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レイスト

それから10年。各大陸を見て回り、インヴィクル等の組織、通称邪神教組織を探し回ったが、見つからなかった。そのついでに神獣も見つけて10体。そのどれもがリヴィアにつながるどころか悪魔が封印されてる空間を開く本物の鍵を持っている神獣ではなかった。リヒトの件もあり、リヒトのような機械の神獣が本命かと思ったが、そんなことはなく。早いとこリヴィアとリウスを会わせてやりたいな。

それと、アヴくんとテレビ念話もするようになった。イルもミレイユと話したがっているし、良いことだと思う。そんなイルは、ドラグハートのおじいちゃんに力の使い方を教わり、慣れなかった龍人の力をものにし、好少年となっている。イルがまだまだ少年なのは、種族が変わって、寿命が龍のものに近くなったからだろうとミレイユが言っていた。お父さん、このままイルとミレイユがくっついて欲しいなと思ってます。

それ以外にも変わったことと言えば、セラスがファランの国主となり…どころか、リディルと併合して龍神教の国、セラスのセラス教皇となった。セラス国のセラス国主…そんなことしなくたって、セラスのことは忘れないっての。そんなことはいいからセラス、お前もうすぐ30だろ?いい加減セラスの子孫の面倒を見させて欲しい。

同じく、ウリエラとアンディも20歳を超え、遂には30歳を目前としている。そんな二人の間にやっと子どもができた。ウリエラの恋愛相談に乗ってた期間、もどかしかったな…。そんなウリエラとアンディの子どもも8歳で、両親の良いとこを受け継いで努力家な天才、しかも魔力の貯蔵量は一般人よりも大分多く、その扱いはミレイユの魔法を真似てすごく繊細で丁寧。将来を約束されているようなものだ。そんな子どもはガリフくんと言って、俺の刻印魔法に興味津々な様子。正直ものすっごくかわいい。

ああ、そうそう。ここ数年で、竜人の勇者ヴァーンは活動を休止。いまは転生前の姿で冒険者活動をしている。というのも、邪神教組織が俺を恐れて潜んでいることを考えて、それを炙り出そうという作戦だ。知り合いに会うとき等は竜人になっているから、問題ないんだけどね。


そんなすこしばかりの平穏な日々を過ごしていた頃。嵐の前の静けさというべきか。事態は動いた。ジュエに用があると言って『蜥蜴の尻尾園』を後にし半年が経ったある日、ウリエラ、アンディ、ガリフくんになにかあったときにくる知らせが同時に来たのだ。

しかし、この10年。なにも進歩がなかったわけじゃない。警報があった瞬間に発動する転移術式を刻印魔法にし、それを目印にして俺が飛べるシステムを開発。それを使って、俺はすぐさま救援に行けるというわけだ。

して、竜人となり、飛んだ先には…


「ほっほっほ…罠だったか…ゴホ…」


それは、インヴィクルの拠点で何回か見た、アイエベを作った機構。その中心にガリフくんを起き、左右にウリエラとアンディを置いているナタス老師だった。


「なぜですか、ナタス老師」

「ゴホゴホ…失礼、死期が近くてね。いまさら白々しく弁明するつもりもないよ。この機会を逃したら私は死ぬ」

「なぜですか、ナタス老師!!」

「ゴホ…君に会う前からすでに、私はレイストの幹部だったというわけだよ」

「レイスト…」

「知らなかったのかね?まあいい…ごふ……人間誰しも…いや、この世の万物は死ぬ。私は死ぬのが怖かった。だから精神を司る闇魔法を研究し、レイストに入り、遂に完成させたんだ。自身の精神を他者に写りかえる外法をね」

「なぜ、ナタス老師が、あんなに親密だったウリエラとアンディを…ガリフくんの誕生も喜んでいたではないですか!」

「優秀な写りかわり先を生んで(・・・)くれて、本当に師匠思いのよくできた弟子たちだと思ったよ。…本当に残念だ。ウリエラとアンディに子どもを喪う思いをさせまいと、ガリフくんと一緒にして私の糧にしてあげようと思ったのに。ヴァーン君が来るのが早かったから、ガリフくんだけに写りかわることになってしまった」

「あなたは…お前は!!そこまで…!!」


その顔は邪悪そのもの。純粋に、自身のために他者を犠牲にすることも(いと)わない悪であると、そういう顔をしていた。


「君に邪魔をされては敵わないからね。早々に始めるとしよう…パペット、やりなさい」


ナタスの号令で出てきた物は、リヒトを模した人形達だった。


「私も過去に、君たちが言うリヒトに連れ去られたことがあってね。自力で抜け出すのに苦労をしたが、あの人形の性能には興味があった。精神さえ宿っていれば、私の良い写りかわり先になりえたのだがね…それを確かめるのに、ちょいと細工をしたら壊れてしまったんだよ」

「リヒトの故障も、お前が!」

「その人形達は君が持ってきてくれたあの魔方陣を使った人形達さ。リヒトは自身の故障を直すために、心があればいいと演算したんだろうね。すこし足りないところを補強したら、その通り。優秀な操り人形へと変わったよ。その人形は、心らしき機能がある人形たちさ」

「それじゃ、この人形がリヒトを模している理由にはならない!」

「ああ、それはね。アスモデウスの異次元に取り残されていたリヒトを解体して(・・・・)作ったからね。全く面白い体をしていた」

「そこ、まで…そこまで堕ちていたかお前!!」


アスモデウスの異次元に出入りできるということは、龍達によるブラクティシアの襲撃もこいつが仕組んだことで。あそこでアンディとウリエラが死んでいれば、なんらかの形でこいつの思い通りになっていたということで…!!


