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ジェイド

リウスから報告があり、俺らは急遽ホルガナンダ大陸へ。リウスが成長して自身の力を制御しきれるようになってからは、リウスとは別行動をしていた。俺らは邪神教を、リウスは神獣を。そんなリウスは鳥形の神獣コンドルルを相棒に、世界中を飛び回っているのだが。


「ヴァーン、これ見て」

「数百人規模の生け贄…か?」


そこには全てを魔力へと分解され、はたまた魔力の形となった『ナニカ』へと分解され、なにものかに吸収された痕跡があった。


「ここでなにがあったんだ…?」


邪神教の目的は邪神の復活…これがどうして邪神の復活につながるのだろうか。邪神の復活にもなにか条件があるとして、その条件は…?


「わかんない。でもこの大陸でまた邪神教の活動が活発になってる」

「そうだな。ありがとう。神獣捜索の傍ら」

「ううん。はやく潰さないと。こんな組織」


しかしやつら、なんでこんなにも信者を増やせているんだか。俺が台頭して大々的に信者を募れないというのに…いやな考えが、浮かんだ。いやいやと、俺がそれを振り払ってしまうのは、良くない。


「もしかしたら、どこかに人間牧場のようなものがあって、そこで人間を増やしているのかもな…」

「なにそれ…キモ…」


10年経って、リウスは言動が落ち着いた代わりになんかギャルみたいな感じになってるが、相変わらず素直でいいこだ。しっかし、リウスの言うとおり本当にキモいほどにどこからともなくうじゃうじゃと湧いてくる。どういうことだ?


「ホムンクルス…いや、人間の製造ができるとしたら。でもそんな施設、アルヴテリアを全部くまなく探すとなっては流石に無理がすぎるぞ」


地球でさえも、全世界全てをくまなく探すとなっては無理があるというのに。…いや、こうなったら潜入だ!


というわけでやってまいりました。ここはシホンがある大陸、ゲンカに根差すストルロースの拠点。ふむふむ。なるほど胸糞わるい。洗脳洗脳入隊洗脳。誘拐しては洗脳し、人を実験台にしてなにが目的ともわからないことを平然とやっている。だから。


『分身』『自立制御』


ミレイユによる完璧な分身に加え、精神を模倣した完璧な機械化。

そう、俺は新たに、精神を模倣して人形を機械にする技術を開発したのだ。というのも、リヒトを直す過程で必要だったにすぎないが。

精神、心を模倣する。そうすれば、一から作っていないため創造ではない。ただ、模倣だけでも精神系の権限が足りないため、それだけでは動かない。だからパターン化しアルゴリズム化。入力に対し、さまざまな出力をする。高度な自立型のAIのような機械の完成だ。

その間に、本物は異空間にしまってと。これにて保護完了だ。

そんなこんなで潜入をしていたある日。


「ふう…内情もだんだんわかってきた。大陸ごとに組織がわかれているが、その分横のつながりもほとんどない。そして、どの悪魔を研究対象としているかで大陸ごとに別れている、か。…ぴこーん!」


俺、ひらめきました。エイドのやつ、リヴィアに会う手段に他にも検討があるんじゃね?と。まあ検討がないとしても話くらいは聞いておこうかと思い、そうと思えば即転移…したはずが、そこは修羅場だった。


「勇者…!!」

「なっ、おいエイド!?」

「……」


エイドがフィフスに、心臓をえぐられていた。

こいつ、死亡フラグ立てまくりやがって。子どもたち育てて情が湧いちまってたもんな。最近はとても幸せそうに。そんな幸せも、罪人であるエイドには神は許さないってか。

んなわけあるかよ!!


「うぉら!ミレイユ!」

「あいわかった」


フィフスに飛びかかり、エイドから距離を取らせる。その間に、エイドの心臓を治し、再生して…


「おい、返ってこいよ!お前には大切にしてる存在がいるんじゃねぇのか!?」


エイドからは反応がない。やはり、魂が抜けちまっているのか?


「どうやら完全に死んだようだな。やった、やったぞ俺は!」

「なに感傷に浸ってんだよ!!」


『分身』を使って突貫。俺の戦闘スタイルは大きくは変わってない。星刻剣を使った防御不能の一撃必殺。これをさらに強化し、『瞬歩』やら『空縮』やら『加速』やら『暗殺歩行』やらいろんなものを詰め込んでいる。

だからこそ。純粋に強い。


「お前はここで殺す。神の名の下に、必ず」




『…?』


ここは…。……。そうか、死んでしまったのか。

そこはかつて見た場所。かつて夢見た場所。


「ふむ…カミサマに前連れられたときは、肉体ごと転移させられていた。つまりは、どこか現世に繋がりがあるということ。繋がりがあるとなれば、流れがあるはず。流れがあるなら変えられる。そうしたら帰れるかな」


見たところ、物質はある。あちらからこちらへ魂を移した経験もある。なれば、その逆をすればこちらからあちらへ魂を移すこともできよう。肉体が朽ちていても、僕の権限ならば数年も経たぬうちに復活できる。


