二週間の1日目
とりあえず俺は梨、セラスはリンゴジュースにした。
「やっぱり美味しいわね、このセトゥンボーレ。」
「え?なに?」
「セトゥンボーレはこの飲み物の名前。セトゥンが果実の名前よ。知らないの?」
「あぁ、知らない。それじゃ、この飲み物は?」
「レチスボーレよ。」
ボーレ=ジュースという意味でいいのかな。似たようなものだと地球じゃセトゥン=リンゴ、レチス=梨か。まぁ味や原産地は全然違うから厳密にはイコールじゃないけどな。
「飲み物も買ったし、とりあえず昼食にするか。」
「えぇ、そうね。レストランはどこかしら…」
「レストラン?レストランなんてここにはないぞ?あるのは出店だけだ。」
「え?ならどうやって食事をするの?」
「出店で買って歩きながら食う。違うのか?」
「え…それじゃ行儀が…」
「んなもんここじゃ捨てておけ。遠慮なんて必要ないんだぞ?」
「そうなの?」
「あぁ、とりあえずあの…ハルティグリ?を食べようぜ。」
ハルがフライでチキンがティグリだな。アルヴテリアは鳥のことをグリっていうし、この世界のグリフォンとかおもいっきり鳥っぽいしな。ティグリはアルヴテリアで普及している食用の鳥で、地球での立ち位置だと鶏だ。味は似ているし家畜化に伴って飛べなくなっている。
「美味しいわね、いつも食べる食事よりも塩気が多いし、セトゥンボーレによく合うわ。ねぇ、今度はあれ食べましょ。」
「行儀はどこにいったんだ…まぁ楽しいならいいか。いいぜ、金なら気にするな。思う存分楽しもうぜ!」
こうして2週間の内の1日目はこんな風に出店巡りを楽しんだ。
「そういえば宿はどうするの?」
「あ~考えてなか…あ!」
「え、なにどうしたの?」
「装備もらうの忘れてた!一応先に宿の部屋とって、できてたらそのままもらってできてなかったら宿の場所を教えるっていうことでいっか。」
「そういえばあなた、ずっと私服だったわね。宿はどこにするの?」
「あぁ、金ならあるからちょっと贅沢するか。」
「やった!お風呂はあるのかしら。旅の途中水浴びしかしてなかったから…」
「あぁ、それも合わせて探してみるか。」
安定の案内板へ。
「ふむ、風呂がある宿っていうのはなかなか少ないもんだな。」
「それはそうよ。だってお風呂なんて宿が持つなんて贅沢物だし、そもそも近くに温泉がある場所に普通は宿を建てるの。相互関係ね。」
「なるほどな。そんじゃま、このトゥレビーノっていうところにするか。」
「えぇ、では行きましょうか。」
さて、いま俺はスッゴク気まずい状況の中必死に耐えています。トゥレビーノっていう名前で察するべきだったというか、しかし察せる筈もなく、セラスは赤面して俺から3メートルほど離れています。だって仕方がないじゃない?個室それぞれに風呂があるって書いてあるからうわぁ凝ってんなぁって思うじゃん。まさかそういうことをするためのホテルだとは思わないし、ましてやそんなホテルが堂々と案内板にあるなんて思いもしないじゃん。チェックインをするときの受付嬢さんの「異種交配ですか。応援しますよ。」の一言で気づいた俺達は今、トゥレビーノから逃げて案内板の前にいる。贅沢も過ぎるとこんなことが起きるので、大浴場がある宿…というかホテルを探し、チェックインをするために向かうところだ。
「…さっきはすまんな。よく見ておけばよかった。」
「い、いや気にしていないわ。そ、その…まぁ男性だから仕様がないでしょうし?」
「……次からは気を付けるさ。今度はヨーメイという宿だな。」
「えぇ、こっちよ。」
いや別にセラスに先導してもらってるわけじゃないぞ?トゥレビーノにいくときに徒歩30分の道を手違いで1時間半かけたとか、1時間のとこでセラスが気づいたとかじゃないからな?