「ゴフ…ふふふ、やっと…やっと宿願を果たせる…!!10年前君に苦渋をなめさせられた日を思い出すよ…時間稼ぎに付き合ってくれてありがとう。君も時間稼ぎをしたかったのだろうが、それは悪手だったよ、ヴァーン君」

「やめろ!ウリエラ、アンディ、起きろ!起きてくれ!」

「ふふ…ははは!法式てんか――」

「なんてな!置換!」


悪手なわけねぇよ!

ナタスが魔法を発動する瞬間に、俺はガリフくんと手元にいたパペットの位置を交換する。アヴくんに教えてもらった新しい転移だ。いままでは目印にむかって飛んでいく、もしくは目印を引き寄せるものだったが、入れ換えるのはまた別に難しいもので、アヴくんに教えてもらっているのに習得に1ヵ月もかかった。

この置換をすることにより、ガリフくんが居なくなって法式が作動しなくなることはなく、このパペットにナタスの精神が写りかわることになる!


「…貴様…貴様ぁぁああ!!」

「ふはは!人形に乗り移ってやんの!」

「…いや?乗り移れたということは目的は達成できたということ。ならば怒る必要もないな。優秀な体に写りかわり損ねたのは惜しいが、まだやりようはいくらでもある」

「前向きだな?」

「研究者とは前向きでないとなれないものでね」

「いや、お前はここで死ぬのにって話だよ!」


身体強化&空縮で瞬間に距離を詰め、首を切り裂く。しかしそれは幻影で、手応えがなかった。


「『龍眼』で幻影の類いは無意味だというのに!」

「邪神様のお力をお借りしたまでだよ。既に私はそこにはいない。また会うときを楽しみにしていてくれたまえ」


ちっ…逃したか。あれほど執念深く、しかも辛抱強く機を待っていたナタスだ。次会う頃には厄介なことになっているに違いない。


ナタスの件から、俺はレイストという組織を追ってホルガナンダをくまなく見て回った。しかし、どこを探しても見つからない。痕跡すらない。ナタスの魔力の痕跡も、精神を写りかえてしまって魔力の質が変わっているからもう追えない。八方塞がりだ。

そんななか、そもそも拠点はアルヴテリア上にないのではないかと、ふと思った。そう考えれば、ここまで尻尾を出さないのも理解できるし、さらに、ナタスがアスモデウスの異次元を出入りしていることも信憑性を増させる要因になっている。

力が増す前にぶっ叩くか。


転移した先は真っ黒な世界。アスモデウスの酒池肉林が、キュリスの『ゼロ・アブソルト』によって停止(・・)した世界だ。『ゼロ・アブソルト』によって凍ったものに触れた光さえも凍るため、真っ黒な世界が広がっている。

そのため、依然変わりなく、アスモデウスも他の龍達も停止した影から抜け出した形跡はない。

ハズレか…そう思った瞬間、影が俺を襲った。


「!?――ちっ、変わり身の術!」


シホンで信短にコテンパンにされながらも、必死に学んだ術だ。


「影…そういや忘れてたが、闇魔法は影系統がメインだったな」

「ほっほっほ、一筋縄ではいかないな」


やはりここだったか!


「ミレイユ!」

「うむ!」


抵抗龍力相殺派をミレイユに出してもらいながら、俺はミレイユが作ったフィールドで縦横無尽にナタスに斬りかかる。

この10年の大半は修行に費やしてきた。剣術だってマルスに教えを請うて師範の資格を得た。

だからよぉ…


「10人でかかってきやがっても問題ねぇんだよこらあアァン!??」


奇襲がバレてねぇとでも思ったか!こちとら地獄の修行を耐えてきたんだっての!そもそもそんなんなくとも『龍眼』で見える。奇襲なんぞできないと知れ!


「確かに出会ってから10年、確実に力をつけている。だが私らも邪神様の力をお借りして自身の能力を強化していることを忘れてはいないか?」


『影縛り』

『告死無葬』

『影抜き』

『死送』

『操式』

『デスサイズ』

『夢玄ノ星』

『蛇牙影々』

『魔力共有』

『魔力増強』


二重の足止めに即死技が4つ、大規模破壊魔法に単体攻撃魔法のえげつないコンボだ。

影と肉体を封じられ、真っ黒な天使が俺を抱きしめ、体から黒いものが抜け、黒い玉が俺に当たり、死神の形をした鎌が俺を真っ二つにし、周囲は無の空間へと移り、影の大蛇の大海が押し寄せる。

だが、それすらも。


「『分身』」

「なに!?」


ミレイユによる完全な『分身』だ。物理そのものの化身たるミレイユだからこそできる芸当だ。


「ちっ、仕方がないか」


影の地面から大量のリヒトを模した人形が生まれてくる。


「「「これらは私の精神を模写した魔装部隊だ。いくら君でも苦労するだろう?」」」


出来の悪い贋作に別のもんを詰め込んだのか…


「んなもん、百パーセント別もんだろーがよ」


『絶空』。効果は単純だ。薄さ数ミリ。相手の首の空間を、切り離す。ただそれだけの効果で、対象を殺せる。


「ミレイユ!」

「のじゃ」


ミレイユがふっと息を吹き掛け、大地の息吹さながら対象を雲散霧消させる。地下の絶対零度も含まれていて、とても幻想的な光景だった。


「どうせその肉体もコピーなんじゃろうて」


完全には殺せていないことは確信しているが、こうして本拠地を叩いて潰せただけでもよしとしよう。

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