「まずは流れの源流を…」

「最近多すぎるのよ…忙しくって、溜待ってる魂で城が出来てしまうわ」

「あれは、インヴィクル神?」


少女の声がしたので、近づいてみると、くすんだ色の魂を泣きそうになりながら一生懸命洗っているインヴィクル神がいた。

溜待ってる魂で城ができる…つまり、隣にある大きな建物はすべて洗われ待ちの魂ということか。

…可哀想だな。


「…な、なに!?気持ち悪い魂がいるのよ!!?」


気づいてもらおうと近づいてみる。そうすれば、流れにそって浮遊してるだけの魂しかいないから、すぐに気づいてもらえる…と思ったのだが。


「ひっ、な、なんなのよ!?」

「あ、あの」

「喋ったのよ!!?」


怖がられるとは思わなかった。


「僕はエイドという者なのですが」

「…?よく見たらあなた、前に顔をみた気がするわ。……。駄目ね思い出せない」

「アルスヴァーンの側で寝転んでた人間です」

「わかったわ!」

「それにしても、なぜ顔が分かったのですか?」

「…?そこにあるじゃない。あなたの顔」


どういうことだろう?と思い、鏡を探しても見つからなかったため、無くなくインヴィクル神の目に反射する自身の姿を見ることに。そうしたら…


「な、なんなのよ」

「うわ、確かにこれは凄まじい姿だ。球体に目と鼻と口だけがくっついている」

「あなた、自覚がなかったの?」


自身の姿を見れないのだ。仕方がない。しかし、なぜ自分だけほかの魂と姿形が違うのか。というかよくこれで前見た顔と一致したな…。


「ともかく、気持ち悪いから体をつくってあげるわ。こっちへいらっしゃい」


インヴィクル神は地面の砂を器用に整形して、僕を蛇の形にした。

おそらく自分の体を参考にしたのだろうが、人間の形ではないのはどういうことなのだろうか。


「それで、どうしてここに迷いこんだのかしら」

「迷いこんだ?」

「…?違うの?」


僕は詳しい状況を説明した。この少女がリヴィアという名前で自身をインヴィクル神だと自覚していないこともここで判明した。昔の僕はなんと愚かだったのだろう。確かに、神が実在しているのだから人間が伝え謳う神話など叙述的ではない。


「だいたいわかったわ。リウスの大切な人に危機が迫っているから、助けたいわけね」

「大体そういうことです」

「そういうことならいいわ。でも、残念だけれど私は魂を現世に戻す方法は知らない。魂の掃除が忙しくて手伝えもしないわ。だから、この冥界で自由にすることを許す(・・)わ」




影が一つ消される。返す太刀で二、三。


「ちィ…」


俺はあれからさらに、力を着けた。だが、それでもボイドには届かない気がしてならなかった。

それが不意打ちでも、心臓を貫き確実に殺せた。もう、邪魔者はいなくなった。目障りな奴はもう…そのはずなのに。


「目覚めおったか!」


なぜだ?なぜお前はそんなにしてまで俺の邪魔をする?確実に心臓を破壊した。魂撃によって、魂の心臓までもを破壊したというのに。

昔から目障りだったんだ。出来損ないのジェイドとは違って、ボイドはと。ボイドとは違って、ジェイドのほうはと。何度も何度も何度も何度も比べられて、でもあいつはそんなこと気にしてもいなくて!

ふざけるな。比べられているのに、この俺のことは眼中にない?ふざけるな。いままでの努力を全て無にして、楽しいか?ふざけるな…ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるな!!


「ふザ…ケルナ!!」


比べる世界も、比べられるお前も、全てを壊す。全てを。




「そんなに醜く果てて」


変異したフィフスは、人間の原型をとどめず、嫉妬に駆られた蛇が連なるような化け物へと変わり果ててしまっていた。小さな蛇が蠢き、零れ落ちていく。放っておいても姿をとどめることが出来なさそうだが、それ以上に零れ落ちる小さな蛇たちを世に蔓延らせるほうが厄介そうだ。

だから。


「僕はもう、生命の流れすらも理解した。流れが分かればその流れを変えられる。僕の権限『変流』とはそういう権限だ。でも、流れを変えられるだけで、濁った川を綺麗にすることはできない。だから…僕の手で弔いを果たすよ」


大したことはない。ただ、真っ黒に濁った命という川を、一つ一つ、細く細かく、分けるだけだ。


「フィフスの存在がどんどん薄くなっていく…」


そしてやがて、完全に消えてなくなってしまった。細く浅い小川が干からびるように。


「あのフィフスがあっけなく…エイド、何があったんだ?」

「命の流れが水の循環と同じ流れだと理解したんだ」

「お、おう」


ボイドがやったことは明らかに神域に達するものだ。しかし、俺が感じられるボイドは、初めて会ったときから何も変わってはいない。こいつは、はじめから神域の存在だったのか…?


「…よし。簡単な墓だが、兄としての最後の役目だ。…僕が必ず、魂を完全に浄化すると約束しよう」


魂を浄化?


「魂の浄化って、リヴィアがやってるんじゃなかったか?」

「ああ、それなんだけどね。一度死んで、リヴィアのとこに行ったら彼女、大量の魂の浄化に追われてて半泣きしててさ。その一部は僕のせいでもあるし、可哀想だから浄化を自動でやってくれる装置を作ったんだ。洗濯機ってやつ?」

「リヴィアに会っただぁ!?」

「おかしい話ではないだろう?なにせ一度死んだんだから」

「まぁそれはそうだけど…てか、そしたらリヴィアを連れ出せるってことか!?」

「リウスのことだろうが、それはやめといた方がいい。リウスにも、リヴィアにも。自分たちの力で再会を果たすべきだ」

「んだよ保護者ぶりやがって」

「リウスはともかく、リヴィアに関しては他の誰よりも成長を願っていると自負しているよ。なにせ、数百年もの年月を過ごしてきたからね。もちろん、一番の理解者はリウスだけども」

「ふーん…ま、そんじゃそういうことにしといてやるか」


それはそうと、帰りの道すがら、俺はエイドに邪神教の目的や構成、内情などを聞いた。

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