「っとこれか。結構大きいんだな。」
「それは宿代に見合った設備だからでしょう?」
中世ヨーロッパくらいの文化には似合わない高さだぞ…遠くからでも見えてたが、まさかこれが目的地だとは思いもしないだろ?王様の所有物だと思ってたんだが。
「さ、入りましょ。」
「あぁ、そうだな。」
玄関を通り、受付に向かう。
「へいらっしゃい!今日はなんのご用でぃ?」
いや勤め先間違ってんだろ…
「部屋をとりたいんだけど、空きはあるかしら。」
「あぁ、ちょうど1部屋しかねぇぞ。ルームサイズはダブルだから、二人で泊まるんだったらぴったりだな。」
おいおいさっきとほとんど同じ展開かよ…
「あぁ、この女性だけを泊まらせることはできるか?」
「もちろんだ。だがうちは部屋代だから値段は変わらねぇぞ?」
「あぁ、それでいい。」
「ちょっと!悪いわよ。一緒でいいわ。」
「おいおいセラス、さっき後悔したばかりだろ?」
「間違いは無いんでしょ?なら信用するわ。」
「お熱いねぇ。おし!じゃぁこれが鍵だ。部屋ん中に呼び鈴があるから何かあったらそれで宿員を呼んでくれ。」
「了解したわ。いきましょ。」
「あ、あぁ。」
鍵と一緒に言われた部屋番号のあるところへ向かう途中。
「なぁセラス、本当にいいのか?」
「なにかしら?」
「いやなにかしらじゃなくて、一緒の部屋でいいのかって聞いてるんだが。どうせなら俺はそこら辺にいるけど。」
「構わないわよ。」
「ならいいんだけどな。」
ふむ、とりあえず部屋について中に入ってみたが結構綺麗で広いな。スタンドライトの光もうまい具合に調節されているし、絨毯もふかふかだ。セラスは靴を履いたまま上がったので、俺も…と言いたいところだが履いてないんだよな。まぁ青いタヌキのようにすこし宙に浮いている訳だから汚れてはいないが。
「んー!歩き疲れたわ。本当はこんなに時間がかかるものじゃない筈だったけど…誰のお陰かしら?」
「さーて誰だろうな~。」
「それはそうと、この後何か用事があるのでしょう?大丈夫なの?」
「あ、忘れてた。行ってくる!」
「道はわかるの!?」
「転移!」
「なるほど。ここに来るときも転移すればよかったのに。」
「そんな便利なもんじゃないんだよ。」
転移して装備屋の中へ入る。
「おう!おめぇさん結局宿を知らせてくれなかったからすっぽかされたと思ったぞ。とりあえず靴は作っといたから履いてってくれ。宿は決まったか?」
「あぁ、ありがとうおっちゃん。宿はヨーメイという所だ。」
「あぁ、ヨーメイだな…ヨーメイ!?この王都最高級の宿じゃねぇか!金はどうしたんだ?」
「冒険者試験と合わせて依頼をクリアしたら結構稼げた。ざっと5億くらい。」
「5億?」
「いや、5コウだったな。」
ちなみにのの世界の数字の桁は、
一の桁=数字そのままの呼び方
十の桁=ロウ
百の桁=ガロ
千の桁=ゼン
万の桁=ユン
億の桁=コウ
だ。そのあとの兆、京、垓etc…はそのままの呼び方だ。ここら辺は賢者が広めた様だな。兆からはこの世界には必要のない数だ。まぁ天文学なんて発達してないからだけど。どうやってこの星は出来た?俺が作った。で終わりだからな。
「おま、お前!何してそんなに!?まさか犯罪を…」
「低位竜を狩っただけだけど…?」
「低位竜!?装備もないお前さんが!?」
「あぁ、冒険者支部長も驚いていたがそんな驚くことか?」
「あ、あぁ。そんな抜けた表情で言われるとそうでも無い気が…しないわ!」
愉快なおじさんだなぁ。
「そんじゃ、俺は戻るよ。」
「おう、推測だが2日後には出来てる。」
「了解だ。」
さて、宿に戻りますかね。
チェックアウトをチェックインに直しました




