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見習い女神ナスクの異世界ゲームセンター繁盛計画  作者: エエナ・セヤロカ・ナンデヤ
第一章 ナスクゲームセンター開店準備計画
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ヒーラーの黒奈

 「杉山さん!だ……大丈夫ですか!?ケガはしていませんか!?」


 「いてて……いやぁ~これから一緒に働く仲間たちと熱い抱擁を交わしたくてつい……って、おおうっ!?」


 とても心配そうにしながら駆けつけて着た黒奈が体を密着させながらペタペタと俺の体を触り始める。

 その突然の出来事に俺はそのままマグロにようになる。

  

 「えっと、えっと……ひじが少し擦りむいているくらいですか。良かった……良かったです」

  

 どうやらケガの確認をしているようだ。

 何これ?

 ケガをしたら女の子ってこんな感じで体をまさぐってケガを診てくれるの?

 こんなエッチな触診してくれるなら毎日ケガしたい。 


 ふにふに


 ああ、しかも柔らかい。女の子しか持っていないあの柔らかいものが当たっている。黒奈の着ている服の生地がとても薄いからまるでダイレクトに当たってる気分だ。

 しかもぱんつ穿いてな……――


 ふにふに


 いかん、このままじゃ駄目だ!性欲が理性を退化させている!退化した理性は俺を人間に保つことができない!

 そもそも小学生の時に女の子と3分間喋っただけでその女の子のことが好きになってしまうくらい初心な俺には刺激が強すぎるんだ!

 それにこの抱き着かれ方はこの前行った店で『ご指名ありがと~今日もママが可愛がってあげるね』って抱き着かれた時とは比べ物にならないほど愛を感じる!

 その愛に俺はっ……――!


 「ママしゅきぃ……たくさんかわいがってぇ~……」


 言ってしまったぜ!配属された職場で初日に教育係の女の子に向かって赤ちゃんプレイの希望申請してしまったぜ!

 ド ン 引 き だ よ !!


 「えっと、えっと……だ、だいじょうぶでちゅよ~黒奈ママが治してあげまちゅからね~……えへへっ、へへ」


 にへら~っと笑顔を作って優しく俺の頭をなでなでする。どうやらドン引きするラインすらぶっちぎって本当に頭の心配をしなければいけないラインまで到達していたようだ。

  

 「へへへっ……今ヒールかけてあげまちゅからね~。痛いの痛いの飛んでけ~!」


 ヒール?ああ、そうか。てっきり救急車でも呼ばれるかと思ったが、ここは剣と魔法が交差するファンタジー異世界だった。

 ひじの傷なんてツバでもつけてたら治るレベルだし、頭は元々ケガしてるみたいなもんだからわざわざヒールをもらう必要なんてない。

 だがこの世界に連れてこられてから文字書いてコミュニケーションとってくるスライムは見たが魔法は見たことない。せっかくの機会だからこのままヒールを受けよう。それに頭打って一時的におかしくなったと思われた方が都合いいしな。


 黒奈が手をかざす。


 ぶおーん


 すると手から禍々しく赤黒いオーラのようなものが出てくる。そしてそのオーラが俺の全身を包み込むように流れてきた。

 ……あれ?なんか違うくね?ヒールって綺麗な光がぴかーって光って傷を癒すもんだと思ってたんだが違うくね?これヒールって言うより闇魔法とか呪いとかそういった分類じゃね?

 ヒールと言うよりむしろザキくらってるような気分だ。


 ぶおーん


 だけど見た目とは違って傷は治っていってるし、何より体がすごく軽くなったのは実感できる。

 ふーん、ゲームやアニメしか知らなかったが、実際の異世界のヒールってこんな感じなんだな。


 「…………ぼそっ」


 黒奈が何やら蚊の鳴くような小声でぶつぶつと言ってる。

 そういや魔法と言えば詠唱したり技名言ったりするのが定番だが黒奈はヒールを発動する時はそれっぽいのは言ってなかったな。もしかして今詠唱でもしているのだろうか?

