森の中2
「ふぅ、確かまだ先だったよね?」
汗ばむ額を手でぬぐい森の奥へ続く道を見ます。
「喉乾いたなぁ」
水筒の水を少し飲んで歩き始めました。
木陰で休もうとも思いましたが、早く帰らないとまた怒られてしまいます。
「おじょぉさんっ」
「だ、だぁれ?」
急に森の中から声をかけられ、辺りを見回します。
とっさに頭巾を引っ張り、顔を隠しました。
「あ、はは。そんなにびっくりしないで。」
クスクスと笑いながら木の影から出てきたのは。
「あなたは?」
シルバーブロンドの長い髪に褐色の肌、手足が長く背も彼女より頭ひとつ分は高く、年上であろう青年でした。
切れ長の二重に灰色の瞳。鼻筋の通った鼻に薄い唇を少し持ち上げて微笑んでいました。
とても美しい青年でした。
「初めまして、こんにちは。僕はこの森の住んでいるものです。」
「こんにちは。」
「お嬢さん、どこへいくの?」
頭巾で隠した少女の顔を覗きこむように、膝に手をつきしゃがみます。
「ぇと、おばあちゃんのうちに行くのです。」
素直に答えながら、顔を見せたくないので俯き、二歩ほどさがります。
「へぇ、お使い?」
「お見舞いに行きます。」
「えらいねぇ」
目深に頭巾を被っているのでどんな表情かはわかりませんが、きっと微笑んでいるのでしょう。
「いいにおいがするよ。」
「えっ?」
いいにおい?
「あぁ、カップケーキを作ったので」
「そうか。甘いにおいがしたから。君が作ったの?」
「はい。」
「それはきっとおばあちゃんも喜ぶでしょう。」
あ、そうだったと気づきます。
早くおばあちゃんところに行かなくちゃ!と。
「そ、それじゃ私は急ぎますので。」
ぺこりと頭を下げておばあさんの家に向かいます。