「ねぇ、明日はどうする?」

「あぁ、王都東側にいきたいんだっけ?」

「えぇ、明日は観光、明後日は冒険者の仕事を見に行きたいの。」

「冒険者の仕事か…低位竜討伐で俺も準Aランク?って奴になったから、できることも増えたんだよな。」

「えぇ。腕も保証されているから報酬もすこしだけ上がるし、指名の依頼も来やすいわよ。」

「やっぱりあるのか、指名。悪どい貴族とかにやられたらいやだなぁ。来ないといいな。」

「えぇ、そうね。」


ある程度の地理は把握しておくか。


「さて、と。私は先にお風呂に行かせてもらうわ。」

「あぁ。俺もいってくるぞ。」

「わかったわ。それじゃ、またあとで。」


セラスと別れ、俺も風呂の方向へ。


「ふむ。竜人の国の風呂って、結構大きいんだな。」


縦30m、横50m、深さ1.4mってとこか。とりあえず体洗って、と。さて、湯船にいくか!


「はふぉ~…」


うわっ、つい変な声がでちゃった。久しぶりの風呂だし、ましてや温泉だかんな。さて、東側の地理を頭に入れて、と。あ、そうそう、言語情報も頭にいれて…完了、と。ついでに日本出身の転生者の冒険者も探しとこうか。なんか特殊能力っていうか、権限もってたりするかな。記憶持ちか記憶持ちじゃないかも分けて、と。風呂あがったら尻尾の切れ味でも試してみるかね。


「おい、そこの青色の鱗した奴。」

「ん?俺か?」


話しかけてきたのは身長2メートル半くらい、緑色のした鱗を持つ竜人視点では結構イケメン?な竜人だ。


「あぁ、お前だ。地上に住んでいる竜人としては珍しい色だが、なんて種なんだ?」

「あぁ、それがわかんないだよな。」

「そうか。尻尾のそれは付けているのか?」

「いいや、生まれつきだ。」

「ほう、俺はドレークだ。お前は?」

「ヴァーンだ。」

「ヴァーンだな。話し相手になってもらえて助かる。」

「いいさ、俺もやることは終わったしな。」

「お前は冒険者なのか?」

「あぁ。ついさっきまで冒険者にもなっていない身だったがな。」

「ほう?そんなやつがこの宿に来れるとなると…どこかの貴族か?」

「いいや?高報酬の依頼を達成したんだ。」

「なるほどな。実力者の方だったか。それにしてもこの国も今の王になってから栄えてきたよな。」

「そうなのか?俺はあまりこの国に詳しくなくてな。」

「あぁ、竜人は昔からの風習というかな、王になるには力が強くないといけない。現国王もこの国最強だぞ?まぁお前も竜人だから地元でもそうか。現国王は王国の兵力を底上げし自身の力もあわせて周辺国に攻めてったんだが、知ってるか?」

「いや、知らんな。」

「結構有名な話なんだがな…そこで敗戦した国の王族の王女を供物として捧げろって話でな。」


っ!そうか。セラスがそうなのか…偉い奴だとは思っていたが、まさか王族とは…


「2週間後に王城の地下にある祭壇にその首を捧げ、神に国の繁栄を祈るんだとさ。」

「なっ!?」

「だからお前、あの人族のやつを変に庇うなよ?供物なんだからな。」

「ほぅ?そりゃご丁寧にどうも。」

「あぁ、そんじゃ、またな。」


ちっ、そういうことか。俺に接触してきたのはセラスに、そして俺に下手されないように、ってことか。…いやまて。なぜただの竜人がそれをしっている?あいつ、それなりに高い立場なんじゃないのか?王城の地下にある祭壇なんて普通知るもんじゃない。それを俺に伝えた目的は…セラスの…いや、供物の保護か?…わからん。たしかドレークと言ったな。調べてもう一回話してみるか。


「…そろそろ上がるか。」

「あ、そうそう。俺、ザーヴァントっていう辺境伯だから。気が向いたらこいよ。歓迎するぜ。」

「うわっ!?」


くっそ、久しぶりにびっくりしたぞ。



「ふぅ…」


身を清め、お湯に浸かる。温かいお風呂なんて久しぶりで、体に染み入ってくる感覚がとても心地いい。


「ほんと、悪いことをしちゃってるよね…私。」


残り2週間ぽっちの命を全力で楽しむために、あったばかりの竜人に苦労した成果だろう討伐報酬をつかわせて。もし、本当に神様がいて、輪廻があるんだとしたら、次生まれてくる時は恩返しができるといいなぁ…あのちょっと抜けていて、でも頼れる竜人に。せめて迷惑をかけないように死にたいなぁ。


やりたいことを整理し、無理だと分かるものは削ってく。これでも幸せなのだろう。他の生け贄にはこんな贅沢も赦されていないのだから…



「お、おかえり。風呂上がりに何か飲むか?」

「それじゃ…ワインを。」

「酒か…ほらよ。」


風呂上がりに酒っていいイメージは無いが、まぁグラス一杯くらいなら大丈夫だろう。


セラスは椅子に座り、ワイングラスを傾ける。濡れた髪が艶やかで、セラスの優美な雰囲気をさらに向上させている。風呂上がりでゆったりとしたワンピースも、すこし露出が多く、自制のない男ならばすぐさま襲っていることだろう。俺は沙梛がいるから問題ないが。


ふと、セラスが言う。


「ねぇ、ヴァーン。神様って…いるのかしら…」


その声はとても潤っていて、泣いている時の、心が弱っている時の声だと分かる。


神、か。きっとこれは俺が知らないと思っての質問なのだろう。


「神様、ね。この世界にも多くの宗教がある。そしてそれぞれに神がいて、各々が信じる神に祈りを捧げる。神っていうのは…1人1人の心が生み出すものなんじゃないのか?宗教というものは神の型で、人々はその型に信仰を注いで神を形作る。だがそれは宗教に限ったことで、セラスはセラスの神に祈ればいいんだ。例えば…龍神とか?」

「りゅうじん?」


セラスはキョトンとした顔でこちらを見る。


りゅうじんっていう言葉は同じ発音が4つあるしな。


「あぁ、西洋竜…今日俺が討伐した竜のような姿をした神じゃなく、もっと体が長い蛇のような姿をもっと厳つくした神だ。」

「そんな生物もいるのね…絵を描いてもらえないかしら?」

「まぁ、その方が想像しやすいか。」


適当に紙とペンを持ってきて、龍の絵を描く。


えっと…長いのかいて、手を描いて…足描いて…しっぽつけて、あ、頭がないから目と鼻と口を…


「プッ…龍ってこんなに…ごめんなさい、笑いが止まらないわ…ふふ」

「なんだよ。すこしぐちゃぐちゃなだけじゃないか。結構良くできてると思うんだけど?」

「だって、細長くて、しっぽが先っぽだけぐにゃぐにゃしてて、手と足がちっちゃすぎで、目と鼻と口が前の方に固まってて…ふふっ」

「ちっ…まぁいいさ。俺の画力が無いと分かっただけでも。」

「いえ、大体はどんな姿かわかったわ。ありがとう。その龍神を信じてみるわ。」

「そうか。龍神もきっと、お前の力になってくれるぞ。」

「それは…とても贔屓なことね。」

「あぁ、神は大概贔屓な奴なんだぞ。」


だから、目に届く範囲でも救えるものは救いたいとおもうんだよ。

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