 一体どんな詠唱を呟いているのだろう。気になって何を言ってるのか注意して聞いてみる。

 

 「はぁはぁ……へへっ……大丈夫でちゅか~……はぁはぁ……」


 うむ、恍惚させている。どうやらハマっているようだ。ならば時間の許す限りこのまま黒奈ママに身を任せてバブり続けようではないか。


 「ほらパパでちゅよ~!ここにいまちゅよ~!」 


 「……」


 おっさんたちが俺を囲んでとても楽しそうにパパ役をしていた。

 これは萎える。流石にこんなおっさんたちと赤ちゃんプレイをする気はないぞ?

  

 「……はぁ……はぁ」


 それに黒奈はどうやら赤ちゃんプレイにハマって甘い吐息を出しているだけではなさそうだ。

 どんどん疲れてやつれていっているように見える。かすり傷を治す程度のヒールなのに、まるで死者蘇生魔法でも使ってるんじゃないと思わせるほど苦しそうにしている。

  

 「黒奈さん、ありがとう。もう十分です。ほら、傷も綺麗に消えてるし何だがすごく体が軽くなったような感じがします」


 さっと起き上がり、大げさに屈伸運動をして元気アピールする。それを見た黒奈が嬉しそうにしながら言った。


 「……そ、そうですか。私ごときがお役に立ててとても嬉しく思います……えへへっ」


 黒奈も立ち上がろうとするが、よろめいてこけそうになる。俺は黒奈が倒れないよう体を支えた。

 

 「よっと。大丈夫ですか?さっきのヒールのせいですよね?すいません……」

 

 「いえいえいえ!違うんです!決して杉山さんのせいではありません!社会人でありながら体調管理ができていない私が悪いのです!」


 「え?そ、そうなんですかー」


 幸薄そうな美少女からいきなり洗脳されたサラリーマンみたいな言われて返答に困った俺は適当に頷く。

 黒奈は続けて言った。


 「そうです、そうです。そもそも社会人は体調管理さえしっかりすれば病気やケガ、体調不良は絶対起きないのです。私が未熟者でその辺りの意識をちゃんと持ってないせいでご心配をおかけしてしまって申し訳ありませんでした」


 「う……うむ、以後気を付けたまえよ」


 俺、何様やねん。


 「はい!」


 そこはつっこんでくれや。


 「黒奈ちゃん、休憩時間中の今のうちに少しでも寝た方が良いと思う。杉山君の教育なら僕が代わりにやっとくからさ。っと言うよりどうか僕にやらせてください!」

 

 一人のおっさんが心配そうに黒奈に声をかける。

 俺としてはおっさんに仕事を教えてもらうよりも美少女の黒奈に教えてもらう方が良い。絶対良い。

 もしこのままおっさんが教育係になるくらいなら俺は家のドアの前でよく言っている魔法の言葉『チェンジ!』をここで喚き散らしてしまう自信がある。


 黒奈を見る。黒奈と知り合ってまだ10分程度の超浅い関係だが、我慢して無理をする性格なのは間違いないだろう。   

 呼吸の乱れは収まっているが、ひょっとしたらいつ倒れてもおかしくない状況なのかもしれない。 


 ……ふぅー。


 大きく息を吸って吐く。俺も今は立派な社会人なのだ。自分の都合で我がままを言うのはもうやめよう。もう子供じゃないだろう?


 「俺も黒奈さんが休むのに賛成です。明らかに疲れているように見えます」


 「ですが――……」


 「新人の俺が生意気に聞こえるかもしれませんが、休めるときは休むのも社会人としての基本だと思いますよ。俺も前の仕事はゲーセン……いや、店の管理者をしていたので体調管理はしっかりとしないと後々大変になるという事は分かっているつもりです」

  

 「杉山さん――……」


 黒奈が俺の耳元でひそひそと周りに聞こえないように言う。


 「代わりに教育係をすると提案してくれた方ですが……あの方が教育係についた"男性"はいつも2時間でご退職されるので……」


 教育係を引き受けると言ったおっさんを見る。

 ……おっさんの顔なんていちいち覚えていないがあのおっさんは覚えている。

 さっき俺に向かってクレヨンしんちゃんがやるケツだけ星人のように全裸でケツを振ってたおっさんだ。


 ……


 …………


 「ボク、黒奈ママに教えて欲しい」


 まだ子供でいいや。

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