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見習い女神ナスクの異世界ゲームセンター繁盛計画  作者: エエナ・セヤロカ・ナンデヤ
第一章 ナスクゲームセンター開店準備計画
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仕事紹介2

 「ほ、本当にレベル60ですか!? これは凄い!ちょっと待ってくださいね! 今、とびっきり高額報酬が出るクエスト探しますから!」


 「あの、能力値の方もちゃんと見てください。1桁値のゴミステータスだらけですから。スライムすら倒せないステータスですから。この街についても疎いのでまずは誰でも出来そうな簡単なクエストにしてください。って言うか、そもそもクエストを受けるのは私じゃなくてこいつ。ナスクなのですが……」

 

 さっきまではドラゴンでも魔王でも何でもナスクがチートレベルの魔法やらなんちゃらで俺Tueeeeeしまくって楽に高額報酬をもらおうと思っていたが、俺がクエストを受けるみたいな流れが相変わらず続いている。

 仕方ない。こうなったら出来るだけ誰でも出来そうな簡単なクエストを受注して様子見だ。

 ひょっとしたらその日の飯代すら稼げるか分からないが、まずは命を大事にだ。


 「大丈夫ですよ。レベルに比べて多少ステータスが低かろうがそれでもレベル60です。それでも自信がないようでしたらー……この討伐クエストにしてみましょう! なかなかの高額報酬でしかも未経験可の誰でもウェルカム! 充実した研修もあると言う事なので安心してください! とは言っても杉山さんには研修何て必要ないかもしれませんですけどね!」


 「はははっ……いえいえ。最近、ろくに訓練なんかしてなくて腕が鈍ってるんですよ。それで、"何を"討伐するのですか?」


 「それについての詳細は伏せられていますね。後、欠点としてクエスト完了予定日も残り少なく、多少忙しい可能性もあると言った所でしょうか。まぁ現場では百人くらい参加している大規模クエストらしいので個々にそんな負担がかかると言う事はないでしょう。笑顔が絶えないアットホームな現場だって聞いてますからきっとみんなで協力すれば上手くいきます。どうされますか?受けますよね?」


 受けません。絶対やばいっす。


 「断り――……」

 

 「こんな不景気でも人を大切にする素晴らしいクエストがあるんだね! ナスクは感動したよ! 良かったね浩太! 受ける! そのクエスト受けるよ!」


 「は!? ちょっと待て!」


 断ろうとした瞬間、ナスクが目を輝けさせながら勝手に紙に何かを書いた。

 多分、クエストを受注したのだろう。


 「おいおいおい!? こんな見えてる地雷に手ぇ出す奴いねぇだろ!? 明らかにやべぇクエストじゃねぇか! すいませんが、もっとまともで楽なクエスト紹介してください! ゴブリン討伐とか薬草採取とかないのですか!?」


 「浩太ぁ~そうやってクエストを選り好みしたらダメだよ。楽して大金もらえる、そんな美味しいクエストなんてないんだよ? それに今の時代はねぇ、働きたくても働けない人だっているんだから贅沢言ってはいけないよ!」


 「お前は俺のオカンかよ!?」


 「そうですか、受注されますか! それはとても良かったです! ではクエストを行う前に"面談"がありますのでこの地図に記載されている場所に向かってください。こちらが紹介状です」

 

 紙にさらさらと簡単な紹介所を書いて、それをナスクが受け取る。 


 「素晴らしいクエストを紹介してもらってありがとぉ~! じゃあ、浩太。早速行くよ☆」


 ナスクに腕を絡まれて体を密着させながらぐいぐい引っ張られる。

 っと言うより、何かとても怪しい。

 あまりにも話がとんとん拍子に進みすぎているような気がする。

 

 「どしたの? ふふ~ん、不安な事が一杯あるかもしれないけど大丈夫! ナスクがちゃーんと守ってあげる!」


 「本当だろうな? 信じるぞ? ところでナスク、さっきはぐらかしてたけど、一体どこの所属の女神なんだ? ちゃんと自己紹介してくれ」


 「……これあげるから許して」


 ナスクはごそごそと白ニーソを脱いだと思ったらそれを俺のポケットに入れてきた。

 その謎行動に俺、困惑。


 「男の人はニーソはみーんな大好きだってスラちゃんが言ってたんだよ。だからこれで許してね!」


 あのスライム何者だよ。

 確かに、俺だってニーソは大好きだ。

 だけどこんな子供のニーソ貰ったって、俺ロリコンじゃねーし。

 

 ……まぁ、ここでうだうだ言っていてもクエストを受注してしまった以上仕方がない。

 ナスクの言う通り、今日食う食費すらねぇ状況なんだからクエストを貰えただけまだマシなのかもしれない。

 

 「まぁ良い、とりあえずやってみてやばそうなら即辞めてナスクを売ろう。そうしよう」


 「売る!? 売るって何を!? はっ……ダメだよ! ナスクゲームセンターを売るのはダメだよ! 厳しい現実を乗り切る為に夢を捨てるのは良くないよ! 夢を常に追いかけて生きていくのが正しい人間の姿なんだよ!」


 「いや、売るのはゲームセンターじゃない。お前の体だ」


 「んー?」


 よく分かってなさそうに頭を傾げていた。



 ◇◇◇◇◇



 「それではいくつか質問させてもらいます。紹介状にレベル60だと記載されていますが前職は何をされていたのですか?」


 「1か月ほどゲームセンターの店長でした。あっ、ゲームセンターの店長って言うのはですね。つまり、個人商店の店長みたいなもんです。それで、その前は学生です」


 「なるほど、なるほど。20代前半にしてマネージメント経験ありっと。その前は研究職だね」


 えぇー!? いや、確かに店長だからマネジメントって言えばマネジメントだけどそれちょっと違わくない!?

