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見習い女神ナスクの異世界ゲームセンター繁盛計画  作者: エエナ・セヤロカ・ナンデヤ
第一章 ナスクゲームセンター開店準備計画
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ゴムボールはスライムだった!

 ぴょん! ぴょん! ぴょん!


 驚きのあまり後ずさりして距離をとったが、謎の青いゴムボールも離れた分の距離をじりじりと元気良くバウンドしながら詰めてくる。

 何だこれ!? 新しいドローンとかなのか!?


 ぴたっ!


 そのゴムボールはまた俺のすぐ横に近づくとバウンドやめ、今度は体を軽く左右に振ってうねうねとし始めた。

 これが何の目的があってうねうねと踊ってるみたいな動作をしてるのかは分からない。

 分からないんだが、心なしか俺の右手に持ってるうまい棒に接近しているような気がする。


 「こ、これが欲しいんだろ? ホラホラ、見ろよ見ろよ」


 うまい棒をこの水色のゴムボールの目の前に差し出して猫じゃらしのように振ってみる。

 まぁ、目の前と言ってもこのゴムボールに目とかはついてはないんだが。

 

 ぴょん!ぴょん!ぴょん!


 何を思ったのか水色のゴムボールは数回、さっきよりも勢い良くその場でまたバウンドし始めてそして――…… 


 ぱくっ!


 水色のゴムボールはうまい棒に食いついて、むしゃむしゃと食べ始めた。

 

 むしゃむしゃむしゃ


 うまい棒を咀嚼(そしゃく)するような音がする。

 

 「食ったって事はこれ、もしかして生物なのか? こんな生き物見たことないぞ」

 

 1本丸々食べ終えた所で、試しに違う味のうまい棒の袋をたぶってまた差し出す。

 すると今度は回転のかかったバウンドをし始めてまたぱくっと食らいついた。

 顔なんてないし喋りもしないから良く分からんが、何だか嬉しそうしてるように見える。


 俺が食べる分のうまい棒を全部食べ終わると水色のゴムボールは俺の周りをぐるぐる回り始めた。

 どうやら敵意はないらしい。

 ひょっとしたらうまい棒の次はお前を食ってやると言う意味を込めてこいつはグルグル回ってるのかもしれないが多分、俺を食う事はないだろう。(願望)


 「えーっと、お前、喋れたりとかする?」


 話しかけてみたが返事は返ってこない。

 だが、代わりにゴムボールはぐるぐる回るのを止めて、


 うねううね


 また謎の踊りを始めた。


 ◇◇◇◇◇



 しばらくするとナスクがスキップをしながらまたやってきた。

 さっき見た時と同じように能天気そうな顔をしている。

 不良とはまた違うベクトルで頭がお花畑そうな奴だ。


 「ただいま~! お客様はどうだった? 100人くらいは来たかな? ま~オープン初日でとても忙しかったと思うけど、がんばった分はちゃんとお給料に反映させ――……ス、……スラちゃん!? 浩太、何やってるの!?」


 「スラちゃん?……ああ、もしかしてこのゴムボールの事か? これ中々面白いぞ。ナスクも遊んでみるか?」


 ウイーン


 UFOキャッチャーのボタンを押してアーム操縦する。

 狙いはUFOキャッチャーの中に入れたさっきのゴムボール。


 「そこだー!! うえっへっへっへー! はぁい!! 完全に決まった!!」


 ウイーン


 ボタンを全部押し終えたUFOキャッチャーはピョロピョロピョロと電子音を出しながらアームが下がる。

 上手く狙いを合わせたと思ったが、軌道を予測するに、どうやらこのままだとゴムボールの横にアームが着地して掴める事ができないだろう。

 このままでは空振りで終わってしまう。

 だが、このゴムボールの面白い所はここからだ。


 ぴょんぴょんぴょん!


 ガシッ!


 ゴムボールは自らアームに掴まれる位置にまで移動して掴まれる。

 そしてそのまま持ち上げられてなすがままプランプランと宙を浮く。


 ぽとっ


 そしてアームは所定の位置でゴムボールを離しそのまま景品取り出し口に落下した。

 

 「どうだ見たか! 景品が自ら掴まれに来るUFOキャチャーだ! なんて斬新で面白い! これなら初心者でも簡単にプレイできるな! このゴムボールってどこで仕入れる事ができるんだ? それとも野生生物か? だったらこれから一狩りしに行こうぜ!」


 「狩っちゃダメー!!」


 景品口から取り出してゴムボールを抱きかかえる。

 するとナスクは突然、床に額を擦り付けて土下座をし始めた。


 「スラちゃん! 申し訳ありません! 申し訳ありません! 浩太はまだ社会の仕組みがが分からない子供なんです! だからどうか許してやってください!」


 「……何でゴムボールに土下座してるんだ?」


 「スラちゃんはゴムボールじゃないよ! スライムだよ!」


 「スライム? スライムってあのスライムか?」


 まさかまさかとは思っていたが、これが本当に異世界の定番モンスターのスライムなのか?

 にわかに信じられないが……確かに現実世界にこんな生き物いないしな。

 UFOキャッチャーの景品としてしばらく遊んでいたから分かるんだが、こいつはかなり知能が良かった。


 だって、さっき俺が『こいつはぁ、オナホにうってつけだぜ!早速試してみるか!』と言いながらズボンを脱ぎ始めた時は、ぷるぷる震え始めていきなり逃げられたしな。


 スライムから喋りはしないものの多分、日本語は通じてる。

 まぁ、またうまい棒数本食わせてやっただけで、懐き直されるほどちょろい奴だが。


 「それにスラちゃんはスライムと言ってもドラクエの序盤に出てくるようなスライムじゃないんだよ! とてもとても凄くてナスク様よりも偉いスライムなんだよ!」 


 「一体何が凄いんだ? スライムはスライムだろ? てか、女神よりナスクよりも偉いんかよこれ」

 

 うにょーん


 「スラちゃんをお餅みたいに伸ばすのやめて! 千切れる、千切れるから!」


 「へーへー」


 離してやるとスラちゃんはどこかに飛び跳ねてどこかに消えて――……と思ったらスラちゃんはフロアカウンターに備え付けていたメモ用紙とマジックペンを自身の体の上に器用に乗せて帰ってきた。

 そしてスラちゃんは……何と俺の前でマジックペンをふよふよと超能力のように宙に浮かせて、持ってきたメモ用紙に何か書き始めた。

 書き終えた紙にはこう書いてあった。


 「" (`・ω・´)どうも、すらちゃんです! "」

 

 現実離れした事を見せつけれれた俺は数秒思考が止まる。

 だってそりゃびびるだろう?

 このミジンコやゾウリムシをちょっと大きくしたような原生生物が筆談で自己紹介しやがったんだぜ?

 これは……これは……良い金稼ぎに使えるじゃないか!! 


 「どーも、スラちゃんだっけ? よろしくー。早速ちょっと教えて欲しいんだけど、スラちゃんみたいな頭が良いスライムって他にもたくさんいるの? 出来ればどこにいるか教えてくれない? 大丈夫、大丈夫。生態系のバランスが崩れるくらいの乱獲はしないからさー?」


 「スラちゃんもスラちゃんのお友達も捕まえたらダメー! それに浩太にはナスク様がいるんだよ!? ナスクで十分だよ!」


 ナスクが俺の後ろから抱き着いて邪魔をする。

 結局、それ以上スラちゃんに関して有益な情報は何も聞けず「" (゜∀゜)ごはんのじかん! またねー! "」と紙に書いてスラちゃんは店を出て行った。


 また来たときに備えて虫取り網を準備しておこう……そう決意した。   

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