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見習い女神ナスクの異世界ゲームセンター繁盛計画  作者: エエナ・セヤロカ・ナンデヤ
第一章 ナスクゲームセンター開店準備計画
19/19

女神ナスクの力(物理防御)

 「黒奈。私の盾を」


 「はい!」


 黒奈が持っていた大きな盾をハゲノ本部長に投げると、それを軽々とキャッチしてゴブリンの群れに一人で突撃する。


 上空から禿のおっさんが降ってきて、いきなり数十匹の仲間を倒されたゴブリンは動揺していた。


 「はあああああ!!」



 ハゲノ本部長が大きく盾を振り回し、その度にバタバタとゴブリンが倒れ込む。

 まるで無双ゲーをみているような気分だ。


 ナスクが笑顔で俺に向かってトコトコやって来る。


 「浩太〜会いたかったよ〜」


 コンッ!


 「あうっ!?」


 ズサー


 何が起きたかハッキリと分からなかったが、盾でゴブリンの射撃を防いだ時のような音が鳴ったのと同時にナスクがコケた。


 「大丈夫か? えーと、女神ナマズ?」


 「ナスクだよ!? そんな美味しそうな名前してないよ!? それより、浩太が大怪我してる!」


 「ゴブリンと戦ってる時にちょっとな」


 流石にコケて怪我したなんて恥ずかしくて言えない。

 追求される前に話を戻そう。


 「ところで女神モズク、見ての通り大ピンチだ。今こそ女神的なチートで助けてくれ!」


 「ナスクだよ……」


 ハゲノ本部長が超頑張っているとは言え、この後どうなるかなんて分からない。

 正直、こいつが俺たちの最後の希望と言っても過言ではない。


 「女神なんだろ? なんか神しか使えない凄い魔法でもブッパしてさっさと殲滅してくれ」


 「ナ、ナスクはね? 実は……地球生まれの地球育ちだから……今まで戦ったことが……ね?」


 「あぁ?」


 「ゆ、ゆとり世代だから暴力的な事は……」


 コンッ!


 「あうっ!?」


 今度は近くで見てたから何が起きたか分かった。

 コンッ、と音がするのはゴブリンが撃った弾がナスクの頭に命中している音だ。

 弾が撃たれた方を見るとゴブリンがマスケット銃をナスクに向けて構えていた。


 「むにゅ、びっくりした」


 ナスクは手で撃たれた所をゴシゴシする。

 撃たれた事を気にはしていたが、ピンピンしていた。


 「マスケット銃でヘッドショット決められて、びっくりした程度で済むのかよ」


 「ナ、ナスクは銃で撃たれたの!?」


 「……」


 「ふふ〜ん。実はね、ナスク様は核ミサイルが直撃しようがへっちゃらなんだよ! だから戦う事は出来なくとも、浩太の盾になってあげようじゃないか!」


 「ふーん、核ミサイルが直撃してもへっちゃらなんだ?」


 「余裕!」


 「俺の『盾』になってもへっちゃらなんだ?」


 「余裕!」


 カチッ


 黒奈からもらった、どんな盾でも装備できるリストバンドをナスクの背中にくっつけてみる。

 するとナスクを左腕だけで軽々と持ち上げることができた。


 やっと女神の有効的な活用方法を発見できた俺は、こみ上げる笑いを噛み殺した。


 ナスクは自分の運命を知らずに嬉しそうに、


 「へへ〜たかーい、たかーい。浩太は家族サービスができる良い子だよ〜」



 ◇◇◇◇◇



 「死ね」


 ゴンッ!!


 「ぐぅ!?」


 俺は新しく手に入れた盾を大きく振り回してゴブリン2体を薙ぎ払う。


 「杉山! あそこから撃たれるぞ!」


 ハゲノ本部長が大声で俺に忠告するのと同時に、俺は盾を向けて防御姿勢を取る。


 コンッ! コンッ! コンッ!


 3匹のゴブリンから一斉射撃された鉛玉が盾に当たる。

 俺にはノーダメージ。

 そのまま盾を前に構えて射撃してきたゴブリンどもに向かって走る。

 ゴブリンどもは俺を迎え撃つために銃を捨て、斧や短刀に持ちかえた。

 正直、初めはゴブリンの身体能力がどの程度か分からなかったからビビってた。

 だがゴブリンの身体能力なんて所詮、近所の中坊が刃物を持ってオラついてる程度だと分かった以上、もはやビビる理由などない。

 銃を捨てた時点でお前らに勝ち目はない。


 「オラァ!」


 盾を構えながらゴブリンの1匹に突撃する。

 ゴブリンは衝撃で吹き飛んで倒れる。

 俺は倒れたゴブリンにマウントをとって、


 バン! バン! バン!

 ゴブリンの顔面に何度も何度も拳を叩きこむ。

 俺の背後にいる残りのゴブリン2匹は既に失神しているのにも関わらず何度も何度も顔面に拳を叩きこむ俺を見て我先にと逃げ出した。


 「ふぅ、ゴブリン1匹ゲーセンに持ち帰ってパンチングマシーンにしようぜ。こんなに気分爽快になれるんだ。絶対に流行る」


 「……」


 盾に話しかけたつもりだったが返事がない。

 核ミサイルが直撃しても余裕だって言うからかなり乱暴に使ったが、もしかしてやりすぎたか?


 「おーい、ナスク。大丈夫か?」


 「もう考えることをやめた……」


 ナスクは無傷だったが遠い目をしていた。


 「おいおいそう拗ねるなよ。ほら、考えてもみろよ。お前は今ゲームセンターを開店させるために役に立つ事をしてるんだ。俺はお前が誇らしい。パーフェクトな人材だ」


 「だったらナスクゲームセンターが開店したらナスクのお給料、期待しても良いんだよね……?」


 「……それはまた別の話だ。でも感謝はしてるぞ?」


 「うける。感謝の言葉があればご飯を食べていけると思っていらっしゃる」


 うわーめんどくせー……完全にいじけてる。

 

 「分かった。今日のクエストで金が入ったら何か良い飯食おうぜ? 俺たちこんなに頑張ってるんだ。きっと今日は好きな食い物を腹いっぱい食えると思うぞ?」 

 

 「脅威を検出。2時の方向からマスターを狙っているスナイパーを発見」


 ナスクが指を差す。

 俺はナスクが指差した方を確認もせずに急いでナスクを構えて防御する。


 コンッ!


 するとナスクからまた鉛玉を弾く音がした。

 危なかった……。

 今のは完全に気づいてなかった。

 もしナスクが教えてくれなかったらヤバかったかもしれない。


 「4時の方向からゴブリンが1体が接近中」


 「ウラアアアアアアア!!」


 槍を持ったゴブリンの突きを横に避ける。

 避けるのと同時に拳をゴブリンのアゴに叩きこんだ。


 「スキャン中……スキャン中……スキャ――……」

 

 「助かったぞナスク! なんだよ、そんな特殊能力あるならに先に言ってくれよ~!」 


 「くー……」


 「……ナスク? おーい」

 

 返事がないナスクの顔を覗き込んで見ると、スヤスヤと寝ていた。

 揺さぶって起こしてみても全く反応がなかった。

 こいつの正体は何者なんだ?

 そう思いながらゴブリン討伐を再開した。

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