 マネージメント経験って30~40代の働き盛りのサラリーマンが部下をまとめてプロジェクトを進めていく事をマネージメント経験って言わない?

 そんな難しい事できないんだけど!?

 てか、店長だって期間的には1週間足らずだからな!?


 「他に何かスキルや経験はお持ちですか? 戦闘系なら大歓迎なのですが……」


 「……戦闘系ですか? 子供の時はよくガチの殴り合いのケンカとかしながら育ったんで素手同士のタイマンなら大抵余裕っすけど……まぁ、流石にモンスター相手は――……」


 「なるほど、なるほど。子供の時から最前線での命がけの戦闘経験ありですね。それはとても頼もしいです。その経験の積み重ねによって今ではレベル60にまで成長したと言う事ですね。これは誰がどう見ても即戦力として活躍できる人材でしょう」


 いやいや、いくら何でも盛り過ぎだろ!? 流石にそこまでヤバイ事はしてねぇよ!

 これはまずい。否定しておかないとすげぇ有能な人材になってしまう。


 「ふふーん、浩太は女神ナスク様が認めた人間……ずずっー」

 

 ナスクは出されたお茶を啜りながら何やら自慢げにしていた。


 「女神ナスク? はて、私は聞いた事ない女神様ですが、杉山さんは女神様に認められた人間ですか。まさかそれほどの実力者とは」

 

 「そうじゃないんです。違います。聞いてくだ――……」


 「杉山さんのような人材は弊社と致しましても大歓迎です。合格です。それでは、早速行きましょうか」


 「えっ? 行くってどこですか?まさかもう現場ですか?」


 「いえいえ、私どもは杉山さんを"次の所"に仲介するだけですので……」


 「次? どゆこと?」


 いや、聞かなくても分かってはいる。

 分かっていはいるのだがそれを理解してはいけないと本能が俺に訴えかける。

 まさか……まさかな。


 「このような事は初めてですか? ご安心ください。次の"面談"は私も同伴しますので杉山さんは黙って頷いているだけで結構です」 


 こっ……これは、たっ、多重派遣じゃねー!?


 

 ◇◇◇◇◇


 

 「――っと言う事でですね。杉山は年少時代に魔王幹部をたった一人で倒した実績がございます。さらに数十人の部下を管理していたマネジメント経験もあるので即戦力としてどこでも活躍できる人材なんですよ。一度使ってみてはいかがでしょう?」


 「はっはっはっ~。使うのは私の所じゃなくて協力会社だよ。で、杉山だっけ?君は一日何時間くらいの睡眠で大丈夫? 若いんだし3時間くらいでも大丈夫だよね?」

 

 「いえ、私は……――」


 「はいっ! 杉山は現場での長時間の戦闘経験も長らくしておりましたのでその辺りは全く問題ございません! 24時間いつでも最高のポテンシャルを発揮できるでしょう!」


 「えぇー!?」


 「そうかそうか! そういう長く使える物を欲しかったんだよ。最近の若い奴はちょっと苦しいだけですぐ辞める。わしの時代には考えられなかったね。じゃあ、君。次の"面談"に行こうか」


 「……は?」


 

 ◇◇◇◇◇


  

 「いやーそれでね、うちの杉山は魔王の幹部をぶっ殺しまくって魔王を震え上がらせるほどの実力を持った勇者なんですよ。その後、国王軍の幹部で数百人の人間を指揮を取ってマネージメントしていたとか」 


 「そりゃあ良い。そんなに頼もしい人間が来て助かるよ。ところで杉山君。そんなに多くはないんだけどもさ……。たまに休日出勤とかもあるんだけどその辺りは大丈夫?」


 「すいません。私、国王軍の幹部なんてやったことが――」


 「国王軍の幹部と言えば24時間365日仕事してみるみたいなものでしょう。むしろ杉山は仕事がない休日の方が苦痛だから休日出勤したいって言ってましたよ。『休日出勤しとけば急に上司に休日出勤で呼び出される事もないから楽だ』ってさ!」

 

 「HAHAHA!!」


 「HAHAHA!!」


 なにわろてんねん。

 

 「なるほどなるほど、そんな考え方もあるんだね~」


 ナスクは必死にメモをとりながらうんうんと大きく首を振って頷いていた。就活生かよ。

 てか、そんな考え方ねぇからな!?

 もう明らかにこいつら俺を消耗品にしか見てねぇじゃねーか!


 「では杉山君には今から現場に入ってもらおうかな。心配する事はないよ。後の詳しい業務は現場の指揮命令者が丁寧に教えてくれるはずだから」


 「未経験者の為の手厚い研修があるって聞いたのですが……?」


 「そうだよ、いきなり生の現場を体験できるって中々良い研修じゃないか! それに君のような神人材に研修なんて不要だよ。待機コストだって馬鹿にならないんだしさ」


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