黒奈がエロい理由
黒奈にトイレの場所やら休憩所の使い方などを教わる。
そして、いよいよ仕事の内容についての説明に入ろうとしていた。
「では、そろそろクエストについての説明をしましょうか。何か先に知っておきたい事とかありますか?」
「はい! 討伐クエストとは聞いていたのですが、一体何を討伐するのですか?」
「はい、討伐対象はゴブリンです。そんなに手強い相手じゃありません」
「ほ、本当にゴブリンなんですか? な、なんだ……てっきりこの大人数だから、巨大ドラゴンの討伐とかちょっとヤバイかなーって思ってましたよ!」
「ええ、ただ―ー……」
ブオオオオオン! ブオオオオオン!
突然、ほら貝を吹いたような音が大きく鳴り響く。
俺は突然の出来事に思わずキョロキョロして周りを見回す。
「安心してください。クエスト開始の合図です。いつもならもうちょっと遅いはずなのですが……杉山さんは運が良いですね……えへへ。では早速、討伐しに行きましょうか」
「ええええ!? いやいや、突然すぎない!? 俺、ゴブリンを倒すって事しか聞いてなくてヤバイ! 無理! マジヤバイ!」
あまりにも突然の出来事に、リアルJKみたいな口調になってしまう。
だってまだ何にも聞いてないじゃん!? あり得ないじゃん!? マジヤバイ!?
「えへへ・大丈夫ですよ・黒奈ママが――……はつ!? ご、ごめんなさい! 大変失礼しました!」
黒奈が謝っててヤバイ。超ヤバイ。
……一体何がヤバイのか分からなくなったから、何だか少し落ち着いてきた。
「もうご存知の通りだと思いますが、私、黒奈は主にヒーラーをやらせて頂いてます。あっ、ヒーラーと言うクラスはご存知ですか?」
さっき回復してもらった黒光りしたヒールは、闇魔術師が無理やり使ったヒールなんじゃないかと思ってたが、あれでもちゃんとしたヒーラーだったんだな。
「ええ。知ってます」
「今後、杉山さんがどのようなクラスを選ぶかは分かりませんが、今回はヒーラーの私に同伴して、実際に戦いを見て学んでもらおうと思います。ですので、杉山さんは戦う必要はありません。私も全力で守りますので安心してください!」
「そうですか……」
それを聞いて少し安心する。
だってヒーラーは後衛職。
仮にヒールを使ったらモンスターのヘイトが溜まってヒーラーにターゲットが移るようなシステムがあったとしても、俺自身が直接モンスターに狙われることはない。
最悪、狙われたら助けが来るまで床ペロしてるふりで乗り切ろう。
それに、どっちにしてもこの異世界では戦闘が避けられないような気がする。
だったら、後方で黒奈に守られながら経験値を美味しくチューチューしてしまおう。
「分かりました!ぜひ同伴して学ばせて下さい! もし、俺に手伝える事があれば何でもやらせてください! (絶対何もしないけど)」
「えへへ、流石杉山さんです。私も杉山さんのやる気を見習わないといけません。それでは行きましょうか」
ゴトッ……
「はい! …………えっ!!??」
何故だ……? 何故なんだ……? 理解できない。
さっき黒奈は自分の事を『ヒーラー』って言ったよな?
黒奈が右手に持っている、どこにでも落ちてそうな木の棒が『魔法の杖』だってことはまだ理解できる。
じゃあ、黒奈が左手に持っている、人の背丈ほどの高さがあって、とても分厚い金属の『盾』は何?
明らかにヒーラー装備じゃない! タンクですら持たないようなでかい盾は何なの!?
まさか、まさか、まさかヒーラーなのにそれ持って最前線行く訳じゃないよな!?
その盾は安全の為に俺に装備させてくれるんなよな!?
仮に持たされたとして、そんな重そうな盾、絶対持てないけど!
「ん? どうしたのですか、急に震えて……。あっ、そうですよね! 初めての戦いはとても怖いですよね? 分かります、私も初めて戦った時は怖くて……お恥ずかしながら、お漏らしをしてしまいました……。で、ですが初めては皆怖くて当たり前なのです! だから、勇気を振り絞ってください!」
「……いえ、漏らしてはいませんが、黒奈さんが持ってる盾が気になって……。そんなゴツい盾、ヒーラーには合わないのでは?」
「これですか? んー……実はですね、ここの現場は今、とても人手不足です。おまけにタンクはあまり人気がないので……。なので今回はヒーラー兼タンク装備で両方こなします。安心してください、最近はずっとこんな感じなので慣れてます」
「へー黒奈さんって、何でもできるんですねーすごいですねー(思考停止)」
「いえいえ、私も初めはヒーラー専でしたが、人手不足で色々やらされる内に何でも出来るようになっただけです。では、前線に行きましょうか」
無理っ! 聞いてないっ! やり方知らないっ! 分からないっ! 俺の仕事じゃないっ!(新入社員並の感想)
「……あの、あのあのあの! そう言えば、黒奈さんはついさっきまですごくしんどそうでしたが、あまり無理をしない方が良いのでは?今回はヒーラー専で――……」
「平気です! 今も自己リジェネで瀕死状態はなんとか免れてます!この状態が私の通常状態みたいなものですので大丈夫です! それに杉山さんが見ているのに情けない姿を見せる訳にはいきません!」
「退職します。短い間でしたがお世話に――……」
「えへへ~えいっ、浮遊魔法!」
「のわっ!? これなに!? これなに!? ダメだよ! 退職を拒否するのは犯罪っすよ!!??」
「杉山さん~」
「な……何ですか?」
「私なんかで良ければ、また下から覗いてもいいですよ?……へへっ♡」
「いいのですか喜んで!!…………って、え?……き、気づいていたのですか?」
「えへへっ、部下のモチベーションを上げるのも中間管理職の仕事です♡ ついでに言うと私、ハーフサキュバスなんでこういうの好きなんです♡」